インテリアだけで買いの1台!特別なマツダ「CX-3」は快適で心地いい“遅れてきた本命”

■CX-3のルックスは依然として新鮮

CX-3のラインナップに新たに追加された15Sアーバンドレッサーは、デザインにうるさい人でも思わず納得の、オシャレなインテリアコーディネートが魅力のモデルです。

CX-3が日本で発売されたのは2015年2月のことですから、すでにデビューから6年余りが経過。とはいえそのルックスは、依然として新鮮です。マツダのデザインテーマである“魂動”は、2019年登場の「マツダ3」と「CX-30」から新たなフェーズへと深化を遂げていますが、第1世代の魂動デザインをまとうCX-3も、スタイリッシュさでは負けていません。

ボディサイドには、フロントフェンダーからリアドアまで、そして、リアドアからリアエンドまで、2本の弧を描くプレスラインが走っていて、流れるようなサイドビューを演出。また、シャープな顔つきのフロントマスクや、キュッと絞り込まれたリア回りのデザインは、ボディサイズ以上の存在感をCX-3に与えています。

そんなCX-3ですが、デビュー以降のセールスは期待通りとはいいがたいものがありました。そのひとつの要因は、デビュー時の価格にあったのかもしれません。何しろCX-3は、1.5リッターのクリーンディーゼルエンジン“スカイアクティブD 1.5”の専用車として誕生。パワフルな走りや経済性の高さなど、多くのアドバンデージを持つディーゼルターボですが、一般的にガソリンエンジンより高コストとなるため、相対的に多くのユーザーメリットを提供しながら、ライバルに対する絶対価格はどうしても高く見えていました。

以降、2リッターのガソリンエンジン“スカイアクティブG 2.0”や、排気量を1.8リッターに拡大した“スカイアクティブD 1.8”を導入したり、絶対価格に見合うプレミアムな特別仕様車を設定したりとラインナップの強化を図ってきたCX-3ですが、デビュー当初の割高感がコンパクトSUVのマーケットではなかなか受け入れられなかったように感じます。

■十分だけど何か物足りない15Sツーリング

15Sツーリング

そうした状況を打破すべく、マツダは2020年春の商品改良において、CX-3に初めて1.5リッターのガソリンエンジン“スカイアクティブG 1.5”搭載モデルを設定。前輪駆動車では、エントリーグレードの「15S」、装備を充実させた15Sツーリングともにアンダー200万円の価格設定を実現するなど、ラインナップだけでなく、価格面でもCX-3のテコ入れを図りました。実際、スカイアクティブG 1.5搭載モデルのセールスは、コロナ禍や強力なライバルの登場という逆風の中でも堅調に推移。全販売台数におけるエンジン構成比では、7割ほどを占めています。

そんな15Sツーリングに、デビュー直後、試乗する機会がありました。スカイアクティブG 1.5は111馬力/14.7kgf-mとスペックを見る限り非力に感じますが、実際に走らせてみると、街乗りや郊外のクルージングにおいては必要十分の走りを披露。「ちょっとペースアップしたいな」という時も、アクセルペダルを踏み込んでエンジン回転数を上げてやれば相応の加速力を発揮してくれますし、その時のエンジン音も耳ざわりではなく、軽快で気持ちいい走りを楽しむことができました。

また、スカイアクティブG 1.5搭載車では16インチとなるタイヤ&ホイールが、乗り心地の面でもプラスに働いていました。18インチを履くスカイアクティブG 2.0やスカイアクティブD 1.8搭載モデルは、コンパクトカーの「マツダ2」(前身の「デミオ」)ベースのプラットフォームということもあってか、時折、粗い乗り味を実感するシーンも。その点、16インチを履く15Sツーリングは、タイヤのハイトやエアボリュームの違いもあって、軽やかで快適な乗り味を実現しています。確かに、CX-3のスタイリッシュなルックスを重視するなら18インチを選びたいところですが、乗り味を重視する人には16インチの方がベターな選択だと思いました。

そんなハイ・コスパの買い得グレード、15Sツーリングですが、実は試乗してみて「多くに人にオススメできるグレードではないよなぁ」と感じたのも事実。その理由は、快適装備や安全装備が一部省かれていたこと。そして、インテリアが質実剛健な仕立てで“らしさ”に欠けること、という2点からでした。

15Sツーリング

やはりイマドキ、安いからといって快適性や安全性は妥協したくありません。おまけに、スタイリッシュなCX-3だからこそ、インテリアの心地良さも割り切りたくないな、と感じたのです。

■マツダの面目躍如たるインテリアの仕立て

そんな筆者のモヤモヤした思いを晴らしてくれたのは、1台の特別仕様車でした。ここに採り上げる15Sアーバンドレッサーは、15Sツーリングにはなかったシートヒーターやステアリングヒーター、スーパーUV&IRカットガラスといった快適装備をプラス。

さらに、高速道路などで前方を走るクルマに合わせて速度を自動調整するアダプティブ・クルーズ・コントロールや、狭い路地でのドライブや車庫入れなどで重宝する“360°ビュー・モニター”など、15Sツーリングには非装着だった先進安全装備もおごられています。

またインテリアでは、シート生地に明るいピュアホワイトの人工レザーと、ライトブラウンの人工スエード“グランリュクス”のコンビ素材を採用。さらに、インパネのデコレーションパネルやドアトリムにもライトブラウンのグランリュクスをあしらうことで、華やかなカジュアルモダンの空間に仕立てられています。

ちなみに、本革やリアルスエードはお手入れが面倒ですが、人工レザーとグランリュクスのコンビ素材はそうした手間を大幅に解消しているなど、機能性と実用性にも富んでいます。

そんな15Sアーバンドレッサーを前にしての第一印象は「15Sツーリングとは何が違うの?」というものでした。それくらい見た目は変わりません。実際には、15Sアーバンドレッサーと15Sツーリングを比べると、フロントグリルやサイドのピラーガーニッシュ、ドアミラーカバー、ホイールデザインなどが変わっているのですが、パッと見た程度では、その違いなかなか気づきませんでした。

しかし、運転席のドアを開けて車内をひと目見た瞬間、両車の違いの大きさに驚きました。なんとなく事務的で質実剛健だった15Sツーリングに対し、15Sアーバンドレッサーのインテリアはものすごく華やかなのです。コンパクトクロスオーバーSUVとは思えない、見栄えのする上質な仕立ては、過去数年、カーデザインに並みならぬ力を注いできたマツダの面目躍如といったところ。このインテリアだけでも、CX-3 15Sアーバンドレッサーを選ぶ価値があります。

シートに座ってみても、本革のような風合いの人工レザーと、リアルスエードを思わせる手触りの良さを実現したグランリュクスで“いいモノ感”を伝えてきます。試乗したのは寒い日でしたが、追加装備のシート&ステアリングヒーターの効果もあり、心地良いドライブを楽しめました。

気になるエンジンやフットワークの印象、乗り心地については15Sツーリングの美点を継承。ベースモデルよりもはるかに心地良くてオシャレなインテリアを備え、安全装備も充実した15Sアーバンドレッサーは、まさに“CX-3の理想形”と呼べる仕上がりです。

それでいて価格は、15Sツーリング比で28万円強のアップとなる227万1500円〜。少々待たされはしましたが、CX-3の本命がついに登場です!

<SPECIFICATIONS>
☆15Sアーバンドレッサー(2WD)
ボディサイズ:L4275×W1765×H1550mm
車重:1210kg
駆動方式:FWD
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:111馬力/6000回転
最大トルク:14.7kgf-m/4000回転
価格:227万1500円


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文/上村浩紀

上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。

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