■姿を消した「ヒット原チャリ」が海の向こうで生き続ける――ホンダ・ZOOMER
2001年に日本国内で発売され大ヒットとなったホンダ・ZOOMER。50ccスクーターにして無骨なネイキッドスタイルが多くの若者に受け、結果的に2017年まで生産が続いたロングセラーモデルにもなりました。
▲2001〜2017年までのロングセラーモデルとなったホンダ・ZOOMER(画像:ホンダ)
他方、日本国内仕様車の生産終了後も、海外ではZOOMERをベースにリメイクしたモデルが走り続けていますが、その顕著な例がアメリカ、そしてタイです。
アメリカでのZOOMERはRuckusと名を変え「乗る」「いじる」双方を満たす、数少ない「小さな名車」として50ccのままで今日も愛され続けています。
▲ZOOMERのアメリカ仕様車はRuckusと名を変え、今日も現役で走り続けています(画像:Honda Powersports)
▲タイでは「進化系ZOOMER」とも言うべきZOOMER-Xが今日も人気です(画像:Thai Honda)
そして、もう1つZOOMERのDNAが生き続ける国が、これまたバイク大国のタイです。タイには2012年より108ccのエンジンを搭載したモデル、ZOOMER-Xが販売されました。50ccのZOOMERの面影からかなり飛躍したモデルへと成長しましたが、その完成度の高さから、2013年から数年間ホンダが公式に逆輸入販売をしたほどでした。
以降、細部のアップデートなどが繰り返されながら2026年現在も現役モデルが走っていて、かつて日本で大ヒットしたZOOMERのDNAがかの地で継承され続けています。
■姿を消したヤマハの代表モデルが近年まで現役で走っていた――ヤマハ・SR400
ヤマハのバイク史を語る上で絶対に欠かすことができないモデル・SR400。1978年の発売以来、43年間ものロングセラーとなり、日本のバイクシーン全体にも大きな影響を与えたモデルでした。
▲ヤマハのロングセラーモデルとして広く知られたSR400(画像:ヤマハ)
2021年、強化された排出ガス規制に適合できず、「ファイナル・エディション」が発売され姿を消しましたが、なんとヤマハでは静かに生産を続け、タイに輸出をしていました。
▲SR400のタイ仕様車。年代ごとに様々なカラーリングが存在します(画像:Thai Yamaha Motor)
▲2026年春、タイで700台限定で発売されたSR400ファイナル・リミテッド・エディション(画像:Thai Yamaha Motor)
バイク王国・タイでももちろんコアな人気を誇り、現地販社が促すことでカスタムなども盛んでしたが、2025年についにタイ仕様車も「ファイナル・エディション」が登場。2026年春には世界で本当の最後となった700台限定の「ファイナル・リミテッド・エディション」が発売され、現地で惜しまれつつも姿を消す格好になりました。
■日本で社会現象にもなったヒットマシンはアメリカの悪路を走り続ける――ヤマハ・TW200
90年代のストリート・スカチューンブームの代表マシンとして大流行したヤマハ・TW200。テレビドラマでキムタクが乗ったこともあり、同時代の渋谷・原宿では、このバイクに乗る「ティーダバー」と呼ばれる人たちをよく見かけたものです。
▲従来のバイクユーザー以外を巻き込む大ヒットとなったヤマハ・TW200(当時のカタログより)
もっとも、当のTW200乗りの人たちが「俺はティーダバーだ」と自覚するケースはさほどなく、あくまでもバイクメディアが仕掛けた呼称ではありました。しかし、そのように呼ばざるを得ないほど、街中でTW200が行き交っていた、というわけです。
それだけ人気を博したTW200だったわけですが、肝心のモデルそのものは、強化された排出ガス規制に適合できず、2008年に日本国内仕様車は生産終了となりました。
しかし、実は初代発売当初から、TW200はアメリカにも輸出されていて、日本国内仕様車の生産終了後も、生産が続行。なんと2026年モデルも発売され、今も現役で走り続けています。
▲アメリカでは今も現役で走り続けるTW200(画像:Yamaha Motor)
▲TW200の本来の機能性が、アメリカのバイクシーンで活躍しています(画像:Yamaha Motor)
かの地でのニーズは、ファッション云々ではもちろんなくて、TW200の本来の機能性や持ち味を生かしたトレール的なもの。道なき道、野山や林道を駆け抜けるには最適のバイクとしてロングセラーモデルに至っています。
■さほど良さが伝わりにくかったスクーターがフランスで大ヒット――ヤマハ・BW’S
1988年にヤマハから発売されたスクーター、BW’S(ビーウィズ)。オフロード走行をイメージし、フロントはデュアルライトを装備し、やや太めのブロックタイヤなどを履いたスタイルは、往年のレジャーバイクの雰囲気もあり、コアな人気を得ました。
▲デュアル・バーパス・スタイルのスクーターとして発売されたヤマハ・BW’S(画像:ヤマハ)
