滑りやすい雪上で見えた実力!「エクリプスクロスPHEV」は三菱のこだわりと技術の塊

■ツインモーター4WDが前後の駆動力を自在に配分

今、欧州で売れ行きが伸びているのがプラグインハイブリッド車。ハイブリッドカーの一種だが、大きめ、かつ外部からの充電が可能なバッテリーを搭載し、近距離(短いもので30km程度、長いものなら100kmに迫る)ならエンジンを止め、モーターだけでEV(電気自動車)のように走行できる。一方、ガソリンを給油してエンジンを使えば、一般的なハイブリッドカーと同様に長い距離を走れる上に、EVのような充電の心配もいらない。プラグインハイブリッドカーは現時点において、環境性能と利便性とをハイレベルで両立したエコカーだといえる。

そんなプラグインハイブリッドカーの先駆者が三菱自動車だ。2013年、「アウトランダー」のラインナップにプラグインハイブリッド仕様の「アウトランダーPHEV」を追加。2020年末時点で世界60カ国以上に展開し、累計販売台数は27万台を誇る。ちなみに、アウトランダーPHEVの登場以降、欧州メーカーからもSUVのプラグインハイブリッド車が続々と登場しているが、アウトランダーPHEVの人気は不動。2020年には、同カテゴリーで欧州ナンバーワンの販売台数を記録している。

そんな三菱自動車のPHEV戦略の次なる一手が、2020年12月に登場した「エクリプス クロスPHEV」だ。「エクリプス クロス」はクーペスタイルのクロスオーバーSUVで、デビュー時のパワーユニットは1.5リッターのガソリンターボのみだったが、その後、2.2リッターのクリーンディーゼルターボを追加。そして今回、プラグインハイブリッドが登場した。ちなみに、日本市場向けはそれと入れ替わる形でディーゼルが廃止されたため、現在のラインナップはガソリンターボとプラグインハイブリッドの2本立てとなっている。

エクリプス クロスPHEVのシステムは、基本的にアウトランダーPHEVと同じ。つまり、熟成により完成度が高まったパワートレーンだ。アウトランダーPHEVでは、当初、2リッターだったエンジンが途中で2.4リッターへと排気量がアップしたが、エクリプス クロスPHEVは始めから2.4リッターエンジンを搭載。駆動力は、エンジン作動中でも基本的にモーターが生み出すが、高速域や高負荷時のみ、効率を追求すべくエンジンの駆動力がモーターをアシストする高度な仕掛けとなる。

一方、駆動方式は、前輪側に82馬力、後輪側に95馬力という高出力モーターを前後に組み込んだ“ツインモーター4WD”で、前後輪への駆動力を自在に配分し、運動性能を高めている。

■エンジンの存在を忘れるほど静かで滑らか

今回はそんなエクリプス クロスPHEVでロングドライブへと出掛けた。目的は、三菱自慢のPHEVの雪上での走行フィールをチェックするためだ。

エクリプス クロスPHEVで最初の驚きは、雪国へと向かう高速道路でのクルージング中に訪れた。エンジンの存在感がなく、まるでEVをドライブしているかのような乗り味なのだ。

三菱自動車のPHEVは、できるだけ広い範囲でエンジンを止めて走るよう努めるが、速度が上がったりバッテリーが減ってきたりするとエンジンが掛かる。その際も、エンジンが掛かったことに気づかないほど制御は滑らか。しかも、エンジンが作動してもモーターによる駆動が継続するため、エンジンの存在を忘れてかけてしまう。

実は、アウトランダーPHEVが2018年夏の改良でエンジン排気量をアップさせた理由は、まさにエンジンの存在感を消すためだった。排気量アップによって必要なエネルギーが生じるエンジン回転数を下げたのである。

エンジンの存在感がない分、エンジン音も徹底的に静か。そのため車内の静粛性は抜群で、移動時の快適性もハイレベルだ。これは、高速道路を使っての長距離移動時などには大きな武器となる。あまりに快適すぎて、もう普通のガソリン車には戻れないかも、とさえ思ったほどだ。

