“配達のポルシェ”と呼ばれたクルマ。スバル サンバーが「赤帽車」に選ばれた理由と特別仕様の詳細を深堀り

外装で目に付くのは前方に張り出したフェンダーミラー。基準車はドアミラーですが、赤帽では助手席に荷物を積むこともあるため、フェンダーマウントに変更してもらっていたとのこと。「助手席に荷物を積んでいなくても、視線の移動が少なくて済むので視認性がいいんです」(長谷川さん)。走行時間が長いため、小さな違いでもドライバーの負担を大きく軽減してくれます。

内装での大きな変更は、サイドブレーキが掛けたままの状態でレバーを戻せるフライオフ式となっていること。長い距離を走る場合、ドライバーが運転席と助手席で横になって仮眠をとることもあるため導入されたものです。「運転席と助手席の間に突起がないだけで全然違います」と長谷川さんも強調していました。

地図などを収納するのに便利なオーバーヘッドシェルフと高照度のルームランプも赤帽車専用の仕様。「カーナビもスマホもない時代は、地図がなければ荷物を届けられませんでしたから、ドライバーはみんな何冊も地図を積んでいたんです」と長谷川さんが話すように、地図を収納できることと、夜でもしっかり確認できるようにすることは重要な要素だったのです。

運転席側のドアにはポケットの付いたドアアームレストが装備されています。これもB4サイズの地図を収められる形状とされていました。赤帽にとって地図がどれだけ大切だったのかが感じられます。

メーターにはデジタルのツイントリップメーターが装備されています。普通車に乗っていると当たり前の装備に思えますが軽バンではそうでなかったとのこと。「赤帽は走行距離か時間で料金を計算しますから、トリップメーターは重要な装備なんです。距離を測りながら、もう1つのメーターで燃費の計算ができるので2つないといけないんです」(長谷川さん)

赤帽車の屋根とフロントフェイスは赤くペイントされています。これはメーカーの工場で塗られていて、前述の専用仕様とともにグレードとして国土交通省の型式指定認可も受けていたとのこと。最盛期には年間1000〜2000台が販売されていたそうです。

ドア部分も当初は塗装でしたが、途中からステッカーになったとか。ドライバーは個人事業主のため、それぞれの屋号や電話番号なども記載された状態で納車されます。ちなみに元・赤帽車はマニアの間で取り引きされていたりするそうですが、「赤帽」のロゴは登録商標のため、そのままで走ることは商標権の侵害になるので注意しましょう。

長年、赤帽の配送事業を支え続けたスバル「サンバー」。長谷川さんは「長い距離を走っても安定感と安心感があって、乗っていて楽しい。九州まで荷物を届けに行ったこともありますが、『どこまでも行けそう』と思えるクルマですね」と話します。

「私は昔から『世界の名車』だと言っているんです。赤帽ならがんばれば年間1000万円くらい稼げる。価格が1000万円オーバーの大型トラックを買っても年間1億円稼げるわけではないですから、小さいけれども『稼げる名車』。こんなクルマはなかなかないと思います」

▲現行「サンバー」の赤帽車

現在、軽バンを使った配送業は数が増えていますが、長い歴史を重ねてきた「赤帽」には多くのノウハウが蓄積されているとのこと。

「開業には赤帽車の購入が必要だったり初期投資が発生しますが、政策金融公庫への申請をサポートする体制も整えています。組合の方から仕事を紹介したり、ルート設定の仕方などノウハウも伝えられるので若い人にもぜひチャレンジしてほしい」と嵯峨事務局長は話します。

「AIによってなくなる仕事もあると言われていますが、小口の配送が全てドローンに取って代わられることはないでしょう。そういう意味で長くできる仕事だと思っています」とは長谷川さんの言葉。「赤帽」の事業はスバルの「サンバー」とともに今後も歴史を刻んでいくことになりそうです。

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<取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍>

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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