フォルクスワーゲンがピュアEVの“ID”シリーズに魅力的な新作「ID.2 all」を投入する目的と意義

■eモビリティを民主化する2万5000ドル以下という価格帯

「eモビリティを民主化するため」のモデル、とVW乗用車部門を率いるトマス・シェーファー最高経営責任者(CEO)はID.2 allを開発した目的を語ります。

eモビリティとはなんでしょうか。電気で動くもの全般を指します。確かにここではID.2 allの話ですが、VWではマイクロバスなど公共交通のEV化も推進しています。

そして「民主化」とは、多くの人がアクセスしやすい存在にすること。

ID.2 allが衝撃を与えたのは、「2万5000ドル以下」(シェーファーCEO)という価格もあります。

23年3月の為替レートで計算すると、日本円だと360万円を超えてしまいますが、あちらの生活感覚では1ユーロ=100円などというので、仮にそれで計算すれば、250万円を切る価格。

価格で見ると日本製ピュアEV「日産サクラ」の安いほうの「Xグレード」(254万8700円)と同じってことになりますか。

▲「ゴルフと同じくらい広く、ポロと同じくらい手頃な価格」を謳う

サイズは全長4050mm(サクラは3395mm)、ホイールベースは2600mm(同2495mm)。一充電あたりの走行距離は450km(同180km)。

一概に250万円で比較できないと思いますが、走行性能はだいぶ違います。少なくとも欧州では「2万5000ユーロ」の価格が大きな話題を呼んでいます。

■これまでのID.シリーズと異なるフロントモーターの前輪駆動

機構的な特徴は、これまでID.シリーズはモーターをリアに搭載した後輪駆動だったのに対して、ID.2 allはフロントモーターで、前輪駆動であること。

MEBというピュアEV用のプラットフォームに手を入れたもので、フォルクスワーゲンはこれを「エントリーMEB」と称しています。

▲床下にリチウムイオン電池を積む2階建て構造はリアモーター/後輪駆動のほかのID.モデルと共通だけれど、ID.2 allは初めてのフロントモーター/前輪駆動

▲荷室は2重構造で、フロア下には収納ボックス、後席シート下には 50 リットルの収納スペースが設置されている

前輪駆動化したのは「広い荷室容量もこのセグメントには重要だから」(製品開発担当の取締役カイ・グリューニッツ氏)と説明されました。

ID.2 allの最高出力は116kW(226ps)。トップスピードは時速160km。静止から時速100kmまで加速するのにもわずか7秒と、かなり高性能です。

驚くのは、この価格でここまでの性能が実現できるってことですね。さらに「性能を落としたバージョンも用意している」、と前出のグリューニッツ氏は言っていました。

今回、公開されたのは「showcar」とのことで、内装はまだ作り込まれていませんでした。なにしろ企画から完成までわずか6週間。

▲2つの液晶パネルをそなえたシンプルな造型のダッシュボード

▲インパネは、ビートル風やゴルフ風などの表示ができるようになるそう

▲スマートフォン2台が同時に充電できる(円筒はインフォテイメントの音量コントローラー)

▲フロントシートのバックレストには、ワイヤレス充電機能を備えたマグネットホルダー装備(写真では見えませんが)

ただし「エクステリアの完成度は90パーセントです」(ミント氏)とのことで、突貫工事でも「ちゃんとストラテジーが頭の中に入っていれば大丈夫」(同)と言います。

発売予定は2025年。日本導入は未定とのこと。エンジン搭載でも欲しいと思わせる、魅力的なスタイルです。

【Specifications】
Volkswagen ID.2 all showcar
全長×全幅×全高:4050x1812x1530mm
ホイールベース:2600mm
駆動:前輪駆動
モーター:1モーター
出力:166kW
航続距離:約450km

 

<文/小川フミオ、写真=Volkswagen AG>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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