【日産 ノート e-POWER試乗】違和感なしに乗れる“マイ・ファースト・EV”への最適解

e-POWERのパワーユニットは、1.2リッターの直列3気筒エンジン(79馬力/10.5kg-m)と発電機、駆動モーター(109馬力/25.9kg-m)とインバーターを組み合わせたもの。ガソリンエンジンはもっぱら発電に従事し、クルマの駆動は、電気モーターが全面的に請け負います。

日産 ノート e-POWER

ガソリンエンジンは、回転を上下させるより、一定回転で回り続ける方が効率がいい。そこで、必要に応じ、できるだけ無駄のない回転数で発電機を稼働させ、前席下に置かれた小型のリチウムイオンバッテリーを充電します。

このバッテリーは、いわばバッファー的な役割も負っています。e-POWERの駆動モーターは、バッテリーに蓄電された電気で動きますから、多少、クルマの速度が変わっても、その都度、ガソリンエンジンが回転数を変える必要はない。つまり、高効率を維持できるわけです。

…と、ここまで読んで「なーんだ“シリーズ式ハイブリッド”じゃないか」と看破した、クルマ好きの方もいらっしゃるでしょう。e-POWERは「つまり、ノート ハイブリッドでしょ?」と。

「違います」と、日産の開発陣は応えます。「e-POWERは、新しい電動パワートレインなのです」と。

説明しましょう。ハイブリッド競争に乗り遅れた…(失礼!)日産は、より先を見据え、電気自動車に注力しています。期待のピュアEV「リーフ」が市販されたのは、2012年のこと。

静かで、スムーズで、意外に力強く、何よりクリーン…と、EVはいいことづくめなのですが、航続距離が限られる。より突き詰めると、充電に時間がかかる、という欠点があります。もちろん、日産の技術者の皆さんも、そんなことは重々承知。リーフの開発と並行して、解決策を模索してきました。

<解決策01>
基本的にEVとして使用する。ただし、緊急用の小型発電機を積んで、バッテリー残量がいよいよピンチになったら、これを稼働させる → いわゆる“レンジエクステンダー”方式ですね。日産は、2011年にはすでに、この方式の実用化のめどを立てていたといいます(市販化はされていません)。

<解決策02>
せっかく発電機を積んでいるのだから、重く高価なバッテリーを小さくて、必要に応じて小まめに発電機で充電する → この考えを具体したのが、今回のe-POWERです。

個人的には、<解決策03>として、有無をいわさぬ大容量バッテリーを積み込んで、1日の行動範囲をカバーする(テスラの高級EV路線が、コレに当たりますす)…もアリだと思うのですが、これは「EVを大衆の手が届く価格に抑えたい」という日産の基本ポリシーに反するようです。

ご参考までに、ハイブリッドカーからのアプローチを記します。モーターがエンジンを補助する“パラレル方式”(基本的には、エンジンがクルマを駆動します)、エンジンとモーターが協力し、時には個別でクルマを動かす“シリーズ・パラレル方式”、どちらにも、ハイブリッド用のバッテリーが積まれます。

せっかくシステムにバッテリーが含まれるのだから、バッテリーをもう少し大きくし、外から充電できるようにしたら「EVとしても使えるんじゃね?」。 → その考えを発展させたのが、最近流行りの(!?)“PHEV(プラグインハイブリッド)”です。上記の<解決策01>と、アプローチは異なれど、システムとしての考え方は重なりますね。

PHEVの方針を押し進めると、上記の<解決策02>、つまり、エンジンが発電機を回し、その電気を使ってモーターがクルマを走らせるシリーズ式ハイブリッドにたどり着きそうです。が、今のところ、そうはなっていません。エンジンによる発電効率の問題、車重が増加しがちなこと、一般的に電気モーターは高速走行が苦手、などの課題がまだまだあるようです。

では、アプローチは異なれど、システムとしては同じ仕組みを採るノート e-POWERの場合はどうでしょう!?

日産 ノート e-POWER

…スイマセン、ちょっと話題がズレましたが、e-POWERは、EVのネガを補完する仕組みを検討した過程で誕生したシステムであって、ガソリン車のノートをハイブリッドモデルにしたのではない、というのが、日産の主張です。姿カタチは似ていても、実は別物。一種の収斂進化の結果、といいたいのです。

日産としては、今ひとつ火が付かないEVの普及に、ノート e-POWERが弾みをつけてくれるのでは? と期待しています。あまりEVに目を向けてくれない、特に地方ユーザーの方々に「まずはEVを体験していただきたい」と日産のエンジニアは語ります。ピュアEVへの架け橋、愛車電動化への最初の一歩として、ノート e-POWERを機能させたい…。そう考えているのです。

■特別感が薄い運転感覚こそe-POWERの美点

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