グランドセイコーのムーブメントが刻み続ける腕時計の新時代【ニッポン発の傑作モノ】

■機械式9S系ムーブメント 20週年モデルはどこから見ても惚れ惚れするマスターピース

▲1998年に独自の“新GS規格”に準拠した「キャリバー9S」が誕生。機械式の復活モデル第1弾となるオーセンティックな「9S5」シリーズに搭載された

1960年に最高峰の国産時計を目指して誕生したグランドセイコー。70年代のクォーツ時計の普及に押され、一時は生産中止の憂き目にあった。そこからの復活の象徴となった機械式ムーブメントが「キャリバー9」である。

復活への道のりは「逆風の中を突き進む状態だった」(江頭さん)とか。開発に着手したのは誕生から2年ほど遡った96年。まさにクォーツ時計全盛の時代に逆行するような行為だったが、機械式時計の愛好家から復活を望む声も聞こえていた。

「当時は高級モデルの製造は長年のブランクがあった状態。その上、グランドセイコーに求められる精度要件は非常に高く、設計は困難を極めました。それでもOBの技術者への聞き込みを重ねて、開発を進めました」

この頃、並行して計画されていたのが、独自規格の制定だ。「機械式グランドセイコーを復活させるなら、世界基準とも言える“クロノメーター”を再び越えたい…。そんな思いから、より高い精度基準を設けた『新GS規格』を制定したのです」

高い精度や持続時間などの多岐に渡るハードルをクリアしたキャリバー9Sは、98年に機械式グランドセイコーの復活第1弾「9S5」シリーズに搭載された。今年はそれからちょうど20年。グランドセイコーらしい美しい外装や装飾が目を引く記念モデルには「キャリバー9S」が搭載されている。

「初期のキャリバー9Sと比べると、約50時間だったパワーリザーブは約72時間に伸び、GMT機能も加わっています。実使用時の精度もより安定しています。多機能化も進めていますが、キャリバー9Sが何より重視するのは高い精度を保つこと。このグランドセイコーの哲学を守りつつ、さらなる改良を重ねていきたいですね」

 

■文字盤のデザインはもちろんケースの仕上がりの良さは圧巻!

グランドセイコー
「SBGM235」(59万4000円)

原点回帰の意味合いをも込めて、初代GSに通じるたデザインを採用。緻密な装飾がクラシックなケースに映える。デイト表示とGMT機能を搭載。機械式(キャリバー9S66)。ケース径39.5mm

▼細かい“G”と“S”を刻印

▲文字盤にはグランドセイコーの“G”と“S”、第二精工舎の“S”マークを刻印

▼飽きのこない回転錘の動き!

▲裏蓋はスケルトン仕様で、美しい装飾を施したムーブメントの精緻な動きを覗ける

▼丁寧な仕上げのケースサイドが美しい!

▲ケース表面は手作業による研磨で滑らかに仕上げている

■ズレない! 止まらない!

「世界に誇れる最高級の腕時計」を目指して進化し続けてきたグランドセイコー。そのムーブメントは、かつて存在した機械式ムーブメントの精度を競うスイス天文台コンクールで何度も上位に選ばれるなどして、評価を高めてきた。一方、クォーツのほか、ぜんまいの解ける力をクオーツで制御する第3の駆動方式“スプリングドライブ”の採用で、ラインナップを拡充。

一度は生産中止となった機械式も、独自の厳格な精度基準を満たす「キャリバー9S」とともに1998年に復活を遂げた。今年はさらなる高精度を示す「V.F.A」モデルの復活が海外でも話題を集めている。デザイン面でも“純東洋的”と評価する声が多い。世界が認める日本のものづくり。グランドセイコーはその代表的な製品とも言えるだろう。

 

■多様化が加速する -グランドセイコーの最新モデル-

グランドセイコー
「SBGV245」(32万4000円)

シャープな造形とハイスペックが目を引くスポーツモデル。20気圧防水や16000A/mの耐磁性能、ねじロック式りゅうずなど、タフで実用性の高さが魅力だ。クォーツ式(キャリバー9F82)。ケース径40mm

 

グランドセイコー
「SBGJ233」(151万2000円)

複雑な表情を見せるジルコニア・セラミックスとブライトチタンを素材に使用したGMTモデル。力強いデザインで、丈夫さと軽快な装着感を両立した。機械式(キャリバー9S86)。ケース径46.4mm

 

グランドセイコー
「SBGA373」(58万3200円)

GSデザインの礎となった1967年発表の「44GS」。そのスタイルを踏襲した最新モデルだ。シンプルながら随所に高度な仕上げ技術が施され、洗練された雰囲気を漂わす。スプリングドライブ(キャリバー9R65)。ケース径40mm

 

>> [特集]ニッポン発の傑作モノ

 

本記事の内容はGoodsPress11月号52-56ページに掲載されています

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(取材・文/高橋智 写真/湯浅立志<Y2>)

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