■中身はまさに“トレイル版・厚底カーボン”

では何がそんなにスゴいのか。心臓部は独自の“SpeedARC”システムと呼ぶミッドソール構造です。反発力のあるフォームと軽量なカーボンファイバー製のプレート“FlexPlate”を組み合わせていると聞くと、冒頭のマラソン用シューズと同じ発想ですよね。
具体的にはPEBAベースの“FloatPro レーシングフォーム”と耐久性に優れた“FloatPro フォーム”、そして“FlexPlate”を重ねた3層構造。硬いプレートとよく沈んで返るフォームを組み合わせることで地面を蹴った力を前へ返しやすくする狙いです。それを路面がデコボコで滑りやすいトレイル向けにチューニングしたのが、このモデルの肝。優れた推進力となめらかな乗り味を両立しつつ、不整地にもしっかり追従します。

アッパーにはケブラーを織り込んだ“Matryx”という頑丈な素材を採用。アウトソールは濡れた岩でのグリップに定評のあるVibram(ビブラム)の“MegaGrip Elite”です。足を包む部分から地面をとらえる部分まで山を全力で走るための“最高水準”をひととおり詰め込んだ、というわけです。
■さらに45周年のアーカイブカラーをまとって

そしてこのモデル、走りの中身だけでなく見た目にも仕掛けがあります。というのも本モデルはメレル創業45周年を記念したアーカイブカラーで登場するんです。
1980年代のブランド創業期を思わせる、鮮やかなブルーとネオンイエローをアクセントにしたカラーリング。なかなか攻めた配色ですが、このカラーは今後の“MERRELL 45 YEARS”コレクションにも受け継がれていく予定。これから同ブランドを代表するいろいろなモデルでこの配色を見かけることになりそうです。
■そもそもメレルって、こんなことまでやるブランド

ところでメレルに“ガチのレース靴”のイメージがあまりない人もいるかもしれません。それもそのはず、メレルは1981年にアメリカで誕生し、“It Starts Outside.”を掲げるモダンアウトドアブランド。ハイキングシューズの大定番「Moab(モアブ)」や、ロングセラーの「Jungle Moc(ジャングルモック)」など、どちらかといえば“気軽に履ける”モデルで知られています。
そんなブランドが片方では5年がかりでトップアスリート向けの最高峰も作っている。この振れ幅こそ45年続いてきたメレルらしさなのかもしれません。
サイズはユニセックスで22.5〜30.0cm展開。スモールサイズまでメンズ規格のラスト(=木型)を採用しているので、足の細い人はサイズ感を確かめておきたいところ。
もちろん、これはトレイルレースの最前線で戦うための一足。誰にでも必要な靴というわけではありません。それでもブランドが5年をかけて“全部やる”と本気で挑んだ最高峰がこんなに鮮やかな姿で登場する。遠い世界の話に思えても、その熱量に触れるとちょっと気になってくる。そんな一足になっています。
<文/山口健壱>
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