最後の高性能ガソリンエンジン車となりそうな、Z史上もっともパワフルな“史上最強のZ”

■「カッコよくて、速くて、いい音!」のZ

そんな新型フェアレディZの大きなトピックが、史上最強のZだということ。これまでフェアレディZのエンジンで最も高性能だったのは従来モデルの「NISMO」に積まれた排気量3.7LのV6自然吸気エンジンで355psでした。しかし新型はなんと405ps。文句なしに、Z史上もっともパワフルなZの登場です。

新型のエンジンは排気量3.0LのV6ターボで、すでに「スカイライン400R」に搭載されているもの。しかしそのまま搭載しているのではなく、最大トルクの発生回転数を高めたり、シフトアップ時の回転落ちをよくするためのリサキュレーションバルブが追加したりするなど、Zへ積むにあたっての改良も施されています。

口の悪い人は「新型といっても従来型のマイナーチェンジでしょ?」というかもしれません。たしかに、プラットフォームは「従来型の改良版」です。とはいえ、部品単位でいえば8割が従来型とは異なる新設計で、つまりはかなり大きな変化を受けているというわけです。

開発のこだわりは「カッコよくて、速くて、いい音!」だそうですが、その3つのポイントはしっかりと進化しているのだから、それで十分じゃないですか。細かいことをいわず、最後の高性能車を楽しむ。最新のフェアレディZはそういう心意気で接するクルマなのです。見た目もカッコいいですしね。

そんなフェアレディZに、日産のテストコースで試乗してきました。パワフルなことと加速の力強さはいうまでもないのですが、驚いたのはマナーの良さ。予想を超える完成度でした。

高出力の後輪駆動車はその持て余すパワーゆえに性能を味わっていると、ある領域から上は扱いが難しくなるのが一般的です。しかし新型フェアレディZは、あいにく雨の中での試乗だったにもかかわらずハイスピードコーナリングでも急激に挙動を乱すような振る舞いがなく、しっかりと鍛え上げられていることがわかりました。

パワーの与えすぎでリヤタイヤが滑り出しても、よほど無謀な運転をしない限りはスリップを防ぐ電子的な制御(スタビリティコントロール)がしっかり効くので安心です。

開発者は「先代の車体やサスペンションを知り尽くしているから、どこをどう改良すれば性能が上がるかわかっていた。新型はそこをブラッシュアップした」と言います。革新ではなく“熟成”なのです。

そんな新型のフェアレディZですが、デビュー直後にもかかわらず7月末をもって受注を一時停止中。現在のところ、その再開見通しは立っていません。

理由は「生産台数に制約がある中で、その能力を超えるオーダーを受けたから」というもの。いま、半導体不足や新型コロナウイルス感染症によるロックダウンを受けた部品工場のライン閉鎖などで、新車を思うように作れない状況が続いています。その影響を受けて、「フェアレディZの注文をこれ以上受けてもお客様に届けられない」というわけ。

もしかすると、「最後の高性能ガソリンエンジン車となりそうな、史上最強のZ」は、このまま伝説となってしまうのかもしれません。素早く購入を決めてオーダー停止に間に合った人はきっと、「新型Zの価値」に気がついていた人なのでしょう。

<SPECIFICATIONS>
☆Version ST(6速MT)
ボディサイズ:L4380×W1845×H1315mm
車重:1590kg
駆動方式:RWD
エンジン:2997cc V型6気筒 DOHCターボ
エンジン最高出力:405馬力/6400回転
エンジン最大トルク:475Nm/1600-5600回転

価格:646万2500円

<文/工藤貴宏>

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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