【オトナの社会科見学】開発陣の理想をカタチに!マツダ ロードスター“工房”探訪

<製造現場の秘密3>
ロードスターの艶やかでなめらかな塗装の裏に匠のワザあり

そして、塗装ブースへ。

塗装工程は小さなホコリを嫌うので、専用のウエア、シューズに着替え、帽子を被って見学します。エアジェットのシャワーを浴びて服に付いているホコリを吹き飛ばした後、塗装のクリーンブースに入りました。

ガラス張りのトンネル内を、塗装前のボディがコンベアで流れています。初めに、ボンネットの裏側やフューエルリッドの内側など、細部に塗料を吹くのは、職人さんのお仕事。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

その先には、塗料のボトルを装填したスプレーガンを持つ、ロボットのアームが待ち構えていて「ブシャー、ブシャー」と手際よく塗装が進みます。実はこの工程において、ロボットは塗装の平滑と光沢を両立しているのだとか。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

なめらかなのに光沢がある塗装。当たり前のようですが、これが案外、難しいテーマなのだとか。それを実現するために導入したのが“匠塗り”という技術。つまり、塗装の達人の塗り方をロボットに置き換えたわけです。

ロボットなら、動作の狂いもなく反復してくれるでしょうから余裕…と思っていたら、実は違いました。塗装の達人は、毎回微妙に調整しながら塗っているので、同じ動きを繰り返しているわけではないのだとか! 達人が何を感じて、何を調整しているのかを分析し、その調整をも再現したロボットが塗っているというわけなのです。なるほど。

しかも、ロードスターのイメージカラー=いまやマツダブランドを象徴するソウルレッドです。これは、3層に分けて塗装するカラーで、最初に塗る層に微細なアルミの板を混ぜているのですが、なんと、このアルミの板の向きをそろえることで、独特の鮮やかさと深みを出しているのだとか。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

塗り終わると、今度は乾燥炉で焼き固めます。こうして、あのソウルレッドの光沢となめらかさが表現されているのですね。


<製造現場の秘密4>
ロードスターの組み立てプロセスに独自のアイデアを投入

そして最後に通されたのが、組み立てプロセス。ここでは、徐々に組み上がっていくロードスターの姿を見られるとあって、気分が上がります。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

マツダの組み立てラインは、いくつかの車種を同時に流し、組み立てられるという柔軟性がウリ。それもあって、組み立てラインにはロボットよりも、人の姿が思っていた以上に見られます。実のところ、生産ラインの自動化を何がなんでも追求するのではなく、適宜、人の手に委ねるというのが昨今のトレンドです。

だからこそ、組み付ける人の負担をいかに取り除くか? これが大きなテーマなのですが、ロードスターの場合、生産現場から生まれてきたアイデアを投入することで、より快適に、より正確に、より無駄なく組み付けられるようにしています。そんなアイデアを具現したのが、下の写真の右側に見える“台車”です。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

ラインを流れてくるボディに淀みなくパーツを組み付けるには、組み付けるパーツそのものを「いつ」「どのようなタイミング」で受け渡せるかがカギになります。

この台車には、1台のロードスターに組み付けられる分のパーツがところ狭しと載せられています。一見、無造作に並んでいるようですが、実は高さ、方向など、手を伸ばしてパーツをつかんだら、スムーズに組み付ける場所へ持っていけるよう熟考されています。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

で、どんどん組み付けていくと、ついに台車の反対側にあるパーツを取らなければならなくなります。かといって、ラインから離れ、わざわざ台車の反対側に回っていたら、無駄な時間と労力が生まれてしまいます。

どうするのか?

固唾を飲んで凝視していると、『機動戦士ガンダム』のガンタンクの上半身だけが180度旋回したような格好で、台車のベースから上だけが回転し、反対側にあったパーツ群がライン側へ向いたのです(下の写真は、台車の上半身が回転している最中の画)。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

ほほう。電動モーターを組み込んで回してるのか、ナイスアイデア! アタマいい!!

実は、違います。

たくさんある台車にモーターを組み込み、それを制御する装置を用意したのでは、莫大なコストアップになってしまいます。実はこの台車の台座から上はフリーで回転するようになっていて、さらに、アームが取り付けられています。旋回させたい場所にはフックが設置されていて、このフックにアームが引っかかり、自然に台座の上部が回転するようになっていたのです。

これ、すべて現場から出てきたアイデアなのだとか。お金をかけず、効率の良いプロセスを完成させているというわけです。アルミボディという高価な仕様のロードスターがアフォーダブルな価格で提供されるのは、こういった工夫の集大成なのかもしれません。

そういうこともあり、ロードスターを作っている工場(前述した山本さんは工場といわずに“工房”という)で働く皆さんは、どこか誇らしげ。そりゃそうですよね。街中でロードスター見かけたら、「あれ、オレが作ってるんだぜっ!」って、家族や友人に自慢できますもの。

ロードスターはクルマだけでなく、作っている現場もアッパレなのでした。

マツダ ロードスター 工房 宇品第1工場

(文/ブンタ、写真/江藤義典)

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