昭和のアナログレコード最盛期に、大ヒットした日本コロムビアによるポータブル・レコード・プレイヤー「GP-3」(フリースタイルとも)。1980年の発売以来、20年以上の販売を継続したロングセラーモデルでした。
90年代以降は、数多くの音楽アーティストのコラボモデルも登場し、「オシャレでかわいいレコードプレイヤー」として再評価されたこともありましたが、音楽を聴くメディア自体がレコードからCDへ、CDから配信へと移り変わる中、GP-3は人知れず姿を消しました。
しかし、GP-3のコアな人気は根強く、かつての個体のうち程度の良いものは、現役自体の定価の倍以上のプレミアム価格で取り引きされることも珍しくありませんでした。
そんな中、2019年に突如登場したのが、GP-3を見事再現したANABASのGP-N3Rというプレイヤーでした。
▲2019年に突如登場したANABASのGP-N3R。かつてのGP-3そのまんまのポータブル・レコード・プレイヤーです(画像:ANABAS)
見た目も細部もそのまんま。オリジナルの日本コロムビア製であれば「復刻」と言って良いほどの仕上がりですが、どうしてここまで忠実に再現することができたのでしょうか。この謎を紐解くため、製造販売元のANABASを訪ね、開発の指揮をとった商品企画部の池田壽一さんに聞きました。
▲ANABAS・商品企画部の池田壽一さん
■昭和の時代に大流行したポータブル・レコード・プレイヤー
▲持ち運びができるポータブル・レコード・プレイヤーがかつて流行った理由とは?(画像:ANABAS)
若い人にとっては馴染みが浅いかもしれませんが、かつて、ポータブル・レコード・プレイヤーは家電メーカー各社から無数に販売されているものでした。
気軽に持ち運びができるオモチャのようなチープ感がかわいらしく、今も熱狂的なコレクターが存在しますが、どうしてポータブル・レコード・プレイヤーが一時無数に存在したのかを、まず池田さんに聞きました。
「70年代から80年代にかけて松下さん、ビクター、日本コロムビアほか、本当にいろんなメーカーからポータブル・レコード・プレイヤーが出ていましたよね。てんとう虫とかパンダの形をしたモデルもありましたよね。
それまでのレコードプレイヤーって、『3点セパレートセット』と言って、かなり立派なステレオしかなかったんですが、70年代後半になると、シングルレコードのヒット曲がたくさん出たり、あと雑誌の付録にソノシートと言うペラペラのレコードが付くようになります。こういったレコードを、子どもにとって巨大な『3点セパレートセット』で聴くのはちょっと合わないんで、そこでポータブル・レコード・プレイヤーが流行ったんです。
家電業界ではこういったプレイヤーが『小型電蓄』と呼ばれ、秋葉原の電器屋さんに行けば、レコード売り場と一緒によく売られていたものです」(池田さん)
■GP-3は池田さんの日本コロムビア入社と同年の製品だった
その「小型電蓄」ことポータブル・レコード・プレイヤーの無数の製品のうち、特にロングセラーとなったのが日本コロムビアのGP-3でした。このGP-3を忠実に再現し、2019年に発売したのがANABASのGP-N3Rというモデルでした。そのクオリティの高さに驚くばかりですが、ANABASではまず、どうしてこのGP-3を再現しようと企画したのでしょうか。
▲2019年、ANABASより突如発売となったGP-3の再現モデル、GP-N3R。その実現には池田さんだけの物語がありました(画像:ANABAS)
「実は、私の前職が日本コロムビアだったんですよ。ちょうど、私が入社した年にGP-3が発売され、ペーペーの新入社員だった私は、秋葉原のお取り引き先に出向いて商談し、お店にGP-3を飾ってもらったりした経験があったんです。
ただ、発売当初のGP-3はそんなには売れなくて、その後に様々な要素が加わって、爆発的に売れていったんです。
やがてアナログレコードで音楽を聴く時代が終わって、CDにとって変わっても日本コロムビアはこのGP-3を生産し続けていたのですが、特に90年代に入ってからは複数の音楽アーティストがGP-3のコラボモデルを出したことなどもあり、いつからかファッション的なアイテムとしても人気を博すようになったんです」(池田さん)
GP-3モデルを発売したアーティストはdj honda、コーネリアス、ピチカート・ファイヴ、ボニー・ピンク、ミッシェル・ガン・エレファントなど。
また、音楽レーベルでは高木完・藤原ヒロシが設立したMAJOR FORCE、ジャパニーズ・ヒップホップやレゲエ作品を多くリリースしたFILE RECORDS、はたまた大手CD・レコード店のタワーレコードなど。音楽的な感性が特に高い人たちにおおいに受けたモデル、それがGP-3でした。
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