殻を破った優等生!4気筒のシボレー「カマロ」はアメ車のイメージを一変させる

■時代の変化を読み取り2リッター4気筒エンジンを設定

ゼネラルモータースが展開するシボレーブランドといえば、スポーティなイメージがセールスポイント。「カマロ」もまた、「SS」や「Z/28」といった大排気量V8エンジンを搭載するスポーツモデルが、イメージリーダーとしてラインナップの頂点に君臨してきました。

環境問題を無視できない昨今としては、声高に叫ぶことはできずとも、また「デロデロ」という重低音サウンドが響かなくても、アメリカ製スポーツモデルといえば、大排気量V型エンジンのみなぎるパワーが魅力の源泉であり、熱心なファンを惹きつける理由であるのも事実だと思うのです。

2017年末に日本上陸を果たし、昨2018年11月にマイナーチェンジを受けた6代目カマロですが、本国でデビューしたのは2015年のこと。そのフルモデルチェンジに合わせて、新開発の2リッター直4ターボモデルが設定されました。

もちろん、アメリカ本国のラインナップには、3.6リッターのV6や6.2リッターのV8も用意されていますし、最新の日本向けモデルにも、最高出力453馬力のV8エンジンを搭載する「SS」グレードが設定されています。

では改めて、今回のテーマであるカマロLT RSについて見てみましょう。まず、最大の関心事であるエンジンは、排気量1998ccの直列4気筒DOHC。インタークーラー付きターボチャージャーを備え、最高出力275馬力、最大トルク40.8kgf-mを発生します。日本仕様のトランスミッションは8速ATで、駆動方式はFRという設定です。

このドライブトレーンを包み込むボディは、全長4785×全幅1900×全高1345mmで、車両重量は1560kgというのがカタログ上の数値です。イメージとしてはトヨタ「スープラ」や日産「GT-R」より長く、同「スカイライン」よりちょっとワイドといった程度。また、日本車では4シーターの2ドアクーペはほぼ絶滅危惧種で、現在はトヨタ「86」&スバル「BRZ」、レクサス「LC」、同「RC」、GT-Rのみという状況にあります。

ひと目でカマロと分かる端正なクーペスタイルの2ドアボディ内には、実用に足る4名分のシートを確保。

さらに、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応した液晶モニターを備えるなど、コクピットはイマドキのクルマらしく洗練されています。

一方、クルマのサイズは相変わらず拡大傾向にありますが、カマロは若干ながらサイズダウンを実施。設計とデザインを両立させる辺りには、開発陣の志の高さすら感じます。

■“消費は美徳”だったアメリカは過去のもの

その凛々しい顔つきや、たくましく伸びやかなボディを見てしまうと、「4気筒エンジンでは物足りないのでは?」なんて思ってしまいそうですが、エンジンを始動させると、それは杞憂であったことが分かります。

エンジンサウンドこそ、V8のそれのようにドスの効いた重低音はないものの、アイドリングでも程良い鼓動が伝わってきますし、アクセルペダルを踏む右足に軽く力を込めれば、実用エンジンとは一線を画す金属的なビートが響きます。加速感は背中にドスンとくるアメリカンマッスルカーのソレとは異なるものの、十分にトルクフルで伸びやか。市街地や高速道路での実用域プラスα辺りまでは、爽快感あふれる走りを堪能できます。

先入観とは怖いもので、2リッターの4気筒ターボとはいえ、確かに275馬力というパワーは車重からすれば十分すぎるほど。その気になれば、周囲のクルマをたちまちリアビューミラーの彼方へ追いやることなどたやすいことです。とはいえ、メーター上での平均燃費は10km/Lほどですから、もはや“消費は美徳”だったアメリカは過去のもの、ということでしょうか。

そして、何よりも意外だったのは、軽やかなフットワーク。シフトレバー後方に備わるセレクターでドライバーモードを「ツーリング(標準)」、「スポーツ」、「雪/凍結」の3モードから選択でき、それぞれスロットルやギヤシフト、ステアリングの設定が変わります。

好みの分かれるところではありますが、ツーリングモードはまさに、街中をゆったり流すような場合に適しており、ステアリングの操作感も軽く、エンジンの反応もドライバーを無闇に刺激することはありません。

一方スポーツモードでは、ステアリング操作時の手応えが増し、エンジンの反応もよりリニアになります。

例えば首都高速のように、ほどほどのペースで走る場合、FR車らしい素直で軽やかなコーナリングを楽しめます。また、わだちの深い高速道路をツーリングモードで走ると、ステアリングの感触がやや心もとないと感じることもありますが、スポーツモードではこうした不安がなくなり、快適なクルージングを満喫できます。

「アメ車といえばラフでワイルド」というイメージを持ち続けていた筆者としては、「カマロがこんなに優等生でいいの?」と思うのも本音ではありますが、爆発的なパワーを望むのであれば、V8エンジンを搭載するSSという選択肢もあります。

それよりも、スタイリッシュでカジュアルなたたずまいとスポーティで爽快な走り、そして、十分な実用性も備えた2ドアクーペという稀有なキャラクターに価値を感じるのであれば、まずは先入観抜きで試乗されることをお勧めします。

<SPECIFICATIONS>
☆LT RS“ショックエディション”
ボディサイズ:L4785×W1900×H1345mm
車重:1560kg
駆動方式:FR
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:275馬力/5500回転
最大トルク:40.8kgf-m/3000~4000回転
価格:529万2000円

(文&写真/村田尚之)


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