コップにヒントを得た画期的な「からまないブラシ」は掃除機に革命をもたらすのか?

■20人以上のモニターがテストし、さらに改良

「ダブルブラシ」を社内で提案したところ、営業部署からはすごくよい反応があったのですが、開発メンバーの反応はあまりよくありませんでした。これまでの苦労もあって「本当にできるのか」と言われましたが、技術者にアドバイスをもらいながら何とか作り上げました。

できあがった「ダブルブラシ」を、家族に30cm以上の髪の毛を持つ方20人以上にモニターとして1週間以上使っていただいたところ、「本当にからまない」、「使い勝手も思ったよりずっといい」といった反響をいただきました。

しかし回転ブラシには巻き付かないものの、ペットを飼われている家庭では、ブラシ下部のローラーにペットの毛がからまるのをなんとかしてほしいという声をいただき、そちらも同時に開発することになりました。

ローラーはゴミを吸うところではないので髪をキャッチしてほしくないのですが、ノズルを動かしてもうるさくならないようにするため、(吸音性のために)若干ゴミをキャッチしてしまうようなローラーを採用せざるを得なかったのです。そこでローラーの材質はそのままに、表面を特殊加工してつるつるにし、ゴミのキャッチ性を落としました。

従来のブラシはフローリング用の柔らかいブラシとじゅうたん用の固いブラシを交互に配置していましたが、今回は2種類の毛を組み合わせた1種類のブラシを採用しました。1種類に見えますが、じゅうたんもフローリングも対応でき、ゴミ取り性能は従来と同等になっています。

▲からまないブラシによって毛糸を吸い込むデモ。次々に吸い込んでいったが、1本もからみつくことはなかった

▲こちらは従来モデルのブラシによるデモ。髪の毛を吸い込んだところ、からみついてしまった

▲同様にからまないブラシで吸い込んだところ、やはり1本もからみつくことはなかった

 

*  *  *

“コロンブスの卵”というより“コペルニクス的”とも言える大転回か

コマに巻き付けたヒモを引っ張ると、ヒモがほどけながらコマが回転していくというのは多くの人が体験しているはずだ。逆に、コマが回転すると巻き付いたヒモがほどけていくと言われれば「なるほど」と思える。しかし、50年以上も前から掃除機に搭載していた回転ブラシをそのような形状にするという逆転の発想に至ったのは、今回のからまないブラシが初めてだった。

言われてみると「な~んだ」と思えるという意味では“コロンブスの卵”的と冒頭では書いた。しかし、これまで「からまった毛を手軽に取り除く」、「からまった毛をカットして吸い込む」、「なるべく毛がからまないようにする」といったアプローチはあったが、「毛がからまるのは仕方ないが、それをそのまま移動させて吸い取ってしまう」という発想には驚きを禁じ得なかった。他社の開発者は「やられた!」と悔しがっているのではないだろうか。

もちろん、これまで他社も含めて取り組んできた、「からまった毛をなんとか処理する」というアプローチも決して間違いではないし、それによって手入れの手間がかなり楽になってきたのは確かだ。2台のモーターを搭載したことで使用電流が変わったこともあり、従来モデルでからまないブラシを使うことはできないのは残念なところだ。

しかし「1本の毛もからませたくない」というパナソニックの今回の取り組みは、掃除機がまた新たな時代を迎えた象徴的なできごとといっても過言ではないだろう。今後もさらにどのような形で進化していくのか、他社はどのようにしてからまないブラシに対抗してくるのか。そのあたりも楽しみになってきた。

>> パナソニック「パワーコードレス MC-SBU840K」

<取材・文/安蔵靖志

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安蔵靖志|IT・家電ジャーナリスト 一般財団法人家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー、スマートマスター。AllAbout家電ガイド。ITや家電に関する記事執筆のほか、家電の専門家としてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。Facebookはこちら

 

 

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