配送などの業務用車として街中で見かける機会の多い軽バン。近年は趣味などに活用するユーザーも増えています。日本独自の規格として進化を続けてきた乗り物だけに、近年は電気で駆動するBEVも増えてきました。軽バンが電気自動車になるとどんないいことがあるのか? 最新モデルのダイハツ「e-ハイゼット カーゴ」に乗って検証してみました。
■軽バンBEVでは最長の航続距離
ダイハツは1957年に軽三輪車の「ミゼット」を発売して以来、様々な仕事に使える“働く相棒”として軽トラや軽バンを手掛けてきたメーカー。1960年代には他社に先駆け電気自動車を開発し、商用車の電動化にも積極的に取り組んできています。

「e-ハイゼット カーゴ」は今年2月に登場した電動の軽バンで、WLTCモード(国土交通省審査値)で257㎞というクラス最長の一充電走行距離を達成したモデルです。

バッテリーは36.6kWhという大容量のリチウムイオンで、荷室容量を確保するため薄型化され床下に収納されています。最近はポータブル電源を導入している家庭も増えてきましたが、最も普及しているのは1000Wh(1kWh)クラスですから、その36個分と考えると電気自動車のバッテリーの大きさがわかります。「e-ハイゼット カーゴ」には出力1500WのAC100Vコンセントも装備されているので、車内で電気製品を充電することもできますし、非常時には外部給電も可能なので“走るポータブル電源”としても活用可能です。

駆動力を司るのは、モーターと減速機、インバーターを一体化した「e Axle(イーアクスル)」と呼ばれる機構。後輪駆動軸上に配置されていて、高い駆動力を発揮します。

バッテリーとe Axle、電力を変換・分配を担うESU(電力供給ユニット)を床下に集約することで低重心化を実現すると同時に、エンジンモデルと同様の荷室スペースを確保。荷室長は最大1920mm(2名乗車時)あり、大人が縦に寝るにも十分な長さです。自転車もタイヤを外したりせずにそのまま積み込めます。
リアシートを畳んだ際の床面はフラットで、この点も商用車らしいところ。

その分、リアシートは薄く、ヘッドレストもないので“非常用”と割り切ったほうが良さそうです。ただ、これだけ広くてフラットな空間が作れるのは車中泊などに活用したい人には大きな魅力でしょう。
■軽バンとは思えない高級感のある走り

実際に乗り込んでみると、商用車らしい簡素なインテリアが目に入ります。1DINスペースにスピーカーまで詰め込まれたラジオなどはその最たるもの。今の時代にこのアナログ感は逆に新鮮に感じるほどです。

しかし、走り出すと軽バンとしてはかなり高級感のある乗り味でした。まず、車内が圧倒的に静か。電気自動車だから当たり前と思われるかもしれませんが、軽バンの場合はエンジン音だけでなくタイヤが発するロードノイズもかなり車内に入ってきます。これが結構バカにできないのですが、「e-ハイゼット カーゴ」はこのロードノイズがかなり消音されています。高速道路を100km/hで巡航しながら助手席の人と話すのに、声を張る必要が全くないくらい。車体にBEV専用の骨格補強などが施されているとのことですが、消音にもかなり気を遣っているようです。ちなみに、車外で聞くと走行中のインバーター音がかなり大きめなのですが、車内では全く気にならないレベルに消音されています。

もう1つ、高級感に繋がっているのが低重心な車体です。エンジンがシート下にあるキャブオーバータイプの軽バンに乗っていると、腰高感があり、実際に風で煽られたりすることも少なくありませんが、重量物であるバッテリーを床下に収めた効果か、そうした不安感がありません。サスペンションの挙動自体は高級感のあるものではないのですが、重心が低く安定しているため、高速道路などでも安心感があります。
加速も電気自動車らしくキビキビしたもの。最大トルクが123Nmあるので軽バンのイメージを覆す信号ダッシュが味わえます。高速道路の合流なども、軽バンのエンジン車だと思い切りアクセルを踏まないと怖い思いをしたりしますが、軽くアクセルを踏むだけで加速してくれます。0-200mの加速性能はガソリン車を凌駕しているとのことですが、その性能は十分に感じられました。
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