マニアも納得の個性派が進化!可愛くて実用性も高いイチ押し小型車ルノー「トゥインゴ」

■RRレイアウトの優れた実用性に着目したルノー

そもそも、優秀な自動車メーカーがひしめくニッポンでわざわざ輸入車を購入するというのは…と、いきなり大上段に構えることもないのですが、「やっぱり人とは違うもの」、「できればオシャレ寄り」、「価格も“プチプラ”な感じ」というユーザーのわがままな要求に相当高いレベルで応えてくれるのがトゥインゴ。

ルノーのラインナップ中、最も小さいモデルで、ボディサイズは全長3645mm、全幅1650mm、全高1545mmですから、軽自動車よりやや大きく、いわゆる“5ナンバー”サイズにすっぽり収まる大きさです。3気筒の1リッターターボ(92馬力)に、“EDC”ことデュアルクラッチ式の6速ATを組み合わせます。

今や軽自動車でも(といういい方は軽自動車の実力が上がった昨今では適切ではありませんが…)、いくつかオプションを付ければすぐに200万円をオーバーしてしまう時代。トゥインゴのメーカー希望小売価格は198万6000円〜です。もちろん、購入後の維持費は異なるものの、それでもクルマとしてはリーズナブルな価格で、「パリが仕立てたコンパクトカー」(プレスリリースより)を手にすることができるのです。

さらに! トゥインゴには、クルママニアをも納得させる個性が詰まっています。このクルマを決定づけるのが、エンジンをボディ後端に積んでリアタイヤを駆動するRR(リアエンジン/リアドライブ)レイアウト。フォルクスワーゲンの“オリジナル”「ビートル」…というか、ここは、昔なつかしい日野「ルノー」の原型である、ルノー「4CV」を挙げるべきかもしれません。クルマのパーツの中で一番重いエンジンを駆動輪の上に置くことで、パワーをムダなく路面に伝え、小気味良いダッシュと走破性を発揮…という特長も、クルマ好きをワクワクさせますが、今回のトゥインゴがより重視したのは、RRレイアウトがもたらす優れた実用性。

今では希少なレイアウトとなってしまいましたが、リアエンジンは1950〜’60年代、大衆車の定番のひとつでした。当時は小型車でも、エンジンをフロントに置いて後輪を駆動するFRレイアウトが主流、というか常識だったので、エンジンから駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトが不要で、かつ、動力系をクルマの後ろにギュッと詰め込めるRRは、今よりよほどボディサイズが限られていた大衆車に、できるだけ大きなキャビンを確保するための“最適解”だったのです。

その後、クルマの大型化、交通の高速化、そして、RR同様にスペースを有効活用できるFF(フロントエンジン/フロントドライブ)レイアウトの実用化と熟成によって、RRはすっかり忘れられた駆動方式となっていたのですが、2014年のジュネーブショーでデビューした3代目トゥインゴによって、華々しく実用車の世界に復帰! 世のエンスージアストたちを大いに沸かせたのです!!(ちょっと大袈裟)。

そのありがたさは、例えば古い街並みが残る都市部の住宅街を走ってみれば、一発で理解されます。余裕あるフロントシートに座って、軒先の迫った狭い道を、軽いステアリングホイールをクルクル回しながら苦もなく抜けられる。最小回転半径は、わずか4.3m。もっと小さなスズキ「ワゴンR」のそれが4.4mですから、トゥインゴの取り回しの良さは、なんだか狐につままれたよう。昭和世代のクルマ好きなら、「このクルマ、ハンドル切れるなぁ」と感心するところです。実際、限られた車幅の中、フロントにエンジンを横置きするFF車では、ここまでステアリングのキレ角を取るのは難しいでしょう。

冒頭の「なぜ輸入車を買うのか?」という問いに、「多少なりとも異国情緒に触れられるから」という考え方があります。トゥインゴが面白いのは、制限が多いコンパクトカーを、いかに不平不満なく日常使いするか。その追求の仕方に、日本車のそれとは違ったアプローチが感じられるところです。背の高いハイトワゴンが主流を占める日本の軽自動車は、創意工夫を重ねた結果の、規制サイズを“いかに目いっぱい使うか”に対する現在の答え。いい換えると、日本の消費者はミッドシップ(ホンダ「Z」)やリアエンジン(三菱「i(アイ)」)、さらに小さな軽(スバル「R1」「R2」)を許容せず、結果的にハイトワゴンを選んだわけです。サイズ内での“最大の万能性”を求めたといっていいかもしれません。

一方のトゥインゴは、ドライバーの快適性を最優先した、と見ることができます。前席は意外に贅沢だけれど、後席は質素で簡素。

ドアハンドルは単なるL字型の樹脂だし、窓は後部を透かせるだけで、上下できません。

荷室は狭く、床は高く、ついでに、床下にエンジンを搭載するから時にナマ温かくなる!

でも、どうでしょう? クルマを普段使いするにあたって、手荷物は助手席に、買い物袋はリアシートに置くのが普通だし、後ろの席に人を乗せる機会はそう多くない。いざ大きな荷物を運ぶ時には、分割可倒式になった後席のシートバックや、長尺モノを載せるなら助手席まで倒せばいい。

それより、毎日ステアリングホイールを握るドライバーが、いかにストレスなく走れるかの方が大事。そのためには…とたどり着いたのが、RRレイアウトの3代目だったわけです。

ポップなデザインに囲まれたトゥインゴの運転席に座りながら、「この割り切りの良さはどこから来るのだろう?」を考えるのが、また楽しい。フランス流の合理性。彼我の交通事情の違い。はたまたクルマという概念の捉え方が…とまあ、それだけでごはんが3杯食べられる感じです。まさに輸入車に乗る醍醐味ですね!?

■スポーティグレードに準じて吸気用インテークを新設

日本でラインナップされるトゥインゴは、大きく分けて2種類。879ccターボのハイチューン版(109馬力)が「GT」。ノーマルターボ(92馬力)を積むのが「EDC」と「EDCキャンバストップ」です。GTは、6速ATのほか、3ペダル式の5速MTも選べます。

この度、2019年夏、EDCがマイナーチェンジを受けました。前後のバンパー形状が変更され、全長が20mm長く。小さな丸いデイライトは廃止され、代わりにヘッドランプ内にCシェイプのLEDライトが採用されました。GTに準じて、左リアフェンダーの上に吸気用のインテークが設けられたのも新しい。

インテリアでは、7インチのタッチスクリーンを標準装備。AndroidやiPhoneといったスマートフォンとの接続も可能です。センターコンソールの小物入れが固定式になったほか、ふたつのUSBポート、AUX入力のほか、ECOモードスイッチ、アイドリングストップ機能のOFFスイッチがまとめて配置されます。

運転支援システムとしては、車線逸脱警報やタイヤの空気圧警報、駐車時に後方の障害物をチェックするバックソナーが備わります。

イメージカラーは、オレンジならぬマンゴー(ジョンマンゴー)。「さすがはゴーギャンの国!」と考えるのは、フランス贔屓に過ぎますかね。

<SPECIFICATIONS>
☆EDC
ボディサイズ:L3645×W1650×H1545mm
車重:1020kg
駆動方式:RR
エンジン:897cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:92馬力/5500回転
最大トルク:13.8kgf-m/2500回転
価格:198万6000円

(文&写真/ダン・アオキ)


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