トヨタ「ハリアー」のシンボル“タカのエンブレム”はどこへ消えた?☆吉田由美の眼

■ハリアーのイメージは“夜”と“ライオン”

2020年6月17日、トヨタの4代目「ハリアー」が発売されました。2020年1〜6月までの上半期に、グローバル市場で約42万6000台を販売した人気車「RAV4」とプラットフォームを共有する兄弟車で、パワートレーンは“ダイナミックフォースエンジン”を始めとするトヨタの最新世代に全面刷新されています。

ハリアーといえば個人的に記憶に残るのが、初代のテレビCM。1997年、高級クロスオーバーSUVの先駆けとして誕生したハリアーにふさわしい、強烈なインパクトのある作品でした。「トヨタとしても気合が入ったモデルなんだな」というのは、そのバリエーションの多さからもうかがえましたが、中でも印象的だったのは、夜、ホテルに横づけされたハリアーから降りてくる“紳士のライオン”バージョン。そのせいか、私にとってハリアーというクルマは、“夜”と“ライオン”のイメージなのです。

初代ハリアー

新型ハリアーには、頭上のガラス製ルーフが、ワンタッチですりガラスからクリアなガラスに変化する“調光パノラマルーフ”が用意されています。

これは頭上にあるスイッチのほかに、「星空を見せて」といった音声コマンドでも操作できるユニークな装備。“夜のハリアー”というイメージは新型でも健在のようです。

■チュウヒのエンブレムはフロントドアの内張りに

さまざまな部分が一新されている新型ハリアーですが、中でも最も変わったのは、フロントに掲げられるエンブレムかもしれません。初代から3代目まで、歴代ハリアーのフロントマスクには、タカ科の動物“チュウヒ”をモチーフにしたエンブレムがあしらわれていました。

しかし新型ハリアーでは、フロントマスクからチュウヒの姿が消え、ほかのトヨタ車と同じトヨタエンブレムが付いています。今回、チュウヒのエンブレムが消えた謎について、新型の開発リーダーである小島利章さんにうかがいました。

小島利章氏

−−歴代ハリアーにはチュウヒのエンブレムが装着されていましたが、新型はトヨタのエンブレムへと変更されたんですね。何か理由があったのですか?

小島:過去3世代のハリアーは、縦横比などを時代に合わせて変えながらも、チュウヒのエンブレムを継続採用してきました。しかし新しい4代目は、日本だけでなくグローバルマーケットにも挑戦していきたいとの思いから、心機一転、エンブレムもトヨタのマークへと変更しています。これまでハリアーは国内専用車種でしたが、新型からは北米でも「ヴェンザ」のネーミングで販売されるのです。

ヴェンザ(北米仕様)

−−チュウヒのエンブレムに対するユーザーの評価はどうだったのですか?

小島:ハリアー=チュウヒのエンブレムというイメージは強く、高い評価をいただいていました。しかしそれ以上に、今回は「グローバルでハリアーを成功させたい!」という私たちの思いが強かったのです。

−−フロントマスクからチュウヒのエンブレムはなくなってしまいましたが、その代わり、フロントドアの内張りにチュウヒのエンブレムが型押しされていますね。

小島:実はあれ、きれいに型押しするのが難しかったんですよ。開発途中まで、フロントマスクにチュウヒのエンブレムを残そうか、という話もあったのですが、日本っぽい、アジアっぽいテイストのエンブレムだけに「北米市場で受け入れられるのか?」という議論になりました。そのため、新型ハリアーのカタログとドアトリムへの型押しだけに留めたのです。このドアトリムの型押しは、北米仕様のヴェンザにはありません。

実は先代にも、ドアにチュウヒの姿を刻印していたのですが、新型のものとは形状が微妙に異なります。型押しはセンス次第で見え方が全く異なるため、新型ではこの部分においてもクラフトマンシップにこだわりました。そのおかげで、イメージ通りのラウンドしたチュウヒの表情が出せたと思います。

なるほど。エンブレムひとつとっても、新型ハリアーはモノづくりへのこだわりが息づいているクルマなんですね!


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文/吉田由美

吉田由美|モデルや国産車メーカーのインストラクターを経てカーライフ・エッセイストに転身。独自の視点によるクルマまわりのエトセトラについて雑誌やWebメディアに寄稿するほか、多くのテレビやラジオ、YouTubeに出演。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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