岡崎五朗の眼☆ついに決定!2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー。大賞候補車10台の実力を斬る

■実力モデルが目立つインポートカー

アルファロメオ「ジュリア」

アルファロメオの「ジュリア」は、同ブランドとしては久しぶりのニューモデル。しかも、往年の名車のネーミングや、FRという記号性を引っ提げての登場だ。

新生ジュリアのフォルムはとても美しい。サイドから見ると、ロングノーズに始まる美しいプロポーションに仕上がっていて、まさにFRセダンとしては理想的なカタチ。そしてフロントに回ると、中央にはアルファならではの“盾”をモチーフにしたグリルが鎮座。その下には横長のエアインテークが広がり、ボンネットには、盾型グリルを起点にVモーションのプレスラインが走る。まさに、ひと目でアルファだと分かるデザインだ。

そしていざ走り出すと、アルファらしい心地良い走りに心を揺さぶられる。中でも、エントリーグレードと「スーパー」が採用する2リッター直4エンジン+FRレイアウトという組み合わせは、フットワークが軽快で、実に心地いいエンジン音を聞かせてくれる。ハンドリングフィールに関しては、キビキビとした軽快感を重視したもの。この辺りはFRの良さ、アルファの魅力を実感させてくれる要素だ。

インテリアの仕立ても、個人的にはとても気に入っている。デザインや素材使いは、ひと目見てドイツ車との違いを感じられるもの。そして、車載カーナビをあえてインストールせず、AppleのCarPlayやAndroid Autoへの対応のみに割り切った辺りは、とても現代的でいい意味での合理性を感じさせる。

そんなアルファのFR(をベースとした)上級セダンを、446万円〜というプライスタグで買えるのは、相当魅力的。アルファというブランドに特別な思い入れはないけれども、ブランドのことを知っていて、かつ、ドイツ車以外のオシャレな上級スポーツセダンが欲しいという人にとっては、最良の選択だと思う。

>>アルファロメオ「ジュリア」

BMW「5シリーズセダン/ツーリング」

BMWがかつて掲げていたスローガン“駆け抜ける歓び”。アクセルペダルを踏んだ時やハンドルを切った際に「気持ちいい!」と感じさせるそんなクルマづくりを、新型「5シリーズ」は高いレベルで継承している。

メルセデス・ベンツ「Eクラス」やアウディ「A6」が直接的なライバルだが、特に直列6気筒エンジン搭載モデルなどは、エンジンの気持ち良さや、自然で思いどおりに曲がるハンドリングなど、走りの味という面でライバルを凌駕する。そこには、過去からの積み重ねや長年培ってきたノウハウがしっかりと息づいている。

BMWでは、経営陣やエンジニアはもちろん、経理の人間までが「BMWの使命は、オーナーに対して気持ちのいい走りを提供すること」という自社の価値を、しっかり共有できているのだろう。乗り味に対して、時間とコストをしっかり掛けるという、クルマづくりの目的やテーマがハッキリと感じられる。

かつては、BMWはメルセデス・ベンツよりもスポーティな走りやデザインを提供するブランド、というイメージが強かった。しかし近年、メルセデスがスポーティなクルマづくりへと舵を切った結果、旧来のBMWらしさというものは希薄になり、今では、Eクラスよりも新型5シリーズの方が乗り心地がいいと感じられるほど。そうしたポジショニングの変化は、新型5シリーズが誇る、クルマ全体の完成度の高さからもうかがえる。

>>BMW「5シリーズ セダン」
>>BMW「5シリーズ ツーリング」

シトロエン「C3」

「C3」のルックスはかなり個性的。というよりも、ボディサイドの“エアバンプ”やフロントマスクのデザインを見る限り、完全に“色モノ”といった立ち位置だ。

しかし、プロポーションをじっくり見てみると、2ボックスカーとして非常に健全であることが分かる。ルーフからリアピラーにかけての“重さ”がしっかりとリアタイヤに掛かり、フロントとリアのバランスも整っている。いろんな箇所にプレスラインを入れてフォルムのバランスの悪さをごまかしているクルマが多い中、C3はとても健全なカタチをベースに、流行りのSUVテイストをまぶし、シトロエン味に仕上げている。デザインオリエンテッドで使い勝手が悪いわけでは決してない。実用車としてきちんとつくり込んだ上で、遊び心を盛り込んでいるのだ。

