【スバル XV試乗②】“X-MODE”と200mmの地上高で、走破力はクロカン4WD顔負け!

新型XVの試乗会が行われたのは、4月中旬の軽井沢。さすがに残雪も溶けて…と思っていましたが、訪れた日の前々日は、まさかの季節外れの大雪。一抹の不安を抱きつつも、当日は見事な快晴に恵まれ、舗装路面もしっかりドライに。しかし、オフロードの特設コースに目をやると、かなりの残雪に加え、雪解け水で泥沼、というかなり過酷な状態です。「いやいや、コレってクロスカントリーSUVでも厳しいコースなんじゃないの?…」と思いながら、まずは舗装路の特設コースへ向かいます。

試乗車は1.6リッター、2リッターの両モデルに加え、比較用に先代モデルも用意されていました。まずは復習から…と、旧型モデルで舗装コースへと向かいますが、なかなかどうして、軽快な走りです。

確かに、細かいターンが続くとボディの動きがワンテンポ遅れ、揺り返しでやや“おっとっと…”となることもありますが、腰高のSUVとしては標準の範囲内、といった感じでしょうか。

ただし、長距離を走るならシート座面の厚みや、上半身を支えるサポート具合をもうちょっと頑張ってくれればなあ、と感じたのも事実です。この辺りを気にしつつ、新型XVの2リッターモデルへと乗り換えました。

エクステリアデザインについては、先代の特徴を受け継いでおり、まさに正常進化というたたずまいです。しかし、シートに腰を下ろすと、クッション部の厚みや硬さも程良く、座り心地はもちろん、体全体に対するサポート感も明らかに向上しています。

走り出してからも、シートの印象は良好で、コーナーが続くようなシチュエーションでも、しっかりと、しかも自然に体を支えてくれます。また、シートやダッシュボードにあしらわれたオレンジ色のステッチも、アクティブなSUV、というイメージをより明確にしています。新型のデザインを表すキーワードは“スポカジ”なのですが、こうした色使いや細部の意匠にはワクワク感がありますし、インプレッサとのキャラクターの差別化も上手に図れていると思います。

実際、走ってみての印象はというと、真っ先に感じたのはボディのガッチリ感でした。これは、現行インプレッサ同様、新世代プラットフォームである“スバル・グローバル・プラットフォーム”の効果が大だと思いますが、低中速で大きめの段差を越える時でも、ボディやシート、ステアリングに不快な振動が伝わったり、ブルブルと震えたりするようなことはありません。

また、サスペンションの基本メカニズムこそインプレッサと共有していますが、新型XVはあくまで独立した車種として開発されており、サブフレームのかさ上げ、スタビライザー径の変更など、セッティングやジオメトリーが異なります。足回りの動きはSUVらしくスムーズで、十分なストロークを感じさせる設定となっており、乗り心地は良好です。しかし、右に左にとタイトなターンが続いても、重心の位置が最適化されていることで、“おっとっと”と感じる揺れがありませんし、コーナリングでのブレーキング、ステアリング操作に対しての反応も、実にリニアで自然な印象になりました。

こうなると“飛ばしたくなる!”というワケではないのですが、最高出力115馬力の1.6リッターに対し、154馬力の2リッターは、ストップ&ゴーや中間加速を問わず、明確なアドバンテージを感じます。1.6リッターもスバルの水平対向エンジンらしいスムーズな感触、シーンを問わない扱いやすさを備えており、街中やちょっとしたワインディングでは十分な性能を実現しています。しかし、2リッターの低中速域でのゆとりに加え、“ここぞ!”という場面でのパンチの効いた加速を知ってしまうと「やはり、こっちだな」と思ってしまいます。また、2リッターには出力特性を切り換えられる“SI-DRIVE”が備わるので、気分やシーンに応じたドライブを楽しめる点も魅力だと思います。

そして、いよいよ特設オフロードコースでの試乗に移ります。コースコンディションは、朝イチに見た時よりもぬかるみが増している、という状況。例えるなら、アップダウンのある田んぼ、といった感じでしょうか。

今回のモデルチェンジにおけるハイライトは、「フォレスター」や「レガシィ アウトバック」で採用されている機構“X-MODE”が採用されたこと。このX-MODE、雪道や荒れた山道など、タイヤがスリップしてしまうようなシーンでも、エンジンやAWD機構、VDCを統合制御するシステムで、駆動力やブレーキをコントロールすることで、走破力が向上し、スムーズな脱出を実現しています。

その効果を試すべく、コース途中の上り坂、それも、助手席側は雪、運転席側は泥、という位置で停車、発進を行いました。実はX-MODEがオフの状態でも、アクセルワークに気をつければ脱出は可能なのですが、タイヤの空転に伴い、横方向に少しずつ滑りながら前進していきます。

一方、X-MODEをオンにすると、まるで乾いた路面のように、タイヤは空転や横滑りすることなく、するっと発進します。

田んぼなさがらの、ぬかるんだオフロードでは、この“滑り”こそが油断できない難敵。何しろ、自らのタイヤで路面を掘り返してスタック…なんてことにもなりかねませんから。また、クロスカントリーSUVも顔負け、そして、同クラスのライバルを大きくしのぐ200mmという最低地上高も、ゆるゆるの泥道や大きな轍(わだち)が続くといったシチュエーションでは、本当にありがたく、そして心強く感じます。

X-MODEは、2リッターモデルと1.6リッターの上位グレード「1.6i-L」に標準装備されています。1.6i:198万円、1.6i-L:208万円、2.0i-L:230万円、2.0i-S:248万円という価格設定を見ると、なんとも悩ましく感じますが、やはり、ゆとりある走り、そして、X-MODEの走破力を知ってしまうと、個人的には2リッター推し、というのが正直な感想。

たたずまいこそファッショナブルな“スポカジ”ではありますが、体育会系の骨太クロカンも顔負けのフィジカルも備えた新型XV。アウトドア派のクルマ好きにとっては、シーズンもシチュエーションも問わない心強い相棒となってくれそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆2.0i-L アイサイト
ボディサイズ:L4465×W1800×H1550mm
車両重量:1420kg
駆動方式:AWD
エンジン:1995cc水平対向4気筒DOHC16バルブ
トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
最高出力:154馬力/6000回転
最大トルク:20.0kg-m/4000回転
価格:248万4000円

(文/村田尚之 写真/村田尚之、SUBARU)


[関連記事]
【試乗】スバルAWDが雪に強い理由、それは“人が中心のクルマづくり”にありました

【検証2016年の注目車】スバル「インプレッサ」の評価はなぜ高いのか?

【スバル インプレッサ 1.6試乗】“良いモノ感”を放つテンロク。強固なボディで走りも上質


トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする