映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【1】フィルムで撮る写真

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手前味噌で申し訳ないけど、上の写真は、うちのガキが産まれた時のものです。母親がデジタルでマメに撮っていたので、自分はフィルムで残しておこうと思いました。それだけではなく、自分が産まれた時のモノクロの写真が、歳を取るにつれ凄く良く見えてきたのを知っていたからです。

 


だから、モノクロで同じように撮影して残そうと思いました。左が昭和39年、1964年の自分。右が平成20年、2008年の自分の子供です。年代差44年。あまり年代の差は感じられません。果たしてシャープすぎるデジタルで、この感じは出るでしょうか? 火事などがない限り、物理的なネガと紙焼き写真は長く残ってくれるでしょう。

大切な事だけはフィルム写真で

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僕の知人に、子猫を大層かわいがり、小さい頃からデジカメで記録を残していた人がいました。しかし、ある日、膨大な画像を保存していたパソコンがクラッシュ、復旧には20万円もかかるらしく、知人は泣く泣く画像をあきらめました。しかし、たまたま僕が撮影した子猫のフィルムが数本残っていたため、知人にフィルムを差し上げて、ずいぶん喜ばれました。デジタルは未知で、今後、保存の事なども進化していくかもしれません。

しかしフィルム写真は1か0かのブロックではなく、粒子という曖昧な世界です。やはりフィルム写真は記憶という曖昧な世界と相性が合うのかもしれません。だから大切な事だけはフィルムで撮るのをお勧めしたいと思うのです。

 

(文・写真/平野勝之)

ひらのかつゆき/映画監督、作家

1964年生まれ。16歳『ある事件簿』でマンガ家デビュー。18歳から自主映画制作を始める。20歳の時に長編8ミリ映画『狂った触覚』で1985年度ぴあフィルムフェスティバル」初入選以降、3年連続入選。AV監督としても話題作を手掛ける。代表的な映画監督作品として『監督失格』(2011)『青春100キロ』(2016)など。

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