アレを変えたら極上の乗り心地が復活!街乗りでのマツダ3は期待通りの完成度でした

■充実装備を考えればバーゲンプライスのマツダ3

日本で3世代にわたって展開されてきたアクセラから、海外モデルと同じネーミングへと改められたマツダ3。同社の新世代車両構造技術である“スカイアクティブ ビークル アーキテクチャー”を採用。そして、2019年末には新世代ガソリンエンジン“スカイアクティブX”の搭載も予定されるなど、ネーミングやデザインだけでなく、その中身も大きく刷新されています。

エクステリアも、ひと目でマツダ車と分かる“魂動デザイン”を核としながら、不要な要素を削ぎ落とし、滑らかなボディの面で構成するなど、さらなる深化を遂げています。

ボディタイプは、新たに“ファストバック”と名乗ることになった5ドアハッチバックと、落ち着いたたたずまいの4ドアセダンの2種類が用意されますが、それぞれのボディパネルを細かく作り分けるなど、各々の差別化も徹底しています。

ボディサイズは、ファストバックが全長4460×全幅1795×全高1440mm、セダンは全長4660×全幅1795×全高1445mmという数値ですが、フォルクスワーゲン「ゴルフ」などが属す欧州“Cセグメント”サイズといった方が、分かりやすいかもしれませんね。

“現在”のマツダ3には、1.8リッターのディーゼルターボ“スカイアクティブD”と、2種類の自然吸気ガソリンエンジン“スカイアクティブG”が用意されていますが、ボディタイプによって設定が異なります。

まずファストバックは、最高出力116馬力のスカイアクティブDに加え、最高出力111馬力の1.5リッターと、156馬力の2リッターという、ふたつのスカイアクティブGを設定。駆動方式とトランスミッションは、スカイアクティブDと1.5リッターのスカイアクティブGはFFと4WD、6速MTと6速ATが用意されますが、2リッターのスカイアクティブGは、FF+6速ATのみの設定となります。

対するセダンは、スカイアクティブDと、2リッターのスカイアクティブGのみの設定。ディーゼル仕様はFFと4WDを選べますが、ガソリン仕様はFF+6速ATのみで、トランスミッションは両エンジンとも、6速ATだけとなります。

2リッターのスカイアクティブGは、駆動方式などの選択肢が少ない印象を受けますが、これは年末にデビュー予定のスカイアクティブXを見越しての設定…といったところでしょうか。スカイアクティブX仕様はファストバック、セダンともにFFと4WD、また、ファストバックには6速ATのほかに6速MTも設定されており、全体のバリエーションはさらに広がる予定です。

そんなマツダ3でこだわりを感じさせる点が、先進安全装備や運転支援システムの充実。安全装備は、ダイナミンク・スタビリティコントロールシステム(横滑り防止機構)&トラクションコントロールシステム、衝突被害を軽減するスマート・ブレーキ・サポート、死角からのクルマの接近をドライバーに通知するブラインド・スポット・モニタリング、車線からの逸脱回避を支援するレーンキープ・アシストなどが、全グレードに標準装備されています。また、近年、注目を集める運転支援システムは、レーダーセンサーによって先行車を検知し、アクセル/ブレーキペダルを踏まなくても車間距離をキープして追従走行を行う“マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール”を全グレードに標準装備。この辺りの充実ぶりも、マツダ3の魅力といえるでしょう。

ちなみに、マツダ3のメーカーオプションリストを見ると、驚くほどシンプル。360度ビューモニターやドライバーモニタリングをセットにした“360°セーフティパッケージ”(8万5300円)、エントリーグレード向けのスーパーUVカットガラスや地上デジタルチューナーなどのセットオプション(4万8600円)、上位グレード向けのBOSEサウンドシステム+12スピーカー(7万5600円)など、いくつかのセットが用意されるだけ。裏を返せば、安全装備や運転支援システムは基本的には“全部盛り”状態というのが、マツダ3なのです。

気になる価格は、最もベーシックなファストバック「15S」(FF)で218万1000円〜。“現在”、最も高いグレードのファストバック「Xバーガンディセレクション」(4WD)で362万1400円〜ですから、装備内容を考えるとバーゲンプライスといえるのではないでしょうか。

■気づくと適切な運転姿勢となっている出来の良いシート

さて、今回テストドライブへと連れ出したのは、2リッターのスカイアクティブGを搭載するファストバックの中間グレード「20S プロアクティブ ツーリング・セレクション」(6速AT/FF)と、スカイアクティブDを搭載するセダン「XD プロアクティブ ツーリング・セレクション」(6速AT/4WD)の2モデル。

実車を目の当たりにすると、ファストバックとセダンとではボディラインの処理が異なるため、受ける印象もそれぞれで異なりますが、ひと言でいえば、ファストバックは「カッコいいじゃん」、セダンは「端正だな」といったところでしょうか。

ファストバックは張りのあるリア回りの造形が印象的で、イタリアのスペシャリティモデルもかくや! といったたたずまい。

一方のセダンは、なだらかなルーフラインと絞り込まれたリアエンドの合わせワザにより、流麗かつサルーンらしいコンサバな雰囲気を作り出しています。

運転席に収まって真っ先に感じたのは、ファストバック、セダンともにシートの出来の良さ。座面、バックレストとも十分なサイズで、クッションストロークもしっかり確保。しっとりとカラダにフィットします。この“硬過ぎず、柔らか過ぎず”の塩梅、気づくと適切な運転姿勢となっている設計は、マツダのシート作りに対するこだわりを感じさせます。

