【ジャガー XF試乗】新ディーゼルの軽快さに驚愕!:岡崎五朗の眼

XFのライバルは、メルセデス・ベンツ「Eクラス」、BMW「5シリーズ」、アウディ「A6」、レクサス「GS」などだが、“美しさ”においては、XFの右に出るクルマはないと断言する。

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ジャガーのデザイン部門を統括するとともに、自動車デザイン界のスターとしても知られるイアン・カラムをして「無駄なラインは1本もない」といわしめたように、XFのデザインはきわめてシンプルだ。しかし、そのシンプルさの中には、スポーティ、エレガンス、セクシー、ラグジュアリーといった、さまざまなニュアンスが表現されている。

あえて“ニュアンス”という表現を使ったのには理由がある。XFのデザインは、見た瞬間から雄弁に語りかけてくるようなタイプではないからだ。むしろ、ファーストインプレッションでは物足りなさすら感じさせる。

最初に海外のモーターショーで見た時などは「やっちゃったな」とすら感じたほど。並み居る強豪を相手に、ジャガーが自信を持ってリリースしたプレミアムカーとしては、あまりに大人しすぎると感じたのだ。

しかし、英国車、とりわけジャガーの場合、デザインの判断を急ぐと間違ってしまうことが多い。例えば、先代のXFも、デビュー当初は没個性のルックスに見えたが、年を経るごとに印象が変わり、モデル末期にさしかかる頃には、とても魅力的なサルーンになった。

途中で実施されたフェイスリフトの効果もあっただろうが、それ以上に“噛めば噛むほど味が出る”オリジナルデザインが、そう感じさせた最大の理由だろう。

新型XFがモデル末期になった時、どんな評価を得ているかは神のみぞ知る、だが、少なくとも僕は、見るたびに好きになっている。

今回の試乗ルートは、名古屋←→三重・志摩市を往復するコース。撮影をしながら2日間に渡ってXFと過ごしたのだが、見れば見るほど、パッと見では気づなかった魅力が徐々に伝わってきて、どんどん惹かれていった。

まず、プロポーションが抜群に美しい。長いノーズと短いフロントオーバーハングの組み合わせが表現しているのは、運動神経の良さだ。実際、前後の重量配分は、理想的とされる50:50。それでいて、全体をウエッジシェイプではなく水平基調とすることで、このクラスのサルーンに求められるフォーマル感やエレガンスも手に入れた。

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ショルダーラインなどは水平どころか弓なりであり、やや後ろ下がりに見えるほど。このあたりは「マーク2」や「XJ」といった過去の名車へのオマージュだろう。

そんなクラシカルなスパイスを効かせながらも、リアエンドをわずかにつまみ上げることで、空力性能の高さ、スピード感、モダンさをアピールしているあたりは、本当に上手い。Cピラー、リアクォーターパネル、トランクリッドを調和を乱さないよう合流させ、リアエンドに向けてひとつにまとめあげていく造形に至っては、もう魔術的といってもいいほどだ。

ほかにも、サイドのキャラクターラインをリアに向けて徐々に浅くしていくことで“コクとキレ”を両立するなど、デザイナーのこだわりが随所に見られる。派手なグリルやメッキの面積、ガンダムチックなパキパキした造形といった、分かりやすさはないが、シンプルさの中にしっかりしたダシと効果的な隠し味が入っているから、飽きにくく、見れば見るほど惹かれていくのだろう。

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 ■ガソリン車と勘違いするほど静かなディーゼル

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