目指すは欧州トップブランド!“ミスターGT-R”が手掛ける台湾SUVに試乗

■FFで4WDに引けを取らないコーナリング性能を実現

▲U6 GT200の走りはとにかくパワフル。SUVというよりGTカーのような乗り味

今回の試乗では、オートポリスのメインコースと荒れた路面で構成されるレイクサイドコースが設定され、ベーシックモデルU6 GTとスポーツグレードU6 GT220のほかに、マイナーチェンジ前のU6、そしてアウディQ3とBMW X1が用意されていました。冒頭で欧州のトップブランドを追いかけていると話した水野氏。U6のマイナーチェンジで、それらと遜色ないものに仕上がったという自信がうかがえます。

U6の2015年モデルは、アクセルを踏み込むとスポーティなエンジン音が室内に響きます。ワインディングなどを走るときはワクワクする感じになりますが、街中で加速する際や高速道路ではやや耳触りに感じるかもしれません。エンジンは1.8Lながら十分すぎるほどのパワー。高速コーナーではロールの大きさにやや不安を感じる場面もありますが、全体的にスポーティで走らせて楽しいという印象です。ただ、荒れた路面のレイクサイドコースでは路面の凹凸をかなり拾うのが気になります。

続いてレイクサイドコースではQ3、メインコースではX1に乗り替えます。どちらもさすがドイツのプレミアムブランド。乗り味は上質の一言! Q3は荒れた路面からの入力を適度にいなし、プレミアムカーらしい乗り味を演出します。X1はさすがBMW。SUVでもストレートからタイトなコーナーに入る手前の強いブレーキングでも怖さを感じさせず、旋回中も滑らかなロールでクリアしていきます。アクセルを踏み込みエンジン回転数がレッドに近づいた場面でも耳障りではなく心地良さを感じるサウンドを聞かせてくれます。今回はメインストレートの入り口に100km/hからのフルブレーキングを試せるセットが用意されました。ここでも安定した挙動で無理なく止まることはできるのはxDriveの恩恵でしょう。

そしていよいよ水野氏が手掛けたU6の試乗。まずはスポーツグレードのU6 GT220から。「4000rpmを境に別物になるようセッティングした」と水野氏が語るように、アクセルを踏み込んですぐにやってくる圧倒的な加速力に驚きます。しかもレスポンスの良さが秀逸。GT220には足回りにビルシュタイン製ショックを採用。このショックアブソーバーもオートポリスのテストで随時エンジニアがドイツと連絡を取りながらセッティングを煮詰めていったと言います。高速コーナー、タイトコーナーともに車高の高いSUVに乗っていることを意識させない、左右に振られる怖さを感じさせずにクリアしていきます。そして下りの直線から一気にブレーキを踏んで減速しステアリングを切っても、挙動が乱れないことに驚きました。

▲U6 GT220のコックピット。黒と赤でスポーティさを高めている

乗り味こそGT220比べてマイルドになりますが、標準モデルのGTでもこの感覚は基本的に変わりません。驚きなのは、今回比較試乗したQ3やX1が2Lターボの4WDだったのに対し、1.8LターボのFFでライバルモデルと遜色ない走りを実現していることです。

水野氏はLUXGEN U6で欧州プレミアムSUVに追いつくと話しましたが、Q3やX1、さらには日本のSUVとは目指す方向性の違いを感じました。Q3やX1は文字通り上品でプレミアムな乗り味。日本の同クラスのSUVは機敏さとしっとり感が大きい(C-HRが象徴的)のに対し、U6には優雅さとダイナミックさを強く感じました。まさにグレード名にあるGTという雰囲気です。

試乗終了後、水野氏は我々の前に2本のタイヤを持ってきました。1本はX1、もう1本はU6 GTのもの。サーキットを全開走行したX1のタイヤにはフラットスポットやひび割れが出ているのに対し、U6のタイヤがそれらがほぼ見られません。「僕が目指している限界性能とはこういうことだよ」と水野氏は言います。

▲U6 GT(左)とX1のタイヤ。タイヤにも耐久性を持たせている

ただ、水野氏は自分が作ったクルマの性能をこれ見よがしに我々に見せているのではありません。彼が目指しているのは、世界規模でのクルマの新たな開発圏の構築だと言います。

「台湾はAR技術が進んでいて、その基盤が出来上がっている。今後はARを使ったクルマの開発が一層進む。これからはひとつの国のひとつの会社という閉ざされた世界で開発するのではなく、それぞれ得意分野をもった会社が手を組んで開発圏を構築していくべきだと思います。そうすることでもっとおもしろくて楽しい商品が生まれるはずだから」

GT-Rをはじめ数々の名車を世に送り出し、日産退社後は新たな場所でおもしろいクルマを生み出した水野氏。そしてこの先、クルマ業界の常識を破り、これまで見たことも体験したこともないような楽しいクルマをつくってくれるかもしれません。

>> LUXGEN(台湾)

 


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(取材・文/高橋 満<ブリッジマン>)

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