“後方排気”のTZRに個性が際立つ!レーサーレプリカの系譜②<ヤマハ編>

■ブームを牽引した「TZR250」

▲1985年式「TZR250」(1KT)

元々、2ストを得意としていたヤマハが1985年に送り出したのが「TZR250」。フルカウルをまとったスタイルと、同社の市販レーサー「TZ」とワークスレーサー「YZR」を合わせたようなネーミングは大きな支持を集め、レプリカブームの到来を決定的なものとします。

クランクケースリードバルブ式のエンジンをアルミツインチューブフレームに搭載するという形式もレーサーと同様。55万円という当時はクラス最高値のマシンでしたが、その戦闘力は圧倒的で、峠もサーキットもTZRであふれるという状況を巻き起こしました。

▲1988年式「TZR250」(2XT)

ライバルメーカーが“打倒TZR”を掲げて開発を加速させたと言われるほどの速さを誇りましたが、そのライバルたちの進化を受けて1988年にマイナーチャンジが行われます。外観こそ大きく変わっていませんが、エンジンはメッキシリンダー化され、点火方式はデジタルCDIに。ラジアルタイヤを装備し、型式名称も改められるという力の入ったモデルでした。デザイン変更がなかったことと、同年登場の“ハチハチ”「NSR250R」のインパクトが大きかったため、地味な存在ですがマニアの間では非常に評価の高いモデルです。

▲1989年式「TZR250」(3MA)

そして、1989年にはフルモデルチェンジ。エンジンは並列2気筒(パラツイン)のままですが、シリンダーを前後に引っくり返したような構造で、前方から吸気し後方から排気するストレートな給排気構造を採用します。この個性的な構造は“後方排気”と呼ばれ、これも「TZ250」からフィードバックされたものでした。

▲1990年式「TZR250」(3MA)

翌年には早くもマイナーチェンジされ、フロントフォークが倒立式となります。前年モデルがピーキーな特性だったことから、キャブレターが小径化され、扱いやすさが向上しました。市販車をベースとしたSPレース向けの「TZR250SP」が加わったのも、この年から。ちなみにシートカウルから飛び出た排気口は、高回転で官能的な排気音を奏でるものの、2スト特有の煙と細かいオイルを撒き散らすため、ツーリングに行くと最後尾を走らされたものでした。

▲1991年式「TZR250R」(3XV)

今でもマニアには人気の高い後方排気TZRですが、レースでは低い回転域からトルクを発揮するV型エンジンが有利だったようで、翌1991年にはV型2気筒となった「TZR250R」に進化します。このモデルも市販レーサー「TZ250」と同時開発され、クラス最軽量の126kg(乾燥重量)を実現。お互いのパーツが流用可能なほど、設計上の共通項が多い本物のレーサーレプリカでした。

▲1993年式「TZR250RS」(3XV)

ちなみに同時発売のSPレース仕様「TZR250SP」はシングルシート、乾式クラッチ、前後調整式サスペンションを装備しているのはもちろん、クロスミッションに専用フレーム、専用シリンダーを採用する超本気のサーキット仕様でした。そのため、乾式クラッチと前後調整式サスペンションのみを装備した「TZR250RS」というモデルも1992年から用意されました。当時の走り屋たちは乾式クラッチのカラカラという音に憧れたものです。

▲1995年式「TZR250SPR」(3XV)

その後、自主規制値の変更により最高出力は45psから40psにダウン。1995年には標準・RS・SPを統合した「TZR250SPR」に車名が変更されます。レプリカブームが収束に向かう中での統合でしたが、そんな中でも3重構造の排気デバイス(トリプルY.P.V.S.)を新たに採用。低回転から高回転まで高い出力を維持できるようになったための措置と頑なに主張したヤマハの心意気には拍手を贈りたいと思います。このモデルは1999年まで販売され、ほかの2ストモデルと同様に21世紀を迎えることなく姿を消しました。

【次ページ】4スト250の先駆者FZR

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