【ベンツ Eクラス ステーションワゴン試乗】優雅なスタイルが印象的!室内、荷室にあふれる余裕

■メルセデスらしく220dのエンジンは黒子に徹する

W213型こと現行のEクラスは、昨今の“スリーポインテッドスター”の流儀にならい、柔らかいラインでエクステリアが構成され、セダンもワゴンも、プレミアムブランドとしては珍しい尻下がりのボディスタイルを採ります。押し出しの利いた先代から一転、女性的とも映るフォルムが、なかなか“通”向けです。

今回試乗した「E220d ステーションワゴン アバンギャルド スポーツ(本革仕様)」を例に取ると、ボディサイズは全長4960mm、全幅1850mm、全高1465mm。先代より40mm長く、5mm細く、35mm低い。デザインだけでなく、寸法上もスラリとしたプロポーションになりました。

ホイールベースは65mm延びて2940mmに。興味深いのは、長くなったホイールベースをもれなくキャビンスペースの拡大に使ったことで、一方、ラゲッジスペースの容量は、旧型の655Lから640Lに減じています。スペースを余らせることが多いラゲッジスペースよりも、使用頻度の高いリアシートの居住性向上に意を注いだわけです。実際、新型Eクラスの後席は、足下、頭まわりともしっかりとした空間が確保され、シートの高さも適正。エアコンの吹き出し口も設けられた、快適な場所となっています。

スペック上では減少した荷室ではありますが、同等のボディサイズを持つBMW「5シリーズ ツーリング」の容量は570Lですから、依然として十二分の広さといえるでしょう。メジャー片手に実寸してみると、奥行きは114cm、横幅は、奥が110cm、手前が125cm。自動で開閉するラゲッジカバーまでの高さは45cm。これなら、カメラバッグ、大型ストロボ、脚立、三脚といった撮影機材もろもろに加え、スタッフの手荷物、衣装なども飲み込むことでしょう。

しかも、床下には30cmほどの深さがある収納スペースが広がっているのです。床下収納のフタとなるフロア部分を、開けたままストラップで固定できるようになっているのは、ジャーマンメーカーらしからぬ、細かい気遣い。両手を使って荷物を整理することができます。ほかの荷物といっしょにしたくない洗車セットやペット用のケアグッズなどのほか、人目に触れさせたくない貴重品などを隠すのにも重宝しそうです。

試乗車のパワーパックは、2リッターの直4ディーゼルターボ(194馬力/40.8kg-m)と9速ATの組み合わせ。黒子に徹することの多いメルセデスのエンジンですが、220dのそれは、輪をかけて控えめです。

わずか1600回転で4リッターV8級の太いトルクを発生させる上、普通に運転している限り、多段式のATが次々とギヤを渡していくので、ゆるゆると回っているばかり。100km/h巡航時の回転数は、わずか1400回転です。

ちなみに、ニューEクラスは徹底的な軽量化が奏功し、E220dの車重はカタログ値で先代モデルより50kgも軽い(!)1890kgに抑えられました。動力性能においてプラスなのはいうまでもありませんが、(本来の目的である)燃費にも効果が出ています。エンジンのリファイン、軽量ボディ、多段化ATの恩恵で、2リッターディーゼルモデルのJC08燃費は、先代の18.3km/Lから、20.0km/Lに向上しています。今回、350kmほどを走った段階で、ドライブコンピュータは15.1km/Lを表示していました。実用燃費として、順当な数字でしょう。

メルセデスの実用ワゴンとしては“らしからぬ”優雅なスタイルで、室内、荷室ともに余裕あるEクラス ステーションワゴン。移動距離が長いカメラマンにとって、自動運転…ならぬ、各種運転支援システムもありがたい装備です。新型Eクラスでは、ステレオカメラと5つのレーダーで自車の周囲を監視し、アクセル、ブレーキ、そしてステアリングを自動で操作します。前走車を追走、車線逸脱を防止、ヘッドランプのハイ/ローを自動切り替え、さらに、衝突防止や被害軽減までカバーしてくれます。

また、自車をあたかも俯瞰しているかに見せてくれる“360度カメラシステム”も、狭い道を行く時や、込み入った場所に駐車する際など頼りになります。

E220d ステーションワゴン アバンギャルド スポーツ(本革仕様)の車両本体価格は、832万円。「空気が読めない」といわれようが、「ひねりが足りない」とそしられようが、このクルマで撮影現場に乗り付けられるようなカメラマンに、ワタシ ハ ナリタイ。

<SPECIFICATIONS>
☆E220d ステーションワゴン アバンギャルド スポーツ(本革仕様)
ボディサイズ:L4960×W1850×H1465mm
車重:1890kg
駆動方式:FR
エンジン:1949cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:194馬力/3800回転
最大トルク:40.8kg-m/1600〜2800回転
価格:832万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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