“無風感”で攻める東芝エアコンの新戦略 #家電最前線

■約350個の穴を開けた「風カットルーバー」で“無風感冷房”を実現

“無風感冷房”とは先ほども紹介したとおり、人の体に感じにくい風を実現する冷房のこと。

「風がルーバーの穴を通ることで乱流に変わり、いわゆるジェット気流のような気流を起こします。それがストレートな気流と合わさって風を巻き込み、砕かれた風になる仕組みです」(下沢氏)

仕組みはこう。各種センサーで部屋にいる人の温冷感を検知し、中の人が暑がっていると判断すると、まずは強めの冷房風で一気に涼しくしていく。快適と判断したら、冷風を感じにくい「無風感冷房」に自動で切り替えるというもの。

▲約350個の穴が空いている「風カットルーバー」

吹出し口には約350個の穴を開けた「風カットルーバー」を搭載していますが、通常の運転時にはルーバーは閉じており、風カットルーバーを通らずに勢いよく風を吹き出す。センサーが快適と判断すると、吹出し口上部をふさぐようにルーバーが開き、約350個の穴が風を細断して乱気流を生み出しています。

吹出し口下部からは通常の冷風が出るようになっており、その風と乱気流がぶつかることでさらに風が乱れ、感じにくい冷風を作り出すという仕組み。

▲こちらが通常の風。まっすぐ奥の方まで風が送られている

▲こちらが無風感冷房の風。通常の風に比べて渦が多く広がっているのが分かる

ちなみに14畳タイプの「RAS-F402DX」で風カットルーバー作動時、エアコン本体から2.5m、床上60cmの地点で風速が0.2m/s以下であることを確認したとのこと。また、無風感冷房は快適モード(全自動運転)のほか、通常の冷房運転時でもリモコンの「風ケア運転」ボタンを押すことで、室内環境に合わせて作動します。

 

■ミドルレンジながら一部ハイエンドというものづくりは成功するか?

東芝の大清快シリーズは前出の通り、2月に発売したDRシリーズがハイエンドモデルで、今回発表したDXシリーズはミドルレンジモデルという位置付け。とはいえ、DRシリーズにはない「スマホ連携機能」を標準搭載し(DRシリーズはオプション品が必要)、さらには「無風感冷房」という新たな試みを搭載しており、“一部ハイエンド”といった仕上がりになっています。

それでいて予想実勢価格は6畳タイプの「RAS-F221DX」で12万円前後(税抜き)、18畳タイプの「RAS-F562DX」で18万円前後と、比較的リーズナブルな価格帯になっている。DRシリーズが6畳タイプの「RAS-F225DR」で18万円前後、18畳タイプの「RAS-F566DR」で24万円前後なので、かなりコストパフォーマンスがいい印象。

「スマホ連携」と「人感センサー」と、機能を絞りに絞り込んでコストパフォーマンスを重視したモデルを投入する、アイリスオーヤマのような新規参入メーカーが現在ヒットを飛ばしています。いくら生活の中心であるリビングとはいえ、「適度な省エネ性と必要十分な機能を備えていればミドルレンジで十分」という考え方もあり、これには十分合致しそう。

また、「人生の約3分の1を過ごす寝室こそ快適なエアコンが欲しいけど、複数の部屋なのであまりお金をかけられない」という人にもピッタリの選択肢と言えるでしょう。スマホ連携機能は離れて暮らす祖父母宅の“見まもり”にも便利で、猛暑の時には命の危険から身を守るツールにもなる。多機能・高機能よりもコストパフォーマンスを重視する多くの消費者に訴求するシリーズになりそうです。

>> 東芝ライフスタイル「エアコン」

 


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(取材・文/安蔵靖志)

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あんぞうやすし/IT・家電ジャーナリスト

ビジネス・IT系出版社で編集記者を務めた後、フリーランスに。総合情報サイト「日経トレンディネット」、「NIKKEI STYLE」などで執筆中。KBCラジオを中心に全国6放送局でネットしているラジオ番組『キャイ~ンの家電ソムリエ』にも出演中。

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