ニッポン珍味紀行〜青森県「いがめんち」の魅力を探る

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二軒目に訪ねたのは「自然房 万作庵」。弘前市内から少し離れた、山の中にぽつりと一軒店がある。ここ、かなり隠れ家的な場所にあるのだが、お客さんはひっきりなしに来る。自家で挽いた手打ち蕎麦がたいそう美味しくて人気なのだ。お蕎麦屋さんが作るいがめんちってどんなものなのだろう??

 

山の中にある一軒家。辺りはのどかな風景が広がる

店内。天気の良い日は窓の外から岩木山を眺められる

店内。天気の良い日は窓の外から岩木山を眺められる

 

「まずは食べてみて」と出された一品は、見た目はまるでパウンドケーキみたいだった。作る人によってこうも違うとは! そして蕎麦粉が入っているせいか、香りがよくとても芳ばしい。

 

いがめんち。見た目が全く違う

いがめんち。見た目が全く違う

ホクホクとしていて、蕎麦の香りがしっかりと芳ばしい

ホクホクとしていて、蕎麦の香りがしっかりと芳ばしい

 

ここでの作り方のポイントは、蕎麦粉と蕎麦の実を入れること。蕎麦屋らしいいがめんちを、ということで、店主がオリジナルで考案したものだ。蕎麦粉は店で挽いた自家製のものに、蕎麦の実も一緒に入れるので、香りが立ち、カリカリの食感を楽しめる。そして味付けにはオリジナルの本返しを使っている。これも蕎麦屋らしい試みだ。イカゲソは本返しに10〜15分漬け込むことでイカの臭みが取れ、香ばしく仕上がるそうだ。

 

材料には蕎麦粉と蕎麦の実も入っている

1.材料には蕎麦粉と蕎麦の実も入っている

細かく切ったイカは本返しで漬ける

2.細かく切ったイカは本返しで漬ける

 

イカのすり身に細かく刻んだキャベツ、玉ねぎを加えてよく混ぜる。蕎麦の実、蕎麦粉を加えて混ぜ、空気が入らないようしっかり型に詰めて、40分ほど蒸す。まるでミートローフみたいな感じである。冷めたらケーキのように切り分け、低温で揚げる。きつね色に軽く焦げ目が付いたら出来上がり。蕎麦屋なので天ぷらなども作るが、いがめんちは別の鍋を使い、専用の油で揚げている。夜に来る常連のお客さんには、これをオーブンで焼いてみたり、パン粉をまぶしてカツのように揚げたりして提供することもあるそうだ。

材料をよく混ぜる。野菜から出る水分を粉で調節

3.材料をよく混ぜる。野菜から出る水分を粉で調節

型に詰める。隙間ができないように、ヘラでしっかりと整える

4.型に詰める。隙間ができないように、ヘラでしっかりと整える

一旦、蒸し器で蒸し、ほっくりと中まで火を通す

5.一旦、蒸し器で蒸し、ほっくりと中まで火を通す

 

ちなみに店主の我妻さんは青森出身ではなく、宮城出身だそう。宮城には「イカニンジン」というイカとニンジンの漬物のような郷土料理があるが、いがめんちはこちらに来てから知ったそうだ。オープン当初から出しているけれど、蕎麦屋らしいオリジナルを作りたい、と試行錯誤したという。今では人気商品だが、こちらもやはり作るのが大変なので、いつもあるとは限らない。また、出すとすぐに売れてしまうそうなので、食べられたらラッキーである。

我妻さん夫妻。蕎麦好きだったご主人が蕎麦修行した後、津軽の環境に惹かれて移り住み、開業。夫婦で店を切り盛りしている

左は店主の我妻さん。蕎麦好きで蕎麦修業した後、津軽の環境に惹かれて移り住み、開業

 

取材した上記2店は、どちらも店主がオリジナルにこだわり、素材等を吟味し、かなり手をかけて作っていることがわかった。また弘前出身であってもなくても、いがめんちに対して愛情を持ち、郷土の料理への想いを込めて作っている。

いがめんちを作っている総菜店を訪ねる

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