ジェームズ・ダイソンが語る「Dyson Cyclone V10」と先端テクノロジー【GoodsPress特別企画】

■「このコードレスクリーナーは、私たちの『世界を救うEV』の基本技術をすべて備えています!」

「これから、私たちダイソンは“世界を救う”ための、新しいステージに入ります」2018年3月20日、ネクタイこそ締めていないが、いつもと違うスーツ姿でステージに登場したジェームズ・ダイソン氏は、力強く、高らかに宣言した。ダイソン氏の手に握られていたのは、新しいコードレスクリーナー「ダイソンサイクロンV10」。サイクロン技術を筆頭に画期的な技術で「もう大した進化はない」「完成している」と思われていた掃除機の世界に革命を起こしたダイソンの最新モデルだ。

体験コーナーで実物を手にして驚いたのは、これまで以上にコンパクトで軽量であるにもかかわらず、吸引力がさらにパワフルなこと。そしてバッテリーの持続時間も最長約分と史上最高なのだ。クリーナーのトリガーを引くと、これまでにないハイビートな音を響かせながら、カーペットや床板の隙間にある細かなホコリやゴミまでどんどん吸い取っていく。

ダイソンが独自のサイクロン技術、紙パックを使わず吸引力が変わらないクリーナーを開発したのは1993年。そして日本でこの技術を搭載したキャニスター型、コード付きの掃除機「ダイソンDC02」が初めて発売されたのは今からちょうど20年前の1998年。さらに同じ技術を搭載したコードレスハンディークリーナー「DC16」が発売されたのは2006年だった。あれからまだ12年。

「これからは、コード付きのクリーナーは過去のものになるでしょう。私たちダイソンはもう作りません。軽くて小さくて、どんな人にも扱えるうえに、途中で充電しなくてもこれ1台で、家中の掃除がすべて行えるのですから」とダイソン氏。

しかもこのコードレスクリーナーは、ただのコードレス掃除機ではない。2017年9月26日にダイソン氏が開発中であることを明かした、2年後の2020年に発表、2021年に発売する予定の世界が注目するEV(電気自動車)のキーテクノロジーである、ダイソン独自開発の3つの技術がすべて搭載されている。
それが①デジタルモーター②サイクロンテクノロジーの開発で培った空力学技術③新型充電池だ。

「エンジニアは技術で社会の問題を解決して世界を幸福にすることが仕事です。そして、私たち独自のこうした技術は、すべてEVにも最適な技術であり、私たちなら自動車メーカーとは違う独創的EVを作ることができる。それが、私たちがEVに参入する理由です。そして私たちはこれまで以上に技術で大きく社会を変える、社会に貢献するテクノロジーカンパニーに生まれ変わります。このV10はその大きな飛躍の第一歩なのです」

■「自動車業界は変革の時期」」

ダイソンと聞いて気になるのが2020年に発表を予定している電気自動車事業だ。現在、世界中の大手自動車メーカーのほか、米テスラなどの新興企業がしのぎを削って開発を進めているが、ダイソンもまた、そのひとつ。デジタルモーター、空力学技術、新型バッテリーという独自の技術力で、存在感を高めている。「V」発表会後、グッズプレスなどの取材に応じたジェームズ・ダイソン氏は、今後のEV開発に関する質問にも、これらの技術が「多くの部分で応用できる」と話す。

「こうした新技術を開発できたこともあって、私たちはEV開発をはじめました。これはとても自然な流れでした。自動車産業は現在、変革の時期を迎えていますが、そうした意味でもEV市場への参入はいいタイミングだったと思ってます」

改めてEV参入への意向と自信を示したジェームズ・ダイソン氏。発表が待ち遠しい。

●サー・ジェームズ・ダイソン
1947年イギリス・イングランドのノーフォーク生まれ。ロンドンのロイヤ ル・カレッジ・オブ・アート(王立美術大学)で家具とインテリアデザインを学んだ後、エンジニアに。1978年、製材工場の木くずと空気を分離するサイクロン装置をヒントに5 年と5127台の試作品を経て世界初のサイクロン掃除機の開発に成功(日本で製品化)。1991年 にイギリス・ウィルトシャー にダイソンを創業。現在も創業者 、チーフエンジニアとして製品開発のすべてを統括する。イギリスの工場や経済への多大な貢献によりナイトの爵位、さらに文化や公共の福祉に多大な貢献があった人に送られるメリット勲章も受賞。現在、母校ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの学長を務めるほか、多摩美術大学・美術学部生産デザイン学科のプロダクトデザイン専攻客員教授も務める。

本記事の内容はGoodsPress5月号67-70ページに掲載されています

[関連記事]
掃除機の未来がここに!コードレス掃除機の不満を解消したダイソン新モデル

ダイソンから品質を落とさず価格を抑えた新型コードレスクリーナー登場

ダイソンが考える照明は技術もデザインも独創的です


(企画・構成・取材・文/渋谷ヤスヒト 撮影/松山勇樹 協力/ダイソン・一般社団法人ジェームズ ダイソン財団)

トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする