サロモン、メレル、キーン。アウトドアメーカーのロングセラーモデルはなぜ売れているのか?

■なぜ長く愛され、選ばれ続けるのか

▲サロモン「XA PRO 3D V9 GORE-TEX」

数あるシューズの中で、なぜ彼らは選ばれ続けるのでしょうか。サロモン「XA PRO 3D V9」の人気の理由について、鰐渕さんは意外なポイントを挙げます。

「選ばれる理由ってカラーリングだったりすることが多いんですよね。トレッキングシューズはカラフルだったりアースカラーベースでまとまったシューズがあまり多くはないと思います。そういう意味ではシンプルに足映えがするので、だから登山系でも選んで頂ける方が多いのかなと思っています」

機能面においてもクイックレースなどを取り入れており、履きやすさという強みがあります。さらに、大きな転機となったのはUL(ウルトラライト)のトレンドだったそうです。「ULがトレンドに入ったタイミングで全体的にアイテムの傾向や選ばれる物に変化が出てきたんです。シューズも例に漏れず、今までミッドカットの非常に硬いシューズを使われていたのが、もう少し柔らかいローカットが多くなって。ありがたいことに『XA PRO 3D V9』がその第一人者のようなポジンションとして使っていただくことが増えて、それは1番大きいかもしれませんね」(鰐渕さん)。

▲メレル「ジャングル モック」

メレルの田中さんは、「ジャングル モック」が選ばれる最大の理由を「1番はやっぱり履き心地」だと断言します。

「玄関から出ていく時に『どの靴を履こうかな』と、悩むヒマもないような時に、サッと履けてしまう、履いてしまう。そうさせてしまうような履き心地に尽きます」

ユーザーからは「足の裏に吸い付くような感覚」、「靴紐がないのに走れちゃう靴」と評価され、特に子供が小さいパパママ層から本当に大きな声をいただいているそうです。「履いた瞬間から靴ずれしたことない」という声が寄せられるほど馴染みやすいのは、他で考えると奇跡的だと田中さんは語ります。アッパーにスエードを使用した落ち着いたビジュアルや、履き始めからすんなりと履き回しができる点も推しポイントとのこと。

▼キーン「ジャスパー」

▲キーン「ジャスパー」

一方でキーンの「ジャスパー」には、少し意外なエピソードがあります。誕生した本国アメリカでは、わずか数年で1度廃盤になってしまった過去があるのです。しかし日本ではその独自の魅力が支持されて人気に火がつき、現在では“キーン=「ジャスパー」”になるほどの定番モデルへと成長したという経緯が。青木さんはその魅力を「『ニューポート』に通ずるリラックスして履けるラスト(木型)や脱ぎ履きのラクさと、ルックスのギャップが長く選ばれている理由ですね」と分析。さらにその独特の履き心地の秘密は独自のソール構造にあるといいます。

「『ジャスパー』はミッドソールがない分ミニマルな履き心地と思われるかもしれませんが、フットベッドという中敷きに厚みとクッション性をもたせることでミッドソール代わりにしています。この特殊な構造が柔らかすぎず、でも地面からの突き上げのないちょうどいい履き心地に繋がっているんです。その部分もご愛用いただいている理由の1つかなと感じています」(青木さん)

■変わらないものと、アップデートされる機能

▲サロモン「XA PRO」

長く愛される名作には、変わらない信念と時代に合わせた進化の共存があります。サロモンの鰐渕さんは、「テクノロジーはやはり進化していますよね」と語ります。

「デザインベースなどは継承しつつもアウトソールやラグのパターンを変えています。あとシャーシのデザインや形状を変えていたり。前の代のシューズを踏襲しながらも少しずつアップデートされて9代目ですが、変わらないのはセンシフィットと言われるサイドのライン。シューレースを締めると連動してアッパー全体を包み上げるというデザインとなっており、これがうちのアイコンテクノロジーの1つとなっています。」

初代からずっと続いているこのラインこそが、見た目が変わらないポイントなのです。

対照的に、メレルの「ジャングル モック」は1998年の発売時からデザインの型が全く変わっていません。カラーバリエーションの追加はあるものの、型自体の変更はなし。時代とともに製造工場を変えながらも、ただし、その“良さ”をキープする努力を惜しみません。

「製造工場などは時代とともに変えなきゃいけないこともあって何回か変えています。もちろん、基本的には工場自体もなるべく安定させてしっかりたくさん作ってその靴の良さをキープしていますが、どうしても細かい違いが出てしまうときもあります。すごいのが10年20年履いているお客様から『かかとの高さが少し違うのではないか?』と単品不良でご指摘いただくことがあって。すごく勉強になるんですけど、それだけご愛用いただいてるわけなので、改めてしっかり向き合っていくべきアイテムなんだなぁと実感しています」と田中さんは真摯に語ります。

キーンの青木さんによれば、「ジャスパー」のオリジナルモデルについても、優秀なラスト(木型)であるため発売から変更は加えていないとのこと。カラバリや素材、アッパーのアクセントでシーズンごとの変化を楽しませつつ、その代わりに“アウトドアスニーカー”の元祖である「ジャスパー」をベースに、他モデルとして多用途展開を行っています。

「例えば『ジャスパー ザイオニック』(2万900円)に関してはこの顔のまま本当に山(ハイキングなど)へ行きたいよねという人向けですね。スニーカーの要素も残しつつラギッドなアウトソールパターンやラバーのレシピ(配合)にしています」

また、形は似ていつつも顔に少し変化をつけた次世代モデル「ジャスパー スリー」(1万9800円)も登場。これまでアウトソール+インソールの構成だった「ジャスパー」にミッドソールを追加したもの。履き心地にも非常にこだわりを持って作ったものになっています。

* * *

今回紹介した3モデルのルーツや人気の理由を振り返ると、単なる流行りではなくユーザーの足元を支え続ける確固たる機能とコンセプトがあることがわかります。長く愛される名作には変わらない信念と、時代のニーズに合わせた着実なアップデートの両立がありました。次にアウトドアシューズを選ぶ際はこうした背景にあるストーリーにも思いを馳せながら、自分のライフスタイルに寄り添う1足を見つけてみてはいかがでしょうか。

 

<取材・文/山口健壱円道秀和(GoodsPress Web編集部)  協力/サロモンメレルキーン

 

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