ひと目ぼれ間違いなし!新型「レンジローバー イヴォーク」もデザインが買いのクルマです

■日本でも1万台以上が売れた初代イヴォーク

人々はどんなクルマに心惹かれるのか? 2012年頃に盛り上がった初代レンジローバー「イヴォーク」の人気を目の当たりにした時、その答えのひとつが見えた気がした。

2011年のデビュー直後から、あっという間に世界の注目を集めた初代イヴォーク。ここ日本でも瞬く間に人気モデルとなり、あっという間に納車まで1年以上かかるヒット商品となった。その後、約7年間にわたって販売された初代は、モデルライフ終盤に差し掛かっても人気が衰えず、累計1万台以上のイヴォークが日本のユーザーの手に渡ったという。

日本車の人気が根強く、輸入車比率の低い日本市場において、フォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」といった定番モデルではないイヴォークが、ここ日本で1万台以上のセールスを記録したことに、驚かずにはいられない。

では、イヴォークがこれほどの人気を獲得した理由は何か? 確かに初代は、エントリー価格が500万円を切るなど、「あのレンジローバーが手の届きやすいプライスで!」という驚きのあるクルマだったが、やはり最大の理由は、そのスタイルに尽きるだろう。

2012年頃といえば、ちょうどヨーロッパでSUVブームが盛り上がり始めた頃であり、スポーティなルックスを組み合わせた“クーペ風SUV”というトレンドは、まだ生まれていなかった。すでにクーペ風SUVのBMW「X6」はデビューしていたものの、大きすぎる車体は万人向けとはいえず、特別なクルマという印象が強かったのだ。

そんなマーケットに突如として現れたイヴォークに、人々は心を奪われた。そして、「まるでコンセプトカーのようだ」、「低く構えたスタイルがカッコいい」、「SUVなのにドロっぽさが全くない」…といった称賛の声も、多数寄せられた。

それまでSUVといえば、「背を高く見せる」というデザイン手法が常識だった。しかし、常識に反し、「背を低く見せる」ことにこだわったイヴォークのスタイルは、とても斬新だった。天地の短いサイドウインドウは、キャビンを薄く見せ、ルーフの低さを強調するために生まれたデザイン。しかも、「クーペ」と呼ばれる3ドア仕様は、5ドアよりルーフ全体が3cmずつ低く、イヴォークの世界観をより強調したものとなっていた。

そんな初代イヴォークは、世界累計80万代以上をセールスする大ヒットモデルとなり、日本人の多くもまた、そのスタイルに魅せられ、虜となった。デビューから年月を経た今でも、初代は古さを感じさせないが、それは、このクルマのデザインが、いかにアヴァンギャルドで完成されたものであったかを雄弁に物語っている。

■初代から継承されたデザインと一新された車体

そんなイヴォークがフルモデルチェンジを果たし、2代目へと進化。先頃、日本にも上陸した。2代目の開発に際し、ランドローバー社が選んだテーマは、初代の正常進化。低さを強調したルーフを始め、基本的なプロポーションは先代のそれを受け継いでいる。

しかし、実車を目の前にすれば、あくまで「プロポーションが初代に似ているだけ」だと分かる。新型の細部はよりモダンな意匠になっていて、ヘッドライトやテールランプなどは、先進性を強調したものに。レンジローバーのファミリーには、“世界一美しいSUV”と称される「レンジローバー ヴェラール」がラインナップされるが、新型イヴォークは、「ヴェラールをひと回りコンパクトにしたクルマ」といった印象だ。相変わらず、オフロードより都会の街並みが似合うのはいうまでもない。

一方のインテリアも、ヴェラール譲りのモダンでシンプルなデザインとなったが、ドアを開けて目に飛び込んでくるのは、初代イヴォークから不変の上質な空間。シート生地やダッシュボード表皮には上等な革やクロスがあしらわれていて、このクルマがレンジローバーファミリーの一員であることがうかがえる。

従来のイメージを上手に昇華させたエクステリアとインテリアに対し、ボディやプラットフォームは全面改良。車体の99%が新たに設計され、初代モデルから受け継いだパーツは、わずかにドアヒンジだけだという。

プラットフォームには、新設計の“PTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)”を導入。エンジンを横置きにレイアウトするFF乗用車系プラットフォームを採用するのは初代モデルと同様だが、PTAでは新たに、電動化に対応する設計を採り入れているのがポイントだ。

