最速はいつもNSRだった!レーサーレプリカの系譜①<ホンダ編>

■市販車初の“RR”を冠した「CBR400RR」

▲1984年式「CBR400F F3」(NC17)

CBRシリーズには400ccクラスのマシンも存在しました。こちらは当時人気だった「TT-F3」という、市販車2スト250ccと4スト400ccクラスをベースとするマシンで競われたレースでの勝利を目指し、開発されたマシンです。ルーツとなるのは、1984年に発売された「CBR400F F3」というモデル。「CBR400Fエンデュランス」にフルカウルを装備した特別仕様車でした。空冷ながら「REV(Revolution Modulated Valve Control)」と呼ばれた低回転では2バルブ、高回転では4バルブが作動するエンジンを搭載し、最高出力58psを誇ります。

▲1985年式「CBR400Fフォーミュラ3」(NC17)

翌年には軽量化を主としたマイナーチェンジを受け(型式はNC17のまま)、シングルシートを装備した「CBR400Fフォーミュラ3」も追加されます。

▲1986年式「CBR400R」(NC23)

そして翌1986年にはエンジンが水冷のカムギアトレイン4気筒となり、車名が「CBR400R」へと変更されます。フレームまでフルカバーされたカウルを装備し、一気に雰囲気が現代っぽくなります。

▲1988年式「CBR400RR」(NC23)

しかし、このスタイリングがレーサーっぽくなかったため、1988年に「CBR400RR」へと生まれ変わります(型式はNC23のまま)。カウルのデザインがレーサーイメージの丸目2灯式に。フレームも目の字断面のツインスパーとなり、マフラーまでアルミ製で乾燥重量162kgという軽さを実現していました。ちなみに、ホンダのスポーツモデルで見慣れた“RR”を車名に冠したのはこのモデルが初めてです。

▲1990年式「CBR400RR」(NC29)

そのわずか2年後にはフルモデルチェンジを受け、フレームから新設計に。ガルアームタイプの湾曲スイングアームを採用し、ホイールも前後17インチとなります。水冷式のオイルクーラーも装備し、カウリングのデザインもさらにレーサーっぽい“本気度”高めのマシンに進化しました。前モデルと車名の表記は同じですが、このモデルから「RR」の読み方が「ダブルアール」になりました(それまでは「アールアール」)。その後、1993年に自主規制値の変更で最高出力が53psに引き下げられますが、2000年まで生産は続けられます。

現行モデルにも「CBR400R」は存在しますが、このマシンは2気筒。4気筒の「RR」の登場を期待してしまうファンも多いのではないでしょうか?

 

■ホンダならではのV4エンジンを搭載した「VFR400R」

ホンダのレーサーレプリカで特筆すべきなのは、直列4気筒の「CBR」シリーズに加えて、V型4気筒の「VFR」シリーズもラインナップされていたこと。むしろ、こちらのほうがレースで活躍していたので、ホンダといえばV4というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

▲1986年式「VFR400R」(NC21)

「VFR400R」が登場したのは1986年。レースで活躍していた「RVF400」からフィードバックされたカムギアトレインの90度V4エンジンをアルミツインチューブのフレームに搭載していました。最高出力は59ps。ただ、この頃はまだデザインはツアラーっぽさが残っています。

▲1987年式「VFR400R」(NC24)

レーサーレプリカっぽさが増したのは1987年発売のNC24型から。このモデルから、プロアームと呼ばれる片持ち式のスイングアームが採用されます。元々、耐久レースでホイール交換が容易なことから導入されたレース生まれの技術。公道用モデルにどれだけのメリットがあったのかわかりませんが、レーシングマシンと同じルックスに胸を熱くしたライダーは多かったのです。

▲1989年式「VFR400R」(NC30)

レーシングマシンのようなルックスにさらに磨きがかかったのが1989年に発売されたNC30型。丸目2灯のカウルはレーサーイメージが高まり、マフラーも左出しとなったことでプロアームによるリアホイールの存在感が強調されています。外観だけでなく、中身にもレースの技術をフィードバック。カム駆動をダイレクト・ロッカーアーム方式にすることでヘッドをコンパクト化し、エンジン搭載位置を35mm前方に移動してホイールベースも30mm短縮し運動性能を高めています。エンジンもクランク角をトラクション性能の優れた360度とするなど、公道よりもサーキットを見据えているようなスペックに当時のファンはこころを踊らせたのです。

▲1994年式「RVF400」(NC35)

1994年には、ついに車名までワークスマシンと同じ「RVF400」に。フレームは剛性としなりを両立した新設計となり、フロントフォークも同社のレーサーレプリカとしては初の倒立式が採用されます。自主規制値の変更でエンジンの最高出力は53psとされているものの、キャブレターをバキュームピストン式とし、外気を直接導入するダイレクトエアインテーク・システムの採用など、これでもかというほどレース由来の技術が注ぎ込まれていました。

ただ、このとき既にレーサーレプリカブームは下火になっており、TT-F3のレースも廃止され、このマシンには活躍の場は残されていませんでした。ホンダのレースでの活躍を支えてきたV4モデルだからこそ、最後の集大成としてワークスマシンと同じ名を冠してリリースされたのかもしれません。このマシンは2000年まで販売されていましたが、以後ホンダからは400cc以下のV4エンジンモデルは登場していません。

*  *  *

最後にホンダのレーサーレプリカを語る上で欠かせないモデルを紹介しておきましょう。それが世界耐久選手権シリーズで2年連続チャンピオンを獲得した「RVF750」の技術をフィードバックした「VFR750R」(当時からRC30という型式で呼ばれることのほうが多いくらいでした)。

▲1987年式「VFR750R」(RC30)

エンジンにチタン合金製のコンロッドを採用するなど本気度の高いマシンで、今なおファンが多いことから、ホンダでは今年からこのマシンのリフレッシュプランを開始することをアナウンスしています。

▲RC30リフレッシュプランのWebサイトでは、当時のカタログをPDFでダウンロードできる

 


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文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

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