トヨタ「ヤリス」はココがスゴい!名前だけじゃなく中身まで大変革を遂げた意欲作

■躍動感あふれるダイナミックなデザイン

ドラスティックな変化を感じさせるヤリスのポイント、それはまずデザインとパッケージングだ。

先代に相当する3代目ヴィッツと比べると、ヤリスはひと目見て引き締まった印象を受ける。ヤリスのボディサイズは、全長3940mm、全幅1695mm、全高1500mm(FF車)で、ヴィッツより5mm短く、30mm低く、それでいてホイールベースは、40mm長い2550mmへと延長された。この結果、ヤリスはより低く構えた姿勢となったのだ。

その上、数値に表れない変化として、リアシート部の左右やリアウインドウが絞り込まれたことで、ギュッと凝縮されたフォルムになった。さらに、タイヤを車体の四隅に張り出させることで、安定感も強調。特に、前後フェンダーの強い張り出し感などは、「ここまでやるか」というほど大胆な形状だ。

デザイナーによると、ヤリスのエクステリアは「ムダをそぎ落した“凝縮キャビン”と、ボディの中心から前後タイヤに向かう引き締まった造形」を目指したという。それはいわば、従来型コンパクトカーで見られた“広く感じさせる実用的な雰囲気”から、“躍動感あふれるダイナミックな造形”へのシフトともいえる。

それとともに、ヤリスは車体のパッケージングも大きく変わった。コンパクトカーは一般的に、広い後席スペースの確保を前提に、パッケージングを組み立てる傾向にある。しかしヤリスは、まずは運転を楽しむための理想的なドライビングポジションを想定。そのためにまず、前席の着座位置を下げ、スポーティな運転に適しているとされる“低い着座姿勢”にこだわった。

その影響から、後席に座った際は前後シート間の距離が短く感じ、キャビン左右の絞り込みもあって、ライバルに比べて閉塞感を覚える。また、ラゲッジスペースも決して広大ではない。

とはいえ、そんなことなど開発陣は承知の上。それでもあえて、ドライバー中心のクルマ作りを行い、ヴィッツよりも圧倒的に“ドライバーファースト”のクルマに仕立ててきた。

では、なぜそんな割り切りができたのか? 実はトヨタは、新しいヤリスと基本メカニズムを共用する、新型クロスオーバーSUVの発表を控えている。あくまで想像に過ぎないが、ヤリスは走りや燃費、そして、軽快な運転感覚を重視した存在とし、後席の広さや使い勝手を重視するユーザーは新しいクロスオーバーSUVでカバーするという“すみ分け”を、トヨタ陣営は思い描いているのかもしれない。

一方、インテリアは、ムダなものを削ぎ落としたスポーティな仕立てが印象的。ハンドルの小径化や、インパネ断面を薄くすることなどで、車内をできるだけ広く感じさせるとともに、トヨタ初となる“フードレス双眼デジタルTFTメーター”の採用など、操る楽しさを予感させる装備も充実している。

また上級グレードには、インパネなどにソフトパッドがおごられ、質感も上々。スマートフォンと連携するディスプレイオーディオを、操作性を考慮してインパネ中央の高い位置にレイアウトするほか、随所にトレー類を配して小物の収納に配慮するなど、コンパクトカーならでは気配りも感じられる。

■レクサスにさえ採用されていない先進技術を導入

ヤリスで興味深いのは、先述したメーターパネルのように、トヨタ車初の装備や技術がいくつも採用されていることだ。中でも、新しモノ好きなら見逃せない機能のひとつが、“アドバンスド パーク”。

コレは、開発責任者が「高級車ブランドのレクサスにもまだ採用されていないもの」と胸を張る高度駐車支援システムだ。昨今、駐車時のハンドル操作を自動化した機能が普及しつつあるが、ヤリスではそれが高機能化され、併せて、イージーな操作も実現している。

アドバンスド パークの美点は、第一に、車載カメラの映像を巧みに活用することで、駐車する枠の検知や設定をスピーディに行えるところ。従来、この手のシステムは、このような初期設定が面倒だったが、ヤリスの場合はとても簡単に行える。その上、実際の操作は、ステアリングだけでなくブレーキまでコントロールしてくれる。シフトセレクターの操作のみ、ドライバーが行う必要があるものの、それ以外はクルマ任せでOKというのだから、技術の進化に驚くばかりだ。

ちなみに、他の同様のシステムは、駐車位置を確定する際、白線などで囲まれた駐車枠を目安とするため、自宅の駐車場など、枠のない場所では使えばケースが多い。しかしアドバンスド パークは、一度、駐車位置を設定し、保存しておけば(画像で認識させる)、枠のない駐車場でも対応してくれる。その結果、他のシステムよりも、より日常的に使うことができそうだ。

さらにヤリスには、運転席の乗降性を高めるアイデアも充実している。例えば、主要グレードにオプション設定される“運転席イージーリターン機能”は、乗降時にレバー操作を行うことで、スライド機構のロックが解除されてシートが後方へと移動。足下が広くなり、クルマから降りやすくしてくれる。

一方、運転席へ乗り込む際には、着座後にシートを前へ動かすだけで、元の位置に戻ってロックしてくれるため、いちいちシート位置を調整する手間が不要。高級車の場合、こうした機能を電動化しているが、ヤリスは手動ながら、シンプルかつリーズナブルに、そして、重量増を抑えて具現している。

また、さらに乗降性を重視する人向けに、運転席と助手席の双方に“ターンチルトシート”と呼ばれるオプションを用意。コレは、シートを外側へ回転させる機能で、これまでは介護向けの意味合いが大きかったが、ヤリスでは女性ユーザーや和装姿の際にも配慮した点が新しい。

前身のヴィッツに対し、ドライバー重視のキャビン設計を行うなど、名称だけでなくスタイルやパッケージングにも大改革を行ってきた新型車ヤリス。トヨタの考える新時代のコンパクトカーは、予想以上にこだわり満載の意欲作だった。

※「Part.2」では、ヤリスの走りの実力に迫ります

<SPECIFICATIONS>
☆ハイブリッドG(2WD)
ボディサイズ:L3940×W1695×H1500mm
車重:1060kg
駆動方式:FF
エンジン:1490cc 直列3気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:91馬力/5500回転
エンジン最大トルク:12.2kgf-m/3800〜4800回転
モーター最高出力:80馬力
モーター最大トルク:14.4kgf-m
価格:213万円

<SPECIFICATIONS>
☆Z(2WD/CVT)
ボディサイズ:L3940×W1695×H1500mm
車重:1020kg
駆動方式:FF
エンジン:1490cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:120馬力/6600回転
最大トルク:14.8kgf-m/4800〜5200回転
価格:192万6000円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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