走るステージを選ばない!トライアンフ「スクランブラー1200XC」はオンもオフも楽しめる

■見た目だけじゃない! 本気のオフロード走行にも対応

トライアンフといえば、スクランブラーの元祖というべきメーカー。同社は1940〜’60年代に、「TR」シリーズで多くのオフロードレースに勝利。TRシリーズは、俳優のスティーブ・マックィーンが愛用していたことでも有名なバイクで、映画『大脱走』の劇中でジャンプするバイクは、1962年式の「TR6 650トロフィー」というモデルでした。

そして2006年、トライアンフはそのイメージを受け継ぐ新世代のスクランブラーを市場投入。今なお続くブームの起点となりました。

トライアンフの現行ラインナップには、900ccの「ストリート・スクランブラー」というモデルがありますが、こちらはその名の通り、ストリート(舗装路)での性能を重視したモデル。それに対し、2019年3月に発表された「スクランブラー1200」は、本格的なオフロード走行にも対応するモデルとなっています。

本気のオフロード走行を意識したバイクだと感じさせるのが足回り。フロントホイールはオフロード車と同様の大径21インチで、サスペンションのストロークもたっぷりとられています。スクランブラー1200には「1200XC」と「1200XE」というふたつのグレードが用意されますが、ベースグレードの1200XCは200mm、ハイスペックな1200XEでは250mmという、オフロード車に匹敵する前後ストロークを誇ります。

エンジンは、トライアンフが得意とするバーチカルツイン=並列2気筒で、最高出力90馬力、最大トルク11.2kgf-mを発生。マフラーはアップタイプの2本出し仕様で、路面とのクリアランスを大きく取ることで、オフロード走行に対応しています。

このマフラーから吐き出されるエキゾーストノートは、かなり迫力のある音で、メーカー純正とは思えないほど。ライダーに近い位置に排気口が位置していることもあって、走行中の気分を高めてくれます。

またがってみると、サスペンションの沈み込みが大きいとはいえ、840mmというシート高はかなり高め。身長175cmの筆者でも、両足のつま先がようやくつくくらいですから、小柄な人は不安を覚えるかもしれません。しかも、車重は225kgと重めです。とはいえ、車体バランスが良好なのか、片足で車体を支えるのも怖くありませんでした。

なおハンドル幅は、840mmと完全にオフロード車のスペックです。

■ブレーキはオンでもオフでも素晴らしい効き

「さぞかし重心の高いバイクだろう」と予想していましたが、走り出してみるとそうした印象は受けません。上体が起きたライディングポジションと、ハンドル幅が広いこと以外、オンロードマシンと大差ないフィーリングです。

1200ccの排気量に対して「細いのでは?」と感じていたタイヤも、グリップ感を把握しやすく、峠道でもかなり思い切ったライディングを楽しめました。サスペンションがよく動くため、車体の挙動をつかみやすいのと、抑えの効くハンドル幅のおかげでしょう。正直なところ、これほどオンロードが楽しいバイクとは思っていなかったので、うれしい誤算でした。

高速道路を走っても、スクランブラー1200XCは非常に安定しています。直進安定性が高いので、高速でのクルージングも得意。エンジントルクに余裕があるため、追い越し加速時も、ギヤはそのままでアクセルをひとひねりすれば十分です。ただし、上体が起きたライディングポジションとカウルレスの車体のため、風をまともに受けます。カラダへの負担を考えると、スピードを出してかっ飛ばすような走りよりも、一定速で巡航する方が向いているように感じました。

「オフロードでの走破性はどうだろう?」と、未舗装の林道に乗り込んでみたのですが、砂利が敷き詰められているような路面であれば、何の問題もなく走破できます。ただし、最新世代のバイクらしく、トラクションコントロールが装備されているため、リアタイヤが滑り出すと駆動力が伝わらなくなり、前に進みません。そんな時は、5種類のライディングモードの中から「オフロード」モードに切り替えるか、トラクションコントロールをオフにする必要があります。

とはいえ、これだけトルクフルなマシンでトラクションコントロールを完全オフにするには、勇気が必要。なので、適度に駆動力をコントロールしてくれるオフロードモードを選択する方がお勧めです。

重量級の車体と、完全にオフロード用ではないタイヤを履いているため、未舗装路でコーナーを攻めるような走りには向きませんが、結構ぬかるんだ箇所や、轍(わだち)の深い路面でも、特に苦もなく走破できました。ツーリングへ出掛けた先で未舗装路に出くわしても、迂回することなく通過できるのは、長距離ツーリング好きのライダーにとって、ありがたいのではないでしょうか? もちろん、ブロックが高いオフロード向けタイヤに交換すれば、より激しい走りにも対応してくれそうです。

そして今回、さまざまなコースでスクランブラー1200XCを走らせてみて「スゴいなぁ」と感心させられたのが、ブレーキの素晴らしさ。ダブルディスクでラジアルマウントのブレンボ製モノブロックと、ハイスペックなブレーキは「オフロードでは効きすぎるのでは?」と思いきや、非常にコントローラブルで安心して握ることができました。もちろん、オンロードでの効きも良好。これは、車体やサスペンションとのマッチングがきちんとチューニングされているからでしょう。

オフロードでも走りを楽しめて、オンロードでの走行性能もハイレベルなスクランブラー1200XCは、新時代の“リアル・スクランブラー”と呼べるだけの完成度を誇ります。走るシーンを選ばず、どんな道でも楽しみたいライダーにお勧めの1台です。

<SPECIFICATIONS>
☆スクランブラー1200XC
ボディサイズ:L2285×W840×H1200mm
車両重量:225kg
エンジン: 1200cc 並列2気筒 SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:90馬力/7400回転
最大トルク:11.2kgf-m/3950回転
価格:188万7000円

(文&写真/増谷茂樹)


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