岡崎五朗の眼☆夢の内燃機関“スカイアクティブ-X”で、マツダはクルマ好きに新たな夢を見せる!

今回マツダが用意した試乗車は、次期「アクセラ」の開発車両に、現行モデルのボディを被せたクルマ。注目のスカイアクティブ-Xのほか、ボディやサスペンションにも次世代プラットフォーム向けに開発中の技術がフィードバックされていた。

スカイアクティブ-Xの開発目標値は、2リッターで最高出力190馬力、最大トルク230N・mとアナウンスされている。同排気量のガソリンエンジン“スカイアクティブ-G 2.0”はそれぞれ148馬力、192N・m、1.5リッターのディーゼルエンジン“スカイアクティブ-D 1.5”は同じく105馬力、270N・mだから、スペックからもガソリンとディーゼルのいいとこ取りであることが感じられる。

さあ、いよいよエンジン始動。スタートスイッチを押すと、スカイアクティブ-Xにはあっけなく火が入り、安定したアイドリングを始めた。予想していたよりもずっと静かで洗練されていて、ディーゼルエンジンのようなガラガラ音は全くない。長年のディーゼル車づくりのノウハウを活かし、エンジンルームをカプセル化していることも、不快な騒音を抑え込めている要因だろう。

ATセレクターをDレンジに入れてアクセルを軽く踏み込むと、厚いトルクがすぐに立ち上がり、軽快に加速していく。同排気量のスカイアクティブ-Gと比べると、スカイアクティブ-Xの方がより強いトルクを感じさせる。その要因のひとつは、スーパーチャージャーの採用。マツダはスカイアクティブ-Xのスーパーチャージャーを“高応答エアー供給機”と呼んでいるが、それはスーパーチャージャー過給本来のパワー&トルクを狙ったためではなく、あくまで安定した圧縮着火を実現させるためのデバイスとして使っているから。HCCIは、スーパーリーンバーンを実現するために、エンジンのシリンダー内に空気をきちんと入れてやる必要があるのだが、マツダはその方策として、低過給圧のスーパーチャージャーを使っている。

とはいえ、わずかな過給が厚いトルクにつながっているのは明らか。発進時の力強さはもちろん、高速巡航からアクセルをスッと踏み込んだ際のレスポンスや車速の伸びは、スカイアクティブ-Gを明確にしのぐ。スカイアクティブ-G 2.0と比べて、全域で10%、部分的には30%のトルクアップを果たしたという開発陣の主張が、十分に実感できる力強さだ。

それもあってか、スカイアクティブ-Xのドライブフィールは、ガソリンのライトプレッシャーターボ車にとても近い。ハイパワーターボのようにドカーンとパワー&トルクが炸裂する印象はないが、全域でトルクフル。試乗前の「これまでのエンジンとは全く異なる印象だったりして!?」という淡い期待こそ裏切られたものの、スカイアクティブ-Xは、まさに非常に良くできたガソリンエンジン、という印象だった。

そして気になる燃費は、アウトバーンを170km/hオーバーで走行し、フルスロットルでの加速なども試しながら、市街地で13.7km/L、高速道路を含めたトータルでも13.3km/Lという優秀な数値をマークした。同条件で走らせたスカイアクティブ-G 2.0のトータル燃費は11.5km/Lだったので、スカイアクティブ-Xはざっと、15~20%の燃費改善を期待できることになる。各社のエンジン開発現場では、わずか1%の燃費改善に日々、気の遠くなるような努力が重ねられている実態を考えると、スカイアクティブ-Xの省燃費性能は十分驚きに値する。

【次ページ】気持ちの良い走りこそスカイアクティブ-X最大の魅力

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