日本仕様に用意されるパワーユニットは4タイプ。すべて2リッターの4気筒ターボで、ディーゼルは「D180」のみ。ガソリンは「P200」、「P250」、そして「P300 MHEV」の3タイプから選択できる(それぞれの数字は最高出力を表している)。

このうち注目は、ジャガー・ランドローバーとして初となる、MHEV(マイルドハイブリッド)を組み合わせたP300 MHEV。エンジン本来に48Vのバッテリー、コンバーター、そして、“BISG(ベルト・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)”と呼ばれる、スターターモーター&補助動力と発電機とを一体化したユニットを組み合わせていて、シリーズで最もハイパワー、かつ省燃費にも注力したユニットとなっている。

212mmの最低地上高や22.2度のアプローチアングル、そして、30.6度のデパーチャーアングルに、初代より100mm増しの600mmという渡河能力など、新型イヴォークは都会派SUVを気取りつつ、悪路走破力も抜群。この辺りは、さすがランドローバーといったところだ。

また、先述したP300 MHEVモデルには、ひと際凝った4WDシステムを採用。通常、前後の駆動力配分は50:50だが、状況次第で前輪のみ、もしくは、トルクベクタリングを介して後輪の左右どちらかに100%の駆動力を伝えるという高度なユニットで、さらに悪路走破力を高めている。

■クリアサイトグランドビューで悪路走行がよりイージーに

今回は、P300 MHEVとP250のパワーユニットを搭載する新型イヴォークに試乗することができた。

P300 MHEVの最大の魅力は、そのハイパワー…ではなく、滑らかな加速フィールだった。ガソリンエンジンが苦手とする発進領域から、そのままエンジン回転が1500回転を超える辺りまで、モーターのアシストによってスムーズに加速。しかも、そこから上の領域ではターボチャージャーによる過給が効いてくるため、スムーズかつパワフルにスピードが乗っていく。

それに比べると、P250はベーシックな印象。エンジンの回転フィールは軽快であるものの、滑らかさという点においてはP300 MHEVに分がある。

また新型イヴォークは、フットワークの身軽さも印象的。P300 MHEV、P250ともに、右へ左へとコーナーが続く峠道を軽快にクリアしていく。抜群のオフロード性能を備えたSUVでありながら、ハンドル操作に対して反応の遅れなく曲がっていき、路面に吸い付くような安定感があるから、安心してドライブできる。積極的に曲がることを楽しめるハンドリングの持ち主といえるだろう。

一方、新型イヴォークには、悪路走行時に役立つ“クリアサイトグランドビュー”と呼ばれる機能が世界で初めて採用されている。コレは、車両の周囲を映し出すカメラシステムの発展形で、前方の下方向180度の視界を、ボンネットが透けているかのようなグラフィックでコックピットにあるモニターへと映し出す仕組み。

実際、この機能をチェックしながら仮設のオフロードコースを走ったが、便利さは想像以上。前輪の回りの状況が手に取るように分かるため、刻々と変わる路面状況をしっかり確認しながら前へと進める上に、轍(わだち)ほどの幅しかない橋でも確実に渡ることもできる。

日常シーンにおいても、例えば、駐車枠の中に駐める際などに自車位置を把握しやすいなど、役立つシーンが多い。その便利さは、一度使うと手放せなくなるほどで、今後、急速に普及しそうなデバイスといえる。

よく「人気車種のフルモデルチェンジは難しい」といわれる。しかしイヴォークは、その課題を克服してみせた。新型になっても、イヴォークはやはりイヴォークであり、スタイリングの美しさは、他のモデルには代えがたいものがある。進化したメカニズムや、リアシート足下スペースの拡大を始めとする居住性のアップなども新型の魅力ではあるが、やはりイヴォークは、デザインで買いたくなるクルマである。もし、ひと目ぼれして買ってしまったとしても、決して後悔することはないだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆Rダイナミック HSE P300 MHEV
ボディサイズ:L4380×W1905×H1650mm
車両重量:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:300馬力/5500〜6000回転
最大トルク:40.8kgf-m/2000〜4500回転
価格:801万円

<SPECIFICATIONS>
☆SE P250
ボディサイズ:L4380×W1905×H1650mm
車両重量:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:249馬力/5500回転
最大トルク:37.2kgf-m/1500〜4500回転
価格:646万円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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