【もうすぐ出ますよ!注目の日本車】小さなSUV「キックス」から日産の逆襲が始まる!?

■前身のジュークよりも居住性がアップ

キックスは、日産自動車が間もなく日本市場へ投入するとウワサされるコンパクトSUV。実はこのモデル、2016年の南米マーケットを皮切りに、北米や中国市場などへはすでに投入済みで、各地で高評価を獲得しています。そして先頃、デザインとテクノロジーを大幅にブラッシュアップしたマイナーチェンジモデルが登場。これを機に、満を持して日本への導入が始まりそうです。

今回、東南アジアのタイで先行公開された2021年仕様のキックスは、フロントマスクを中心に、従来モデルからエクステリアデザインが大幅に刷新されました。フロントグリルには、日産車のアイデンティティともいうべき大きな“Vモーショングリル”が採用され、「セレナ ハイウェイスター」や「エクストレイル」にも通じる顔つきとなりました。それとともに、ライト回りのデザインも一新。光源にLEDを用いたヘッドライトやブーメラン型ウインカーなどにより、従来モデルと比べて質感や存在感が大幅にアップしました。一方、同じくブーメラン形状のリアコンビネーションランプにもLEDを採用。リアスタイルもシャープな印象に仕上がっています。

キックスのサイドビューは、ルーフが浮かんでいるかのように見えるフローティングルーフが特徴ですが、先行公開されたタイ仕様では、6種類の単色のほか、ルーフ部をブラック仕上げとした4種類のツートーンカラーが設定されていて、後者の方がより一層、ルーフの浮遊感が強調されています。昨今、日本車でも、ルーフの色を塗り分けたツートーンカラーが人気ですから、日本仕様への導入にも期待が高まります。

先行公開された新型キックスのボディサイズは、全長4290mm×全幅1760mm×全高1615mm、ホイールベースは2615mmと発表されています。日本市場での前身モデルに相当し、2019年末に生産中止となった初代「ジューク」(全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mm、ホイールベース2530mm)と比べると、新型キックスは全長で155mm、全高で50mm、ホイールベースで85mm拡大されており、十分な居住空間とラゲッジスペースが確保されていることがうかがえます。

新型キックスのインテリアは、インパネ、ハンドル、シート、インフォテインメントシステムなどのデザインが刷新されました。上級グレードには、Apple CarPlayなどに対応した8インチのタッチスクリーン式ディスプレイオーディオを装備。同じく上級グレードには、ブラックとオレンジのコンビネーションカラーが導入されています。

特に後者は、インテリアを華やかな雰囲気にしてくれるため、日本にも同様の仕様が投入されることを期待したいですね。

■e-Powerという新たな心臓を得た新型キックス

タイで先行公開された新型キックスで見逃せないのは、日産自慢の電動パワートレーン“e-Power”を採用していること。南米や北米、中国などの市場で販売されている従来モデルは、一般的なガソリンエンジン車でしたから、心臓部が大幅にアップデートされたといえるでしょう。

おさらいになりますが、e-Powerはモーターのみでタイヤを駆動させるのが特徴です。新型キックスの場合、組み合わされる1.2リッター3気筒エンジンが発電する電力は、通常時はリチウムイオンバッテリー(1.57kWh)の充電に使われます。しかし、より力強い加速力を必要とする場合や、バッテリーの充電量が不足している時などは、バッテリーから送られる電力と並行する形で、エンジンからモーターへと直接、電力が供給され、モーターを回転させるのです。またe-Powerは、減速中はエンジンを停止させ、減速中はクルマが完全に止まるまで、エネルギー回生によってバッテリーを充電します。

最新の心臓を得た新型キックスの最高出力は129馬力で、最大トルクは26.5kgf-mとアナウンスされています。「ノートe-Power」のそれは109馬力、25.9kgf-mですから、より大きなボディに見合うだけの動力性能を得たといえるでしょう。

ちなみに、新型キックスのe-Powerには、「ノーマル」、より強い加速力と回生ブレーキを得られる「S」、穏やかな加速と強い回生ブレーキでガソリン消費量を抑える「エコ」、バッテリーからの電力のみで走行する「EV」という、4種類のドライブモードが用意されています。このうち、Sとエコでは、アクセル操作だけで加減速をコントロールできる“ワンペダル”ドライブも可能にしています。

もちろん最新モデルだけあって、新型キックスは安心・安全に関する装備も充実しています。自動緊急ブレーキや、高速道路で前走車との間隔を一定に保ちながら走行する“インテリジェントクルーズコントロール”はもちろんのこと、走行中、死角になりやすい隣接レーンを走る車両の状況を検知し、接触の危険がある場合はそれを回避する後側方衝突防止支援システムや、車庫入れなどの際に死角のチェックに役立つ“アラウンドビューモニター”なども装備。安全運転をしっかりサポートしてくれます。

売れ線のコンパクトSUV市場に、ライバル各社は続々とニューモデルを投入しています。それに対し、同カテゴリーには2010年登場のジュークというカードしか持っていなかった日産自動車は、これまで厳しい戦いを強いられてきました。しかし、新型キックスの登場で、このクラスの勢力図は大きく変わるかもしれません。何しろ、新型キックスが手にしたe-Powerは、先行搭載されるノートにおいて、実に70%もの販売比率を誇る超人気のパワーユニットなのですから。一新されたルックスと、エコで強力な心臓を得た新型キックスがどのような評価を受けるのか、日本での正式デビューが今から楽しみです。


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文/上村浩紀

上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。

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