インテリアデザインは、近年のマツダ車らしいシンプルでクリーンな造形ですが、明らかに世代が変わったと感じられるほど、クオリティの向上が図られています。例えば、エアコンの吹き出し口やメーターナセルなど、パーツ類の組み立て精度はさらに改善。ディテールの処理にも上質さが感じられます。

また、ダッシュボードやセンターコンソールなどに使われる、マテリアルの質感や使い分けも洗練されており、見た目はもちろん、触った時のタッチも、クラスを超えた仕上がりとなっています。また、些細なことではありますが、ドアインナーハンドルの裏側やステアリングに備わるシフトパドル、シフトレバーなどに無粋なパーティングラインがなく、それらに指が触れた時の心地良さも、上質さを感じる要因のひとつになっているようです。

では、走るとどうなのか? ファストバック、セダンともに動き出して真っ先に感じるのは、前身のアクセラに対してステアリングのギヤ比がスローになったせいか、パーキングから出る時や交差点を左折する際は「しっかりとステアリングを切る必要があるな」ということ。「スポーティなたたずまいなのに、イメージと違うんじゃない?」と思われるかもしれませんが、ちょっとした違和感を伴うのは最初の数分間ほど。しっとりとした操舵感と、車体がロールする動きの連携がきわめてリニアで、ステアリングを切ったら切った分だけ曲がっていきます。

“拳ひとつ分の動きでノーズがシュッと向きを変えて車線変更する”といったタイプではありませんが、コーナリング中の細かな修正も、リニアなのに過敏さを感じることなく、自分で操っているという実感は、むしろ前身のアクセラをしのぐといえるでしょう。

さて、モデルごとの印象ですが、2リッターのスカイアクティブGを搭載したファストバックは、そのスペックから想像するよりも軽快でした。156馬力に対し、車重は1360kgですから、矢のような加速こそありませんが、軽快に回るエンジンと軽やかなフットワークで、街中からワインディング、ロングドライブと、シーンを問わずドライブを楽しめるクルマに仕上がっています。

一方、スカイアクティブD+4WDのセダンは、車重が1460kg。最高出力116馬力、最大トルク27.5kgf-mではやや力不足かな、と思っていましたが、信号からのスタートでも高速の追い越しでも、不満を感じることはありませんでした。スカイアクティブDは回転フィールがスムーズで滑らかなので、背中を蹴られるような加速ではありませんが、伸びやかな加速と優れた静粛性は、スカイアクティブGに勝るといっても過言ではありません。

また両エンジンともに、100km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転前後を指していますが、追い越し加速の際は、低回転域から厚いトルクが立ち上がるスカイアクティブDの方が、加速や騒音の面で有利といった印象でした。

■デザイン推しの人やディーゼル好きはすぐに試乗を!

基本的には期待通りの高い完成度で、ベタ褒めに終始しそうなマツダ3ですが、数日を共にすると些細ではありますが、気になる部分も出てきました。

ひとつ目はタイヤ。エントリーグレードを除き、全グレードとも215/45R18サイズが装着されていますが、トレッド面が硬いのか、指定空気圧が高いのか、おろしたての新車だからなのか、段差を通過する際に「パチン」とたたかれるような感触や、リアに軽い揺れが残ります。この印象は、ファストバックの方がより顕著でした。

ただし、空気圧を指定値より5~10%下げると大幅に緩和され、以前、クローズドコースで乗った時のような極上の乗り心地が復活しました。とはいえ、空気圧の設定は燃費やタイヤの磨耗、ハンドリングに影響しますから、この辺りは、メカニックの方などプロの意見もうかがいつつ、いろいろ試しながら自分好みのスイートスポットを探していく、といったところでしょうか。

もうひとつ気になったのは、ドアの開閉音。特にリアドアは、全体の作りの良さを考えると「もうひと声、重厚さがあってもいいかな」という印象です。こうした、重箱の隅を突くかのような思いを抱くのも、今後のマツダ車に対する期待値の高さあってのことでしょう。

デビューからモデル末期に至るまで、しっかりと熟成を重ねていくマツダ車ゆえ、クルマ好きの間では「いつが買い時なのか分からない」といった冗談も出るほど。さらに、2019年末に登場を控える大本命、スカイアクティブXのデビューを待ってから判断、という人も少なくないはずです。とはいえ「マツダ3のデザインにほれた!」「長距離ドライブが多いのでディーゼルがいい」といった方には、「我慢は禁物。まずはご試乗を!」とお伝えしておきましょう。

<SPECIFICATIONS>
☆ファストバック 20S プロアクティブ ツーリング・セレクション
ボディサイズ:L4460×W1795×H1440mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:156馬力/6000回転
最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
価格:264万2800円

<SPECIFICATIONS>
☆セダン XD プロアクティブ ツーリング・セレクション
ボディサイズ:L4660×W1795×H1445mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1756cc直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600~2600回転
価格:315万5800円

(文&写真/村田尚之)


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