ただし、当時のバイクシーンは走り屋ブームの波が50ccのスクーターにも派生した頃。舗装路だけでなく悪路も走るコンセプトのBW’Sは当時の日本の若者には伝わりにくかったのかさほどウケず、わずか数年で生産終了になりました。
その後、BW’Sの金型が、フランスにあるヤマハの子会社・MBKへ渡されますが、同社がフランス仕様にリメイクし、MBK・Boosterと名を変えて1988年頃より販売したところ、これがなんと大ヒット。
▲フランスで大ヒットとなったBW’SベースのMBK・Boosterの初代モデル(画像:MBK)
▲後に進化を遂げ、今も唯一無二のスクーターとしてフランス人に愛され続けています(画像:MBK)
近年ではヨーロッパのチューンアップメーカーまでもが参加し、ハイパフォーマンスモデルを発売するなど、今日もヨーロッパのスクーターシーンを席巻するマシンとして現役バリバリで走り続けています。
■世界中の農業を支え続ける輸出向けアグリバイク――ヤマハ・AG200
ヤマハの海外輸出モデルの中でも、実は一番のロングセラーは、AG200というバイクです。ヤマハのヒットモデル、セロー225、TW200とおなじXT200系をベースにしながら、アグリカルチャー(農業)シーン向けに、さまざまな実用機能(牛追い、干し草運搬などに活用できる機能)を搭載した歴史あるバイクです。
▲1985年発売のヤマハ・AG200の日本国内仕様車(画像:ヤマハ)
1985年には一時日本国内仕様車も販売されましたが、日本の農業の現場で200ccのバイクを用いるニーズが少なかったこともあり、わずか数年で生産終了になりました。
▲1999年モデルのヤマハ・AG200(オセアニア仕様車)(画像:Yamaha Motor Australia)
▲「農業バイク」としてのニーズが高い一方、地域によっては「経済発展を支えるバイク」としても活躍しています(画像:Yamaha Motor Australia)
一方、海外輸出モデルは、日本国内仕様車の発売よりも早い1983年から販売がスタートし、今日までにヨーロッパ、中南米、オセアニア、アフリカ諸国などで重宝され続けています。特にアフリカにおいては、農業ニーズを飛び越え、インフラ整備が不十分な地域における「移動・物流インフラを支える重要な足」として経済発展を支えるバイクとして絶大な支持を得続けています。
■「ビーチバイク」としてタイで大ヒットし今も現役バリバリ疾走中――スズキ・バンバン200
そして、最後に紹介するのがスズキ・バンバン200です。
70年代のレジャーバイクブームを牽引したスズキ・バンバンシリーズをリメイクするカタチで、に2002年に登場したバンバン200はライバル、ヤマハ・TW200と人気を分けながら2017年までの15年間、日本国内で販売され続けました。
▲ヤマハ・TW200の対抗馬として2002年に発売されたスズキ・バンバン200(画像:スズキ)
一方、バンバン200をスケールダウンしたバンバン125が2013年ヨーロッパに輸出され、まずまずのヒットとなります。さらに、日本国内仕様車の生産終了となった2017年にアメリカ向けの輸出モデルを発売し、コアな人気を得ました。ただし、かの地でもヤマハ・TW200の壁は厚く、2019年頃にアメリカ市場からは姿を消しました。
しかし、実は輸出モデルのバンバン200が最も支持を集めたのは、ヨーロッパやアメリカではなくタイでした。
▲バンバン200のタイ仕様車(画像:Thai Suzuki Motor)
▲タイのビーチリゾートの「オシャレな足」として今日も現役で走っています(画像:Thai Suzuki Motor)
前述のバンバン125が2014年に、タイにも輸出されると瞬く間に大ヒットとなり、さらに2010年代半ばからバンバン200の輸出モデルも正規輸出がスタートしました。
タイ国内のビーチリゾートで「ビーチバイク」として多くの若者の支持を集めたほか、ストリート系カスタムも大流行。現在も現役バリバリでタイの各地で走り続けています。
■海外で活躍する「日本製バイク」の一部は逆輸入車で購入できるケースも
ここまで「日本製バイクの海外仕様車」を8モデル絞ってご紹介しましたが、いずれも世界中のあちこちで人気を得たバイクばかり。
日本国内では未発売だったり、ロングセラーを果たしながらも諸事情で姿を消したり、あるいは日本では「その良さ」が理解されぬままだったり、日本人の多くが知らないシーンで活躍していたり……各モデルごと事情はさまざまですが、それでも海外で「日本製バイク」が活躍しているのはなんだか喜ばしく思え、そして、日本国内で見ていたイメージとはまた違った印象を受けるものです。
ここで紹介したモデルの中には、逆輸入業者が日本国内で販売しているものもあります。興味を持ったモデルは、さらに深掘りし、細部に注目してみると面白いと思います。
<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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