【トヨタ スープラ詳報】ついに公開!開発責任者の言葉から見えた新“A90”型の新事実3

■新型スープラには豊田章男社長の思いが詰まっていた

新型スープラは、デトロイトモーターショーのプレスデー初日に行われた、トヨタ自動車のプレスカンファレンスでお披露目された。

カンファレンスはまず、トヨタ自動車・豊田章男社長のビデオメッセージからスタート。ビデオの冒頭で豊田社長は、自身の運転テクニックの師匠であり、かつてトヨタのマスタードライバー=エース・テストドライバーを務めていた故・成瀬弘氏が、スポーツカー開発の聖地・ニュルブルクリンクで語った「ドイツメーカーを見てみろ。どこも開発中の新型車でニュルを走っている。それに比べ、トヨタがここで勝負できるクルマは、中古のスープラしかない」と語っていた言葉がとても鮮烈に記憶に残っていて、「いつの日か必ず、スープラを復活させたいと考えていた」と振り返った。

そしてステージに、赤いスープラが登場。運転していたのは、なんと豊田社長本人だった。スープラから降りた豊田社長は、「このクルマはいいね。ずっと乗っていたかったよ…」と、自らにいい聞かせるように語りながら、プレゼンテーションをスタートさせた。

プレゼンテーションでは、最後の先代スープラが工場をラインオフし、映画『ワイルドスピード』でフェラーリを破ってから17年もの歳月が流れたものの、スープラは当時と変わらずファンに愛され続けていること。豊田社長自身がマスタードライバーになるための運転訓練で、中古のスープラと長い時間をともに過ごしたこと。しかし、中古のスープラでニュルを走っている時、他メーカーは開発中のスポーツカーで走っているのに対し、トヨタはそれが叶わず、悔しい気持ちを抱いていたこと…。豊田社長は、そうしたスープラへの熱い思いを余すところなく語った。その言葉の端々からは、豊田社長自らが、新型スープラの登場を誰よりも待ち望んでいたことが伝わってきた。

さて、今回初お披露目となった新型スープラの市販モデルは、先代のA80型と比べると、ずいぶん小さくなった印象を受ける。A80型は全長4520mm、全幅1810mm、ホイールベース2550mmだったが、A90型の全長は4380mm。同じくホイールベースは2470mmで、これはひと回り小さなトヨタのスポーツカー「86」と比べても、100mmも短い数値だ。対してA90型の全幅は1865mmで、短くてワイドなプロポーションであることがうかがえる。そして車内は、リアシートのない2シーターレイアウトとなっている。

A80型とはプロポーションが異なる一方、エクステリアデザインは、ヘッドライトや横長のテールランプを始めとする随所に、A80型へのリスペクトが感じられる。A90型のデザインに関し、開発責任者の多田氏は、「新型はとにかく小さくしたいと考えました。それと同時に、ひと目でスープラと分かるデザインにすることにも注力しました」と打ち明けてくれた。

■50:50の前後重量配分を実現するのは“4気筒モデル”

さてここからは、デトロイトモーターショーの会場で多田氏に聞いた新真実を交え、スープラのキャラクターを分析したい。

まず、市販モデルで最も驚かされたのは、4気筒モデルがラインナップされていたこと。そもそも、スープラのルーツは“「セリカ」の6気筒版”だったこともあり、まさかデビュー当初から、新型に4気筒エンジンが搭載されるとは思っていなかった。その歴史を見ても、市販されるスープラに4気筒エンジンが積まれるのは、A90型が初となる。

最高出力340馬力/最大トルク51.0kgf-mを発生する歴代最強の3リッター直列6気筒ターボエンジンに対し、2リッターの4気筒ターボエンジンは、チューニングの違いによりベーシック仕様(197馬力/32.6kgf-m)とハイスペック仕様(258馬力/40.8kgf-m)の2種類が用意される。グレード名は、6気筒エンジン搭載車が「RZ」、4気筒のベーシック仕様が「SZ」、4気筒のハイスペック仕様が「SZ-R」というように、A80型のそれを継承するものとなっている。この辺りからも、先代モデルへのリスペクトが感じられる。

この4気筒エンジンの特性について、多田氏はこう語る。「4気筒エンジンには、固有の魅力があります。それはなんといっても軽さですね。実は、前後重量配分で完全に50:50のバランスを実現しているのは、4気筒モデル。6気筒モデルはフロント側が少し重くなってしまいます。その分、4気筒モデルの方が動きは軽快で、峠道における下りなどでは、6気筒モデルよりも楽しく運転できます。A90型を育ててきた外国人のマスタードライバーも、『自分なら4発を買う!』といっているほどです」

