Uボートを翻弄する“吠える大西洋”をスタイロフォームで製作【達人のプラモ術<Uボート>】

■嵐の大西洋をスタイロフォームで再現!

今回は嵐の海の中のUボートをジオラマで再現します。海面ベースは、スタイロフォーム(本来は断熱素材だが、ジオラマでも使用する密度の高い発砲素材。ホームセンター等で販売している)を船体が収まるようにカット。そこに切り出したスタイロフォームを貼り付け、うねり波を作っていきます。

▲船体が細く排水量が少ないUボートは、大西洋の荒れた海での作戦はかなり厳しかった。荒天時には大波に翻弄されながらの見張りも命懸けだし、何日も続く嵐では時に45度以上も傾く船内で乗組員が疲弊してしまうため潜航して嵐を避けることもあった

▲荒波の中、大波に翻弄され、傾き艦首が持ち上がった状態のUボートをイメージして製作した荒れた海のベース

前回でも書いたが、舵とスクリューは水面下で見えなくなるので取り付けていない

海面の再現はアクリル絵の具の下地剤「モデリングペースト」を使用します。ジオラマ製作では良く使われるテクスチャーで、粘度の高いペーストで、薄く延ばす、また盛り上げることもでき、乾燥後に削るなどの加工も可能な素材です。これをスタイロフォームで製作したベースに塗布(ケーキにクリームを盛り付けていく感じw)していきます。

まずは船体を取り付けていない状態で海面を再現します。この際に筆で波の方向やうねりを意識しながらモデリングペーストの表面に凹凸を付けていくのがポイントです。モデリングペーストの乾燥には最低でも24時間必要となります。

▲モデリングペーストをスタイロフォームの表面に塗る

▲というよりも盛りつけていく

▲盛り上げたモデリングペーストに筆で波の凹凸を描いていく

▲油彩用の、毛先の腰が強い筆を使うと良い

▲ベースの下塗りに使用したターナー製「U-35アクリリックスモデリングペースト」。水溶性のペーストで粘度が高く、乾燥後は肉ヤセしにくく切削や研磨が可能な下地素材。ライトモデリングペーストは1/2の軽さで仕上げられる。「モデリングペースト」(500ml:1650円)、「ライトモデリングペースト」(500ml:1650円)

さてさて、モデリングペーストを盛り付けただけですが、ただのスチロールの塊が、波が荒れ狂う海に見えてくるから不思議なもんです。

ここに船体をはめ込んだ後、ヘビージェルメディウム(粘度が高く、モデリングペーストよりもさらに盛り上げるといった立体的な表現に適した樹脂メディウム。乾燥すると透明感と光沢感が増すので今回のような海の再現に適している)を使い、船体とベースの隙間を埋めて、さらに船体に降りかかる瀑布のような水を盛りつけていきます。ヘビージェルメディウムも乾燥に24時間以上おきます。

▲ジェルメディウムは粘度が高いので、筆に水を含ませながら作業を進める

▲船体と海面ベースの隙間をヘビージェルメディウムで埋めつつ、喫水線部分の艦舷に波のうねりを描いていく

▲船体に降りかかる大波、Uボートの船体を翻弄するうねりをヘビージェルメディウムで再現

▲まだ塗装していないが、チャンと嵐の海に見えるようになってきた

▲今回使用したのはターナーから発売されている「U-35ヘビージェルメディウム」(500ml:1650円)。水溶性のジェルメディウムで、粘度が高くエッジが立てるなど立体的な表現ができる。乾燥すると透明感と光沢感が増す(イメージ的には木工用ボンド)

仕上がった状態は、いやいや見事に海です、ちゃんと荒れた大西洋になりました、というわけで今回はここまで。次回は製作した海面を塗装することで、よりリアルな仕上げを目指します。お楽しみに!

 

■一度は行ってみたい!ドイツ・キールのUボート博物館

完全な状態で保存されたUボートがドイツのキールに博物館として現存、一般に公開されています。博物館とは言うもののキール郊外のラボーという海外線にドーンと置かれており、艦内の見学ができるようになっているそう。この艦はU-955として実戦に参加したタイプⅦC41で、1945年に英国に降伏後、ノルウェー海軍が使用していたものです。退役後に1965年に1ドイツマルク(!)という価格で西ドイツへ売却され、1971年10月にラーボエ海軍記念館(Laboe Naval Memorial)で博物館船となったそうです。

いやぁ現存するタイプⅦC型Uボート、潜水艦好きとしては、ぜひ見に行きたいです!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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