キャンプ用コンパクトチェアの革命児、ヘリノックス「チェアワン」の人気の理由を紐解く

■アウトドアチェアの常識を変えた!超コンパクト&超軽量なのに快適な座り心地

ヘリノックス登場以前は、<アウトドアチェア=BBQでよく使う、広げるだけの長物のチェア>のイメージで、小型で快適なコンパクトチェアは多くありませんでした。
あったとしても、個人輸入の小規模通販サイトでたまに見かける程度。当時はそういった通販サイトを探し出すのも一苦労。今のようにSNSも盛んではなく、キャンプに詳しいWebサイトも数少ない、情報収集が大変な時代でした。そんなわけで快適でコンパクトなチェアは一般的ではなかったのです。

▲折りたたみ式のフレームだけで自立するチェアは、登場当時、唯一と言ってもいい存在だった

だから「チェアワン」が上陸したときは、「そんなに小さくて軽いの!?」という驚きと「いやいや、言ってもそんな細いポールですぐ壊れるんでしょ?」「小さくて軽くて…はいいけど、座り心地は大したことないでしょ?」という疑いも含んだ感情が渦巻いた覚えがあります。

登山から始まり、ウォーターアクティビティ、サイクリングなど、あらゆる外遊びにまつわる製品を自社で企画、開発、販売を行うモンベル。チェアワンの正規輸入代理店でもある同社の広報 長井さんによると「当時の他社モデルと違っていた点は、吊り下げ式というシンプルでユニークな構造により、今までにない<軽量・コンパクト性>と<快適な座り心地>を両立した革新的な商品だったんです」とのこと。

「加えて、フレキシブルなジョイント部分によって凸凹のある地形でも接地性が良く安定する、ショックコードで簡単に確実に組立てられる、などアウトドアシーンでで使用することを前提とした機能を備えていました」

▲テントポール同様、ショックコードで繋がったポールをジョイントするだけで組立可能

構成パーツは少なく、ショックコードで繋がったポールをフレームとして、座面を取り付けるだけの簡単構造。収納時は折りたたまれたポールが複雑に見えますが、初めての人でも触っているうちになんとなく理解できるくらい、組み立てが容易です。

しかもアウトドア用チェアなのに1kgを切る軽さや、一般的なキャンプチェアと同等以上の座り心地も相まって、あっという間にキャンプのスタンダードギアになったわけです。その人気に追随して、チェアワンのフレーム構造は今日のキャンプ用チェアの定番になり、数多くのフォロー商品が世に生まれています。

そんなチェアワンのストロングポイントを細かくご紹介していきましょう。

 

■とにかくコンパクトに収納できて軽量

ヘリノックス「チェアワン」の一番の魅力は、何と言ってもその収納性の高さと軽さ。

チェアワン以前のアウトドアシーンでは、【アウトドアチェア=座り心地は良いけど、かさばる&重い】が当たり前でした。そんなアウトドアチェア界に彗星のごとく現れたチェアワン。初めてアウトドアショップで現物に触れた時の感動たるや。本当にすごかった。

収納サイズが幅35×奥行き10×高さ12cmと非常にコンパクトで、2Lペットボトルと変わらないサイズ感。車載はもちろん、徒歩キャンプでのバックパックへの収納も容易。重量は収納袋込みで960gと、とにかく持ち運びに優れています。さすがに登山などに持っていくには他の選択肢も入ってきますが、キャンプであれば間違いなく大活躍。

▲片手で持てるほどの軽さ。キャンプ未経験者に披露するとすごくいいリアクションがもらえて気持ち良い

十数年前にファミリーキャンプを卒業し、もっぱらソロキャンプを楽しむようになったKさんは、

「良いお値段なので数ヶ月迷いましたが、チェアワンは私にとって買って大満足なアイテム。キャンプでは、キャンプ飯や焚き火を妥協なく楽しみたいので、ヴィンテージのガソリン2バーナーやファニチャー類、アイアンの焚き火台を必ず持っていきます。こういうギアはサイズ感があるので、チェアまで大きいと、小型車だと積載に一苦労だったんです。チェアワンは積載の隙間に忍ばせて持ち運ぶことができるので、車載パズルが一気に楽になりましたね。ファミリーキャンプのときにあったらどんなによかったことか…(笑)」

と話します。

▲他のキャンプギアと一緒に収納できるので積載はもちろん、自宅での収納にも困らない

軽自動車やコンパクトカーでキャンプを楽しむ人も少なくない今のキャンプシーンにおいて、小さく収納できるキャンプギアはそれだけで正義。

良い道具な反面、価格もそれなりにするので全員分揃えるのは難しいかもしれませんが、1脚でも2脚でも「チェアワン」に切り替えるだけで、どうしても荷物が多くなりがちなファミリーキャンプの積載も助けてくれます。

チェアワンスタイルのチェアがたくさん出回っている今でこそ当たり前に感じますが、その当たり前を作った元祖がこの「チェアワン」なのです。

 

■これまでにない独自のフレーム構造で瞬時に組み立て可能

▲構成パーツはポールと座面のみ。収納袋は小物ケースとしても使用できる

パーツは本体ポールと座面のたった2つだけ。ポール内部にショックコードが通されており、すべてのポールと樹脂パーツが連結されています。樹脂パーツを少し振るだけで、ポール同士が大体組み合うので、あとは樹脂パーツに差し込むだけでチェアのフレームが完成。これがとにかく画期的でした。

▲収納ケース内に組立方法が書いてあるのも、当時なんだか無性にかっこよかった

カシャンカシャンと勝手に組み上がるので、ギミック厨としても非常にアツい。思わず声が出てしまうほど驚いたし、今でもキャンプ未経験者に見せると歓声が上がるほど。

▲4隅のポケットに差し込む際は少しコツがいるが、慣れれば一瞬で組み上がる

フレームを組んだら、あとは座面裏の4隅のポケットにポールの先端を差し込むだけで完成。慣れれば数分もかからずに組み上げられるので、バックパックでキャンプする際には一番最初に設営して荷物置きにするのがいつものパターン。

なお、座面上側2箇所を先に取り付けたのち、下側2箇所を差し込むのが公式の設営手順。個人的には<下側→上側→下側→上側>の順番だと変に力を入れずにスムーズに設営できる(気がする)。

もちろん、設営の容易さや速さは、袋から出して開くだけの従来のアウトドアチェアに分があります。これからお気に入りのチェアを探すという人は、自分のキャンプスタイルや積載力と天秤にかけて選択するのがいいですね。

▲見失いがちな収納袋をフレームに収められるってだけでも画期的だった

そして収納袋は、両端を脚側のポールに引っ掛けてから座面を取り付けることで、簡易ポケットとして使用可能。ガストーチや革手袋などでキャンプ中にごちゃごちゃになりがちなパンツのポケットもスッキリします。

「オートキャンプ場でキャンプだけを楽しむときには、ファニチャー類をしっかり持ち込むので、ポケットの出番はあまりありませんが、旅をしながらキャンプをするときには地味に便利ですね。バックパックひとつにすべてのギアを収めるのでテーブルも小さいですから、地面に直置きしたくない小物類はフレームに吊るした収納袋にしまってます」というのは、連休のたびにキャンプ場をベースにバックパックひとつで各地の名所を巡っているというAさん。

▲バックパックにも余裕で入るので、気軽に身軽にデイキャンプやデイハイクを快適に楽しめる

 

【次ページ】なんといってもDACのポールがスゴい!

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