【試乗】マツダ新ロードスターは稀代の名車・初代を超えたか!?

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ドライビングシートに座りました。

ギュとした塊感があります。すべてのものが自分にギュッと近づいた感じ。フロントバンパーの先端も、フロントウインドウの上端も、ドアの内張りも、何もかもが近くて、自分の意識が行き届きやすい感じ。SUVをルーズなアメリカンカジュアルだとすれば、こちらはスポーツカジュアル。フィットネスウエアほど“パッツパツ”ではありませんが、心地よいフィット感があります。フィット感はNA型より強め。

グレードは「S Special Package」の6速MT。エンジンは全車共通のSKYACTIV-G 1.5リッターです。試乗場所は伊豆スカイライン。適度にアップ&ダウンがあり、コーナーのRはところどころややキツめ。ここのワインディング久々ですが、大好きです。

雨の予報でしたが、ラッキーにも花曇り。うっすらと空を覆った雲のすき間から、ときどき太陽が光を割り込ませます。濃い影が落ちないので、実のところ撮影にはサイコーのコンディション。そしてピーカンのときよりオープン走行も快適なのです。

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迷わずオープンに。シートからお尻を離すことなく「カチャ」「カチャ」「パチッ」。傘を閉じるくらいの手間と時間でフルオープンになります。NA型でドライバーズシートに座ったまま同じことをしようとすると、私ならカラダのどこかの筋を痛めてしまいます。幌に変な畳みグセ=シワが付くのは嫌だったので、必ず降りてから畳んでいました。

それと比べて、ND型の幌は隔世の感がありますね。フロントウインドウ上端を後退させることでルーフトップの面積そのものを小さくするなど、いろんな積み重ねで、こうした芸当が可能になったようです。

エンジンスイッチ、オン。

エキゾーストマフラーから飛び出たばかりのサウンドが耳に届きます。ご安心ください。1.5リッターのスペックから連想するような、ひ弱さはありません。

クラッチペダルはフニャフニャせず、真っ直ぐに踏み込めます。「コク」とローにシフト。ストロークが短くても引っかかりやフリクションを感じません。実にいいですね。

薄〜くアクセルパダルを踏んでクラッチミートすると、スルスルとタイヤが転がり始めます。発進で気を使うことはまずありません。

早々にシフトアップして、アクセルを践む込む量を穏やかに足していきます。

回転と同調して、エキゾーストサウンドがキレイに高まります。ビート感があって、思ったより元気がいいですよ、これ。排気量こそ小さいものの、テンハチと比べても遜色ありません。むしろ息の長い加速が続きます。シートに押さえ付けられる背中にかかるGが、少しずつ上乗せされている感じ、とでもいいましょうか。ペダルの踏み込みにちゃんと反応してくれます。

フォンッ。

コーナー手前でシフトダウン。回転を合わせるためにブリッピングすると、レスポンスよくエンジンがピックアップ。話はちょっと脱線しますが、先にご紹介したホンダ「S660」(過去記事1過去記事2)にひとつだけ物足りなさを挙げるとすれば、このブリッピングの瞬間ですね。S660はターボエンジンなので、どうしても回転のツキがワンテンポ遅れるんです。遅れるのを見越して早めにペダルを踏み込むのもウキウキできる体質ですが、ロードスターのように小気味よく反応してくれるほうが、間違いなく気分はいいものです。

ブレーキペダルに足を載せます。

遊び代を踏み切ると、ペダルがグッと硬くなります。ここから先はペダルを踏み込む量ではなく、踏力だけで制動をコントロールするイメージ。これはNA型でも同じです。踏力に合わせてスーッと制動力が立ち上がって、前輪へとスムーズに荷重が移っていきます。

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ステアリングを切り始めると、ロードスターはそれに連動し、キレイにロールします。ロールの軸が自分の体軸に近い感じ、なんだか分からないけど、超イイィ〜ですよ。クルマが動いているというより、自分も動いているようなノリ。もうこの時点で“幸福ドーパミン”がジンワリ湿潤してきます。

ステアリングを切る量と、ロールする量がシンクロ。愉快。

少しペースアップ。といっても伊豆スカでは3速で十分です。ビリビリとエキジーストノートをエンジョイ。さっきよりもコーナー入り口が近づいてから一気にヒール&トゥ。

トゥで減速。

その瞬間、4本のタイヤが路面をつかみます。「グワッ」というより、むしろ「グワシッ」って感じで。四輪すべて使って制動してくれます。NA型だとこうはいきません。フロントへ荷重が移ると、リアの荷重が抜け気味になってしまいますから。その分、リアを早い段階で出せる(出ちゃう?)ことになるのですが、新ロードスター S Special Packageの6速MTに限っていえば、スタビリティの次元が違います。単に安定性が高いというより、コントロールできる範囲が広がった印象です。

(同時に)ヒールでブリッピング&シフトダウン。

ヒール(カカト)とはいっても、アクセルペダルは吊り下げ式ではなくオルガン式なので、ペダルの根元付近よりも中腹くらいを意識して踏むとコントロールがイージー。

ステアリングを切り込んでいくと…、(NA型に比べると)フロントのイン側タイヤのグリップが増しています。クリッピングからアクセルをオン。ここでフロントタイヤから一気に加重が抜けることもありません。旋回の姿勢を保ったまま、コーナーの出口へ向けてリアタイヤが車体を前へと蹴り出します。

いつから、こんなにドラテクが上達したんだ?

雪山でパウダースノーに当たると、スキーが上達したような気分になることがあります。あれと同じです。新型ロードスターに乗ると、ドライビングテクニックが上達したような気になるのです。こんなこと、NA型ではありませんでした。

新型ロードスターには、濃縮還元されたドライビングプレジャーが100%充填されています。

もはや、ロードスターがベンチマークとされることはあっても、ロードスターが目標とするようなクルマは存在していないのでは? と思います。

唯一のライバルは初代のNA型なのでは? と想定していましたが、稀代の名車NA型さえついに超えたのがND型だと、今回の試乗において確信しました。

次の機会には、実は、新型ロードスターは“2種類”存在することを、AT車のインプレとともにお届けしたいと思います。

<SPECIFICATIONS>
ロードスター S Special Package(6MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車重:1010kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc水冷直列4気筒DOHC16バルブ
最高出力:96kW(131PS)/7000回転
最大トルク:150Nm(15.3kgm)/4800回転
トランスミッション:6速MT
価格:270万円(消費税込)

(文・写真/ブンタ)

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