■クルマ自身が曲がることを楽しんでいるかのよう

一方、今回メインのチェックポイントである雪道での乗り味は、高速道路での快適性とはまた別の顔を見せてくれた。運転していて思わず顔がニヤけてしまうほど、ドライビングが楽しいのだ。

三菱自動車が誇る、ふたつのモーターによる電動4WDシステムの特徴は、軽快に曲がること。筆者はすでに、峠道での乾燥した路面から高グリップのサーキットまで、まるでスポーツカーのように気持ちよく曲がるエクリプス クロスPHEVの操縦特性を体験済みだが、超高性能モデル「ランサー エボリューション」シリーズを思わせる、SUVとは思えないほどグイグイと向きを変えていく走りの楽しさが印象的だった。

そして今回、滑りやすい雪上を走ってみたところ、やはり期待を裏切らない楽しい乗り味を披露してくれた。もちろん、ドライブモードを「ノーマル」や雪道に適した「SNOW」にすれば、安定性重視の制御となり、安心してドライブできる。一方、走行モードで最もスポーティな「ターマック」を選ぶと、エンジンが常時作動してモーターのパワーをより引き出してくれるのに加え、ハンドリングの制御も積極的に向きを変える特性へと切り替わる。

すると、どうなるのか? コーナリング中はアクセルペダルを踏むことでグイグイと向きが変わり、まるでクルマ自身が曲がることを楽しんでいるかのようにイキイキと走ってくれる。

試しに公道から外れた広いスペースでトラクションコントロールをオフにし、ハンドリングの限界特性を試してみたら、ドリフト状態で旋回し続けられるではないか! クルマ自身が「せっかくだからもっと走りを楽しみなよ」と話しかけてくるかのように、ドライバーを楽しませてくれる。

エクリプス クロスPHEVをドライブしていると、背の高いSUVではなく、スポーツカーを運転しているかのような気分になる。まるで“ランエボ”をドライブしている時のような、あのワクワク感がこのクルマには備わっているのだ。SUVでこれほど楽しめるハンドリング特性は、日本車では珍しい。これぞ三菱自動車らしいモデルといえるだろう。

■SUVのパイオニア「パジェロ」にも通じるドラポジ

プラグインハイブリッドカーといえば、エコ性能で評価されがちだ。しかし、エクリプス クロスPHEVは、普段使いや高速クルージング時の優れた快適性と、ドライバーがやる気になった際のハンドリングの楽しさというふたつの顔を備えていて、それを使い分けることこそがオーナーの喜びとなりそうだ。

そんなエクリプス クロスPHEVをドライブしていて気づいたのは、クルマにみなぎる三菱自動車“らしさ”が濃いこと。「パジェロ」から継承された4WD制御へのこだわり、“ランエボ”から受け継がれるハンドリングの楽しさに加え、ドライビングポジションまでも実に三菱車らしいのだ。

エクリプス クロスPHEVは、ハッチバックとSUVの中間を狙ったクロスオーバーSUVで、軽快さがウリのクーペスタイルを採用する。そんなクルマのドラポジは、セダンやハッチバックのように低めにセットするのが昨今のトレンドだ。しかし、エクリプスクロスPHEVは、フロアに対する着座位置が高めになっている。それはあたかもパジェロのようだが、着座位置が高い分、車両感覚をつかみやすく、また、車両直近の路面状況も把握しやすい。まるで優れたオフローダーのようなドラポジなのだ。

SUVに対して一家言持つ三菱自動車としては、クロスオーバーカーとはいえ、そこは譲れないこだわりだったのだろう。まさにエクリプス クロスPHEVには、三菱自動車の魂が凝縮されているといっても過言ではない。

<SPECIFICATIONS>
☆PHEV P
ボディサイズ:L4545×W1805×H1685mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2359cc 直列4気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:128馬力/4500回転
エンジン最大トルク:20.3kgf-m/4500回転
フロントモーター最高出力:82馬力
フロントモーター最大トルク:14.0kgf-m
リアモーター最高出力:95馬力
リアモーター最大トルク:19.9kg-m
価格:447万7000円

>>三菱「エクリプスクロス」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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