【レクサス LS試乗】Fスポーツの走りはGTカー級!ただ高級車としては課題も:岡崎五朗の眼

■旗艦モデルLSが示したレクサスの新たな方向性

まずは、そのたたずまいからして、5世代目のLSは大きく変化した。ひと言でいえば“エモーショナル”なクルマになったのだ。

国内では、トヨタ「セルシオ」を名乗った初代から3世代目、そして、レクサスブランドとなった先代の4世代目まで、LSは一貫してフォーマルな高級セダンというキャラクターを守り続けてきた。

しかし、今回のモデルチェンジでは、そこからオーナードライバー向けのクルマへと、LSは大きく舵を切ったのだ。クーペのごとく車高の低い、躍動感あふれるデザインを採用しただけでなく、走りにおいてもスポーティさを前面に押し出すなど、明らかな方向転換を図っている。

その要因は、いわゆる“セダン需要の衰退”だ。実際、従来のLSでは、ユーザーの平均年齢が上がっており、新たに若い層の顧客を迎え入れる必要があった。そこで新型は、クーペのような美しさや、スポーティな走りといった要素を採り入れる手に打って出た。

エクステリアは、ライバルであるメルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」、アウディ「A8」と比べても、ダントツにアグレッシブだと思う。そして、そのたたずまいからは「思い切ったことをやらなければ」というレクサス経営陣と開発陣の気概も伝わってくる。

ドイツのプレミアムブランド御三家はというと、各々、年間180万台を超える生産台数を誇る。一方、トヨタのプレミアムブランドを標榜するレクサスは、単体で見るとその規模は決して大きくない。そこで「既存のユーザーに嫌われたら…」という、しがらみを断ち切り、新しいLSは大いなるチャレンジに出たわけだ。

ここ数年、レクサスの経営陣と開発陣は、「レクサスとはどんなクルマなのか?」という自問自答を繰り返してきた。そして彼らの中で「レクサスは単にトヨタ車の上位モデルではないはずだ」、「トヨタとレクサスが目指す方向は同じではいけないはずだ」といった意識が強く芽生え始めていることは、僕も肌で感じていた。

LSに先駆け、同じプラットフォームを採用するスポーティな2ドアクーペ「LC」がデビューしているが、実はこれは、LSのデビューに向けた布石でもあった。すなわち「レクサスはエモーショナルを重視するブランドである」ということのアピールだ。これまでのトヨタといえば、壊れないとかリーズナブルといった印象が強く、レクサスが母体と全く異なるブランドとして独立するためには、トヨタとの明確な差別化が必要だったのだ。

では、LSは実際に運転してみるとどうなのか? その前に、LSのラインナップについて簡単に説明しておこう。

パワーユニットは大きく分けてふたつで、3.5リッターの自然吸気エンジン+モーターのハイブリッドモデルと、3.5リッターツインターボを用意。駆動方式は、それぞれにFR(後輪駆動)と4WDが設定される。各仕様で細かいグレード分けがなされるが、高級サルーンとしての位置づけを明確にした標準系モデルのほかに、スポーティな味つけの「Fスポーツ」も用意されている。

今回、最初にステアリングを握ったのは、ハイブリッドのFスポーツ(4WD)。この仕様は、掲げられた製品コンセプトのとおり、しっかりとしたドライバーズカーに仕上がっていた。先代モデルまでの静かでソフトというイメージから一変。さながらGTカーのように、しっかり、かつフラットな乗り味で、ワインディングロードでも走りを存分に楽しめるほど。大柄な高級車なのに、これほど思いどおりに操れる、スポーティに走れる、というのは、新鮮な感覚だった。

そして新型LSは、パワートレーンや仕様の違いにより、キャラクターが明確に異なるのも特徴だ。

個人的にお勧めなのはやはりFスポーツで、特に新設計の3.5リッターターボエンジンを積むモデルは、回転フィールが軽快で切れ味がよく、スポーティに仕立てられている。中でもFRモデルは、4WS(4輪操舵)や“可変スタビライザー”のサポートもあり、ワインディングロードを速いペースで飛ばしても、しっかりと地に足が着いた走りを披露する。

一方、4WD仕様は、4WSなどを備えたFR仕様ほどスポーティではないものの、鈍重さは一切感じることもなく、シチュエーションを問わず程良く楽しいドライビングを堪能できる。

【次ページ】LSはレクサスブランドの新たな象徴と成り得るか?

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