傑作がついに復活!スズキの新生「KATANA」は見ても乗っても質感が高い

■見る角度で表情が変わるKATANAの不思議なデザイン

2017年のEICMAこと、ミラノモーターサイクルショーで展示されたショーモデル「KATANA3.0」を見て、「ビビビと来た」(死語)スズキの人たちが、なんと、1年という短期間で商品化させた新型KATANA。その誕生ストーリーはもちろんのこと、翌年にオリジナルのイメージを壊すことなく世に送り出した手腕も、スゴイですね!

当初、モノショックのリアサスペンションこそ議論の的にはなったものの、新旧バイク好きからおおむね好意的に迎えられたZ900RSとは対照的に、新生KATANAの場合、ユーザーの好き嫌いがハッキリ分かれたところも、むしろ個性派で鳴らすスズキの話題作らしいですね。

個人的には、それまでのバイクデザインと隔絶したかのような斬新さがショックだった1980年代のオリジナル・カタナと比較して、新型は先鋭化させたカッティング・エッヂのような良さこそあります。

けれど、あくまで現在のデザイントレンドの延長線上にあるのが「なんだか惜しい…」なんて、つい分かったようなことをいいたくなるのが、KATANAというバイクの魅力でもあるのでしょう。見る角度によって、まるで違った表情を見せる不思議なデザインであります。

■最新版らしくスズキならではの親切装備が充実

初代カタナに敬意を表してか、2018年のインターモト(ケルンショー)で市販版が発表され、翌19年に日本国内で発売された新世代のKATANA。同社のスポーツバイク「GSX-S1000 ABS」のコンポーネンツを活用して開発されたため、動力系は998ccのマルチ(直列4気筒エンジン)と6速MTの組み合わせ。価格は154万円。ボディカラーは、ミスティックシルバーメタリックとグラススパークルブラックから選べます。

シート高は825mm。身長165cmの“昭和体型”(←ワタシのことです)がまたがると、両足がつま先立ちになってしまうのが、ちょっと厳しい。数字以上にキツく感じるのは、硬めながら低反発で座り心地のいいクッションが、だがしかし、意外と幅があるからです。あまり厚みがないので難しいかもしれませんが、“ローダウンシート”をオプション設定してくれるとうれしいのですが…。

さて、スズキならではの親切装備は、新生KATANAにも採用されます。例えば、ワンプッシュでエンジンをしっかり始動させられる“スズキイージースタートシステム”、微速時にエンジン回転数を落としすぎないでエンストしにくくする“ローRPMアシスト機能”、先進モデルらしく、オフにもできる3段階の“トラクションコントロールシステム”などを備えます。

アップタイプのバーハンドルは、左右グリップの位置が広め。ライダーは、ヒジを開き気味にして上体を前傾させる、ファイティングポーズを取ることになります。いわゆる、ストリートファイターのそれ、でしょうか。

■大柄ボディを忘れさせるシャープなハンドリング

いざ走り始めると、スポーティに締まった足回りと、路面からの入力を跳ね返すしっかりしたボディが印象的な新型KATANA。それは、スーパーバイク系の屈強な“アルミツインスパーフレーム”に起因しています。

ライドフィールの第一印象はハードですが、一方で、スズキのトップ・オブ・スポーツバイク「GSX-R1000」由来のツインカム4バルブは、それこそクランクのひと回り目から豊かなトルクを提供してくれる“よく練れた”エンジンです。いい意味で“リッター”を感じさせない穏やかなマルチシリンダーで、街中でも使いやすい。

とはいえ、そこは現行モデルのGSX-S1000 ABSと同じ、最高出力148馬力/1万回転、最大トルク10.9kgf-mを発生するパワーユニットです。スロットルを大きく開けると、迫力あるサウンドとともに、新型KATANAを一気に加速させます。

ローギヤだけであっさりと100km/hに達する動力系なので、山道・峠道では、セカンド、サードギヤで5000回転まで引っ張れれば御の字。というか、ライダーの気持ち的に限界に達します。新型KATANA、速すぎる。この手のバイクの常套句ですが、ピークパワーを得る1万回転オーバーの世界を楽しむには、それこそサーキットに持ち込むしかありません。

では退屈なのかというと、もちろんそんなことはなく、硬質なフィールとともに、いいペースで狙ったラインをキレイに切り取る楽しみがあります。大柄なボディを忘れさせるシャープなハンドリング! スポーツバイクに乗る醍醐味ですね。新型KATANAは、見ても乗っても質感が高い!!

リッターエンジン搭載ですから、高速道路も全く余裕。ただ、ネイキッドタイプゆえ前方からの風は厳しい。それと、着座位置が前寄りになることもあって、路面が思いのほか迫って見える。気の小さいライダーはビビりがち。ここは、ぜひともオリジナル・カタナに準じた“スクリーン(メーターバイザー)”を付けたいところです。スズキ純正品のほか、各社からさまざまなバリエーションが販売されているので、好みのスタイルを選べるはずです。

あえて新型KATANAにケチを付けるとすると、デザインコンシャスを徹底したためか、小物入れはおろか、ETC車載器の置き場にも困るほどスペースがないことと、ふたり乗りが実質的にムリ…とはいい過ぎとしても、非常に難しくなったことでしょうか。

無造作に荷物を積むこともできないので、ワンデイトリップでは、“伊達のやせ我慢”がどこまで通用するかが試され、ロングツーリングでは、いかにスタイルを壊さずバッグを搭載するかに、オーナーのセンスと美意識が問われそう。カッコいいバイクって、罪ですね!?

<SPECIFICATIONS>
☆KATANA
ボディサイズ:L2130×W835×H1110mm
車両重量:215kg
エンジン: 998cc 水冷直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:148馬力/1万回転
最大トルク:10.9kgf-m/9500回転
価格:154万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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