観音開きの開放感が気持ちいい!ホンダ エレメント【遊べる絶版車図鑑】

■遊びに便利なアイデアが沢山盛り込まれた唯一無二の存在

エレメントがその姿を人々の前に見せたのは2002年。2001年1月に開催された北米国際自動車ショー(デトロイト)で公開されたコンセプトカー“モデルX”を市販化したものです。

アメリカで“ジェネレーションY”と呼ばれる、当時の10代後半から20代半ば(1980年代〜90年代中盤生まれ)の遊び好きをターゲットに開発されただけに、オフをとことん楽しむ、ライフスタイルを充実させるアイデアが数多く盛り込まれているのが特徴でした。日本では2003年4月に販売がスタートしました。

まずはデザイン。ビーチにあるライフガードステーションをイメージしたもので、空や海との一体感、自由気ままな空間をイメージさせます。ボディ下部が樹脂で覆われているのは、デザイン的なインパクトはもちろん、荒れた場所を走っても塗装を傷つけないという機能的な優位性も持たせています。この樹脂は当時新開発されたもので、耐スクラッチ性を持たせたものが採用されました。

ボディはMPVとSUVのいいとこ取りをしたような形状。短めの全長と、1810mmの全幅、1790mmの全高により独特のスタイルに。くぼんだヘッドライトやゴツゴツしたバンパーにより、タフさも感じられるようになっています。

そしてエレメントの最大の特徴は、両側のリアドアをサイドアクセスドアと名付け観音開きにしたこと。Bピラーが観音ドアに内蔵されているので後部座席へのアクセスがしやすく、キャンプ場などで前後のドアを開けておけば、開放的な時間を堪能できます。

バックドアは上下二分割のクラムシェル構造に。アッパーゲートだけ開けば荷崩れを防止できます。そしてロアゲートは大人2人が腰掛けられる耐荷重が与えられました。

室内高は1140mmあり、後部座席を両サイドに跳ね上げると前輪を外さずに2台のマウンテンバイクを積載可能。ラゲッジ床面は水拭き可能な素材を使用し、シートにも防水素材を使用。汚れたものも気にせずガンガン積むことができます。

搭載エンジンは最高出力118kW(160ps)、最大トルク218N・m(22.2kg-m)を発揮する2.4L i-VTEC。駆動方式は通常はFFで走り、後輪のすべりなどを検知すると後輪に駆動力を配分するデュアルポンプ式のリアルタイム4WDになります。本格的なSUVと比較すると4WD性能はそこまで高くありませんが、レジャーシーンでは十分頼りになるはずです。

グレードはモノグレードで、ボディカラーはサンセットオレンジ、サテンシルバー、ガラパゴスグリーンなど5色。

また、ディーラーオプションで遊びに使えるものがたくさん用意されました。

後部座席裏側にはバックパックのバンジーコードのようにスノーボードなどを固定できるコードがつけられたり、ロアテールゲートに楽に座れるシートバッククッションや、ラゲッジフロアのボードをテーブルとして使える脚も用意されました。

販売終了から15年経過しているためこれらを手に入れるのは難しいかもしれないですが、興味ある人はじっくり探してみてください。

ポップなギア感満載のエレメントですが、デザインやコンセプトが奇抜すぎたこともあり新車は思うように売れず、日本ではわずか2年で販売が終了してしまいました。しかしアメリカではヒットモデルとなり、2011年まで販売されていました。

そんなエレメントは販売が終了してしばらく経ってから、アウトドア好きの間で密かなブームに。そのため普通ならとっくに値段がつかなくなってもいい年式なのに、現在でも100万円以上するものが多くなっています。

 

■高値だが相場が安定している今が狙い目!

2021年9月現在、エレメントの中古車は40台ほど流通しています。価格帯は40万〜220万円で、低価格帯は走行距離が20万kmを超えたものが多く、高価格帯は前オーナーががっつりカスタムしたものになります。中心価格帯は70万〜160万円に。この価格帯だと前オーナーが手を加えていたとしてもホイールを換えた程度になります。

新車価格はデビュー時が259万円。2005年6月には価格が改定されて271万9500円に。人気車種なのでデビューからかなり時間が経っていますが高値で取引されていると言えるでしょう。

ただ、現在は上昇局面に入っているという動きは見られず、相場は安定しています。その意味で、エレメントが欲しい人は今が買いどきと言えるでしょう。

古いクルマなのでほとんどは10万km以上走ったものです。ただしタイミングチェーンなので、購入時に走行距離によるベルト交換がされているかを気にする必要はありません。ただ、Vベルトなどの消耗品は購入時に状態をチェックして、必要があれば納車までに交換を依頼するといいでしょう。また、エアコンなど電装品の作動状態も購入時にしっかりチェックしておきたいところです。

高値とはいえ比較的相場が安定しているエレメントですが、絶対的な流通量が少ないだけに今後上昇に転じる可能性がないとは言えません。欲しい人は早めに購入を検討したほうがいいでしょう。

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<文/高橋 満(ブリッジマン)

高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。

 

 

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