インテリアも、決して高級ではないが、メーターパネルなどを見ると、きちんとデザインされているのが分かる。液晶パネルもしっかりデザインされていて、国産コンパクトカーのように、2DINのオーディオやナビをインストールするだけといった、無粋なことをしていない。随所に「シトロエンのベーシックカーはかくあるべし」という彼らの意図や目的がハッキリ見える、オトナが日常使いできる、とてもモダンなデザインクオリティを実現している。この辺りは、日本のコンパクトカーにもぜひ見習って欲しいところだ。

走りに関しては、特にロングドライブ時の直進安定性と静粛性が秀逸。サスペンションセッティングは、前後左右の車体の姿勢変化こそ大きいけれど、すごくしなやかで当たりが柔らかく、往年の名車「2CV」のように良好な座り心地のシートと相まって、フランス車、シトロエンの味わいをきちんと感じられる。仮に、そういったフランス車の個性を知らない人でも、ほかのクルマとの違いや、柔らかくて、静かで、気持ちいいといった魅力を、必ずや実感できるはずだ。

>>シトロエン「C3」

ボルボ「XC60」

近年、ドイツのプレミアムブランドのクルマは、機械としては確かに良くできているけれど、デザインやコンセプトにおいては、あまり新しさを提示できていないと思う。また機械としての良さも、1980~’90年代の頃ほど圧倒的ではなくなった。

そんな自動車業界において、ドイツ車以外の選択肢を探した際、ボルボというブランドはピタッとハマる。エクステリア、インテリアともにオリジナリティがあって、なおかつそれらがとても洗練されている。上質だけどドイツ車とは明らかに異なる魅力を備えているのだ。それらは、北欧伝統のテイストなのかもしれないが、日本を始めとする他の国の人にしてみたら、非常に新しさを感じるはずだ。

「XC60」の走りは、グレードによって結構違う。最上級グレードの「T8ツインエンジンAWD」は、ちょっと硬めのサスペンションセッティングで、ハンドリングもシャープ。キビキビ走ってとてもスポーティに感じられる。一方、日本に上陸する前にヨーロッパでドライブした仕様は、往年のボルボらしい、ゆったりとした味わいのモデルだった。個人的には、あの時ヨーロッパで乗った仕様が、日本にも導入されることを期待したい。

ボルボSUVの旗艦モデルである「XC90」は、確かに良くできたクルマだが、価格は高くてボディも大きい。その点、XC60は、日本で乗るには「これが上限」と思えるほどのジャストサイズで、価格もバリューに見合ったもの。実にいいところを突いている。特に、全く手抜きが感じられないインテリアは評価に値する。XC90よりも格下で、価格が安いモデルであるにもかかわらず「これではXC90の立つ瀬がないのでは?」と感じてしまうほど、しっかりつくり込んであるのだ。どのクラスに対しても「プレミアムメーカーとして下手なモノは出せない」という、ボルボの強い信念が感じられる。

>>ボルボ「XC60」

フォルクスワーゲン「ティグアン」

ヨーロッパでいう“Cセグメント”のSUVは、世界的に見て、今、最も売れ線のカテゴリー。その中で「ティグアン」は、「やっぱりフォルクスワーゲンはいいね」と実感させてくれるクルマだ。

四角いフォルムのためラゲッジスペースの容量は十分。しかも、インテリアの質感は高く、リアシートは広い。さらに、乗れば乗ったで、独自のトランスミッション“DSG”や、直噴ターボエンジン“TSI”による気持ちのいい走りを味わえるなど、パワートレーンも洗練されている。おまけに、最新のコネクティビティもしっかりカバーするなど、平均点が高く、そつがないクルマに仕上がっている。

まさに、すきのないティグアンだが、ライバルと比べると、ちょっと遊び心が足りないように感じる。でもそれこそが「Theドイツ車」、「Theフォルクスワーゲン」の味わいではないだろうか。そういった意味では、SUVというジャンル自体に真新しさ、魅力を感じている人にとって、相当魅力的なクルマに映るはず。逆に、SUVのバリエーションが充実してきた昨今、SUVの中でもどのクルマを選べば他の人と差別化を図れるか、と考えている、ちょっとトガッタ人は、物足りなさを覚えるかもしれない。

>>フォルクスワーゲン「ティグアン」

(文/岡崎五朗)


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