■キャリイ&エブリイのチーフエンジニアが教えてくれた軽トラ・軽バン開発の舞台裏
業務目的で使用される軽トラや軽バンは乗用車とは違うニーズがあるため、開発は乗用車とは異なる形で行なわれているはず。一方で軽バンを見ると、乗用用途で開発されたワゴンモデルもラインナップされます。
軽トラ・軽バンはどのように開発されているのか、商用車ならではの開発の難しさはあるのか。そんな疑問をキャリイとエブリイのチーフエンジニアである伊藤二三男さんにぶつけてみました。
Q:軽バンは軽乗用車をベースに開発している?
スズキ初の軽自動車として1955年に登場したスズライトSS。その後、このモデルをベースに開発されたピックアップやデリバリーバンなどが登場しました。軽バンや軽トラは乗用車をベースに開発されることが多いのでしょうか。
スズキの社是である『お客様の立場になって、価値ある製品を作ろう』という精神に沿って考えると、乗用車から派生して商用車を作ることはあります。たとえば商用モデルのスペーシアベースは、スペーシアから派生する形で生まれました。エブリイにおいては、商用車のエブリイをベースにして乗用車のエブリイワゴンを作っています(伊藤さん)
▲エブリイワゴンは、商用車のエブリイをベースに開発される
Q:スズキ独自の軽トラや軽バンの設計基準はある?
冒頭で解説したように、軽トラや軽バンは荷室床面積や荷室開口部の大きさなどが細かく規定されていて、そこからはみ出すと商用車として認められません。これら国の規定以外にも、スズキが商用車として「この基準を満たさなければいけない」と決めていることはあるのでしょうか。
商用車は仕事で使われることが前提です。そのため、乗用車とは違う評価方法を設けています。例を上げると多くの荷物を積むことが前提のクルマなので、荷物や重量物を積んで評価を実施しています。キャリイは実際に材木を積んで耐久評価をしています。キャリイ、エブリイともにリア駆動でリアにリジットアクスルを採用しているのは、タフな使われ方をする両車の耐久性を高めるための施策です(伊藤さん)
▲キャリイは実際に木材を積んだ状態で耐久テストを行うという
Q:乗用車に比べると価格が安い商用車。コストを下げるための対策は?
エブリイとエブリイワゴンの価格をエントリーグレードで比較すると、エブリイのPA(2WD CVT)が143万4400円なのに対し、エブリイワゴンのPZターボ標準ルーフ(2WD CVT)が204万7100円。ターボの有無などがあるので単純比較はできませんが、商用車と乗用車ではかなりの価格差があります。
仕事で使う商用車は低価格であることも重要。それを実現するために行なっていることはあるのでしょうか。
商用車は意匠性より機能性を重視してコストを検討していきます。中でも仕事に特化する想定のグレードは加飾部品がないため殺風景になりがちです。それでも美しくするために『機能美』を合言葉にデザイン開発、部品開発していきます(伊藤さん)
▲機能美を追求したエブリイのインパネ
Q:顧客のニーズで絶対に守らないといけない性能は?
軽トラ・軽バンはさまざまな仕事で使われるクルマ。そのニーズを満たすためにどのような性能を盛り込んでいるのでしょうか。
キャリイは農業で使われることが多い車です。そこで畑などでの走破性や小回り性能が必須です。スーパーキャリイは建築関係のお客様が多いので、コンパネを載せられるようにする必要があります。配送業のお客様が多いエブリイは、乗り降りのしやすさや荷物の乗せ降ろしのしやすさが必須になります(伊藤さん)
これを具現化した機能として挙げられるのが、キャリイとスーパーキャリイに標準装備されるぬかるみ脱出アシスト機能(ブレーキLSD)。これはジムニーで培った技術を横展開したもの。わずか3.6mという最小回転半径は、あぜ道などでの小回り性能を高めています。
スーパーキャリイはキャビンを広くしているのでその分荷台が狭くなりますが、キャビン下をえぐった形状にすることで、荷室フロア長1975mmを実現しています。
▲キャビンを広くしたスーパーキャリイ。キャビン下をえぐった形状になっている
配達で頻繁に乗り降りするエブリイは、乗降ステップの位置を低くするとともに大型の乗降グリップを設置して、ストレスなく乗り降りできるようにしています。
Q:スズキはこれからもこだわりをもって軽トラ・軽バンを作り続けてくれますか?
現在、軽トラを製造しているのはスズキとダイハツの2社のみ。セミキャブオーバーの軽バンはスズキ、ダイハツ、三菱(ミニキャブEV)のみになっています。軽トラと軽バンを製造するメーカーが減少した中、スズキは今後も軽トラと軽バンの製造をやめないでくれるのでしょうか。
もちろんです。お客様の立場になって、価値ある軽トラックと軽バンを作り続けていきます(伊藤さん)
▲スーパーキャリイはアウトドア需要を見据えたXリミテッドも設定される
伊藤さんのこの言葉を聞いて安心した人も多いはず。これからも軽トラ、軽バンの進化に期待していきましょう!
>> スズキ「四輪車」
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>

高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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