初のバッテリー駆動EV専用モデル「レクサスRZ」に搭載されるステアバイワイヤシステムの妙

■“操舵装置”という言い方がしっくりくる台形ハンドル

「あえてハンドルって言い方のほうがしっくりきますよね」。RZの開発を総指揮した、レクサスインターナショナルの渡辺剛主査に案内してもらって、乗り込んだ室内。

ステアリングホイールって、ふだん見ていないようで、実際に上半分がなくなるだけで、ダッシュボードの光景ががらりと変わって見えるのに、あらためて感心しきり。

「握りは9時15分を想定しています」。レクサス車の操作や意匠などのクオリティを厳しい目でチェックする役割の、レクサスの「TAKUMI」である尾崎修一氏は、今回ハンドルの意匠を決めるのに大きな役割を果たしました。

センターボスはもちろん、ちゃんとあって、ハンドルの輪郭は台形。握りはけっこう太めで、持つ位置でだいぶ印象が変わるぐらい握りの断面形状は凝っています。

「このシステムでは、ステアリング(操舵)操作のとき、持ち直しが必要ありません。それもあって、あえて従来とまったく異なるデザインを採用しています」と尾崎氏。

9時15分の位置で握ったまま、ウィンカーレバーやワイパー、それに減速などを調節できる回生ブレーキの効きを段階的に選べるボタンが操作できます。

ウィンカーは、ステアリングコラムから生えたレバーでなくて、フェラーリやランボルギーニのように親指で操作できる意匠もありだったのでは? と確認すると、「そういう議論もありました」とのこと。

まあ、なるべく多くの人が違和感なく操作できること、がトヨタ/レクサスが重要視している設計思想と聞くので、そのうち、違うクルマにこのシステムが搭載したときは、そうなるかもしれません。

ステアバイワイヤシステムの妙はどこにあるんでしょうか。構造的な見どころは、ハンドル側と、ステアリングラック側にモーターが設置されていて、ドライバーの操作は電気信号に変換されて操舵輪を動かすモーターへと伝えられるのです。

一方、よくインフォメーションといったりする、タイヤからサスペンションシステム、そしてステアリングシャフトを通じてドライバーへと伝えられる路面状況やタイヤのグリップの様子は、逆に、操舵輪の方のセンサーが感知。

プリセットされた設定にしたがって、“この振動は不必要なのでカット。こっちの前輪の橫方向のGのかかりかたは重要な情報なので即座にドライバーに伝える”といった具合に、情報が”整理”されるとのこと。

前出の渡辺主査によると、もうひとつ、このシステムを鋭意開発しているのには、理由があるそう。RZに採用される全輪駆動システム「DIRECT4(ダイレクトフォー)」との相性の良さ。電気モーターのトルクを制御して、ドライバーの意思に沿った気持ちよい走りを実現するための技術と説明されています。

DIRECT4を使えば、前後の揺れを抑えることで高級セダンにぴったりの乗り味から、後輪駆動のスポーツカーのようなファントゥドライブまで、任意で設定が可能になりそう。

ステアバイワイヤシステムも、ハンドルを動かす角度をもっと狭めて、よりスポーツカー的なハンドリングを作り出すことだってできるでしょう。

ふたつを組み合わせることで、「より人とクルマとが一体になった気持ちのよい、新しいドライビング体験を提供できます」とはレクサスインターナショナルの広報氏の言です。

運転してみると、最初は、どうしてって従来のステアリングホイールのつもりで、大きくハンドルを動かしてしまうため、いきなり、車両のノーズが意図したより大きく内側を向いてしまい焦りました。

RZの操舵感覚はやや重めの設定のようなので、今度は切り遅れに注意しながら、”このぐらいかな”と9時15分の角度でハンドルを握ったまま腕を動かすと、逆に「え? こんな小さな動きだけで?」と驚くほど反応よく、車体が動くのです。

テストコースにはスラロームといって、工事現場にあるような三角錐が立てられていて、そのあいだを縫うように走れるようになっていました。

RZはパイロンの間を実に軽快に、右に左にと走り抜けるのです。このときはおそらくDIRECT4による制御も効いているはず。なにはともあれ、全長4805mm(も)ある車体のサイズ感も重量感も感じさせないほど、軽快さが感じられました。

従来のステアリングホイールとは明らかに違うシステムなわけですが、乗り替えても操作で戸惑うことはありません。2035年までに全車種電動化をめざすというレクサスだけに、気合いがはいった技術です。問題があるとしたら、ステアバイワイヤシステムに慣れると、ぐるぐるステアリングホイールを回すのがかったるくなることでしょうか。

 

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

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