完全なる50:50の前後重量配分を実現しているのは、実は市販スープラ史上初の4気筒モデルだった…これが、新型における新事実その1だ。

■デュアルクラッチ式でなくATを選んだ理由は“軽さ”

新型スープラに用意されるトランスミッションは、全グレードともZF社製の8速AT。スポーツカーファンの多くが望むMTは、少なくともデビュー時点では用意されない模様だ。

またA90型は、ATの中でも、ドライビングフィールに優れるといわれ、多くのスポーツカーが採用するDCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)ではなく、コンベンショナルなトルクコンバーター式ATを採用する。その理由について多田氏は、「当然、検討はしましたが、DCTには走行距離が伸びた際の劣化など、さまざまなデメリットがあります。また、最近は技術の進化により、ATもDCTに対してそん色ないフィーリングを得られるようになっていますし、そして何より、ATはDCTよりも重量が軽いんです。コレがAT採用の決定打になりました。やはり軽さは、スポーツカーにとって大事な要素ですからね」と語る。

そして気になるMTの存在だが、多田氏は「多くのファンの方が待ち望んでいらっしゃるのは知っていますし、先日はテストも行いました」と語る。だが、否定こそしないものの「追加する」とは明言しない。「まずはATに乗ってみてください」というだけだ。

DCTではなくATを選んだ最大の理由は、軽さだった。そして、MTは今後の展開に期待…。これがふたつめのスープラ新事実である。

■こだわりがBMW「Z4」の“パッケージングさえも変えた”

新型スープラは、トヨタとBMWとのコラボレーションによって誕生したことは周知の事実だ。走りの味つけなどはトヨタが行い、多田氏によると「制御系の決定権はトヨタ側にあります」というが、基本的な開発の多くはBMWが担っている。

そのBMWは、2シーターオープンカーであるZ4の新型を、A90型と多くのメカニズムを共用化することで作り上げた。ただし、「2台の開発チームはそれぞれ全く別の部隊」(多田氏)で、ホイールベースやトレッドなど、基本的なスペックを決めた後は、両社が独自に開発を進めたという。

ところで新型Z4は、先代からプロポーションが大きく変化しているのをご存じだろうか? 実は全幅が75mmも広がっているのである。冒頭で紹介したように、新型スープラはコーナリング性能を高めるべく、全長を短くし、トレッド(と、それに伴い全幅)を広げている。この部分は、トヨタの開発チームが徹底的にこだわった部分だ。

そんなトヨタのこだわりを重視すると、当然、基本設計が共通のZ4も、開発・設計の段階で、各種スペックを新型スープラのそれにそろえなければいけなくなる。そこで両社のすり合わせが必要となったが、Z4の開発チームは、スープラ開発チームの「理想のスポーツカーを作りたい!」という真摯な姿勢に心を打たれ、新型スープラのサイズに合わせ、大幅なワイドトレッド化(=全幅拡大)を決断したという。

新しいZ4は、走行性能が大幅に引き上げられたと高く評価されているが、その背景には、新型スープラの開発チームによる、走りへの飽くなきこだわりがあったというわけだ…これが、新型スープラに関する3つめの新事実である。

さて、A90型がお披露目されたといっても、現時点では、市販モデルの内外装デザインと、一部のスペックが公開されたのみ。気になる日本仕様の正式発表は、夏の手前頃になりようだ。

そして気になる価格について、多田氏は、「よく『新型は高くなるんでしょ?』といわれます(苦笑)。でも、多くの皆さんに乗っていただきたいので、86からステップアップしたいと考える方が、なんとか手の届く範囲の価格帯にしたいと思っています」と語る。発表された北米仕様(6気筒モデル)の価格は、約530万円。日本仕様の価格は、北米仕様のそれより高めになるのが通例だが、果たして4気筒モデルは、400万円台の価格を実現できるだろうか? 個人的には、将来的なMT車の追加とともに、期待したいところだ。

<SPECIFICATION>
☆RZ(市販予定車/日本仕様)
ボディサイズ:L4380×W1865×H1290mm
車重:----kg
駆動方式:FR
エンジン:2998cc 直列6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:340馬力/5000〜6500回転
最大トルク:51.0kgf-m/1600〜4500回転

(文/工藤貴宏 写真/工藤貴宏、&GP編集部、トヨタ自動車)


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