アップル初のワイヤレスヘッドホン「AirPods Max」は優秀ノイキャン&極上の地味系高音質!

■空間オーディオがスゴいかも

まずは開封。手に取ってすぐに、その高い質感からプレミアムなモデルであると実感できます。ハウジングは酸化皮膜処理を施したアルミニウムで独特の質感。

重量は384.8gもあるのですが、装着してみると数字ほど重く感じません。キャノピー(ヘッドバンドの頭頂部)は高強度のシリコンでストレスはなく、柔らかなメモリフォームのイヤーパッドでメガネを装着した状態でも上手く密閉してくれます。

本体には“Smart Case”と呼ばれるキャリングカバーが付属。これでイヤーカップ周辺をカバーする構造になっています。それにしてもさすがはアップル、今までのケースの常識にも囚われない設計ですね。バッテリー駆動時間は最大20時間。ちなみに充電端子はアップル製品らしくLightning(ライトニング)端子です。

アップル製イヤホンでお馴染みの“H1チップ”搭載なので、iPhoneなどアップル製デバイスとの接続はスマホに近づけて選ぶのみ。初回装着時には“空間オーディオ”などの機能ガイドが始まります。

主な操作は、右側に付いているApple Watchと同じ“Digital Crown”で行います。音量+/-と押し込みによる再生、曲送り/戻し。同じく右側にある“ノイズコントロールボタン”でノイズキャンセリング、外音取り込みを切り替えが可能です。iPhoneのコントロールセンターからノイズコントロールも調整できるので、ボタンを使う機会は少ないかもしれません。タッチ操作でないところがシンプル。

では音楽を聴く前に、室内でノイズキャンセルを検証してみましょう。騒音低減性能はかなり高いのですが、ノイズキャンセル特有の不快感も若干ありました。エアコンの騒音も上手く低減できるのですが、ガヤガヤした音は低減しつつも人の声などは通し気味。なお、ノイズキャンセルに強さ調整はありません。

そして使っていて気付いたのが、外音取り込み機能“ヒアスルー”の優秀。とても自然にハッキリと周囲の音を取り込めます。音楽などを聴きつつ外の音もハッキリ聞こえるので、来客や家族のあるテレワーク用にはこちらを推奨したいですね。

 

■素晴らしく素性の良い音

続いて「iPhone 12 Pro」と組み合わせてサウンドもチェック。

宇多田ヒカルの『あなた』を聴くと、極めてフラットかつナチュラルで自然な情報量を追求した超高音質なサウンド。歌声は、まったく立てる事なく精細な再現だけで声の機微まで伝わってくるし、楽器の音も空間の広がりとして丁寧。重低音は、空間を低音で満たす量感とハリあるレスポンス、情報量、すべてが優秀。BrunoMarsの『24K Magic』も極上の重低音で満たします。派手さや驚きを狙ったサウンドではなく、素晴らしく素性のいい“極上の地味系高音質”ですね。

MacBook Airでビデオ会議をしてマイク性能もテストしてみると、通話用マイクは人の声を判別してクッキリと拾うタイプで良好。周囲が騒がしい環境でも離れた位置の音はハッキリとは拾わないので、テレワーク用にも優秀です。

そして「AirPods Max」は、「AirPods Pro」と同じ“空間オーディオ”にも対応しています。空間オーディオとは映画館のような立体音響で、ドルビーアトモス、5.1ch音源などに対応。実際にApple TV+のオリジナル作品である映画『グレイハウンド』を鑑賞してみると…、“空間オーディオ”の効果は本当にスゴい。第二次世界大戦の米独の海戦を扱った作品ですが、冒頭の洋上シーンから緊迫感漂う重低音の音圧、戦闘機の移動感、波まで体に降りかかるほどの臨場感で再現。iPhoneやiPadの鑑賞では、ダイナミック・ヘッド・トラッキングによって画面と顔の向きに応じた移動感も再現します。これはまさに劇場そのものですね。

*  *  *

全方位でチェックしてみましたが、感じたのはアップルが本気で作り上げた高音質とパフォーマンスであるということ。アップルストアで6万1800円(税別)という価格はネックですが、音質は超優秀、機能も豊富なので無茶苦茶な値付けという訳ではありません。アップル製デバイスだけでなくBluetooth対応の他機器でも利用できるので、ワイヤレスヘッドホンは今後何年も買い換えないつもりで「AirPods Max」を買うなら、アリなんじゃないでしょうか。

>> Apple「AirPods Max」

<取材・文/折原一也

折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長

 

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