【プロダクトヒストリー】炊飯器~連続沸騰で美味しさが進化~

▼業界初コンパクトボディ、オールプラスチック採用「三菱ジャー炊飯器 NJM-B10T」/1986年(昭和61年)発売

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▼業界初、角型タイプ「NJ-Aシリーズ」/1988(昭和63)年

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「それまで炊飯器のボディは、鉄製というのが当たり前でしたが、この時代についに、樹脂製のモデルが登場しました。これは一世を風靡したタイプで、内釜が四角になっています。四角にすると釜がクルクル回らないので、ご飯をお茶碗によそいやすい。また、面積も広くとれますから、当然、釜の容量も増えるんです」

ワンプッシュオープンの蓋や、プラスチックのボディ…。もう炊飯器のカタチとしては、すっかりお馴染みのもの。違和感はありません。

▼沸騰継続式炊飯方式「沸騰タイプ NJ-HAD」/1998(平成10)年

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「従来の電気釜タイプでは、吹きこぼれる前にマイコン制御で火力を落としていました。つまり“初めチョロチョロ中パッパ”ではなく、本来ならアクセルを踏まなければいけないところで逆に火力を落としてしまうので、美味しくなかったんですね。

そこで発想を切り替え、三菱電機では最初に“カートリッジ”の中に吹きこぼしを起こさせることにしました。火力を弱めるのではなく、どんどん拭きこぼさせてしまえば火力を強められますよね。それが “沸騰継続式炊飯方式”だったのです」

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上部カートリッジ内にどんどん拭きこぼさせることで、火力を強めるという新方式が生まれた

▼コンパクトステンレスボディ「大沸騰IH NJ-BE」/1999(平成11)年発売

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「その後、こちらのタイプに変わっていきます。ボディにステンレス素材を採用した家庭用の炊飯器も、実は三菱電機が第1号(それまでも業務用としては存在)。堅牢かつ清潔な上、デザインもスッキリしました。この辺りから、ボディ形状が四角から丸へと回帰していきます。

四角のモデルにも美点はあったのですが、量産性に欠けていました。ただすでに『四角のボディは効率がいい』というのは学んでいましたので、後々、再登場させることになります」

この頃になると、炊飯器にもIH(インダクション・ヒーティング)機構が採用され、一気に世間へと浸透していったそうです。ただやはり、まだまだマイコン制御で火力を抑えるモデルが大半だったので、“吹きこぼし”の技術を発展させていったのは、三菱電機だけだったとのこと。

▼“激沸騰”を起こすIHジャー炊飯器「本炭釜 NJ-WS」/2006(平成18)年発売

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「2006年3月に、炭製の内釜を採用したモデル『本炭釜』を販売しました。業界初となる10万円クラスの商品です。当時、炊飯器の価格は4万9800円くらいが上限でしたが、本炭釜は非常に評価が高く、高価な価格設定にもかかわらず売れました。色も“漆黒”と“白金”という名前をつけ、高級感と和のイメージを打ち出しています。ちなみに、内釜にはレーザー加工でシリアルナンバーが入っていたのですが、これも業界初の試みでした」

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10万円と高価だったため、商談では本当に苦労したとのこと。しかし「試食していただくと、その味に納得してもらえたんです」と、飯田さんは当時を振り返る

「正直、高価なのには理由があります。例えば、炭釜の素材、材料をつくるだけで、約100日もかかるんですね。

簡単に製造工程を説明すると、30日間は1250℃の温度で醸成。それを2回繰り返すことで、計60日間。さらに、純度を高めるために不純物を取り除きます。結局、99.9%の炭にするために、30日間3000℃の温度で結晶化させるんです。つまりこれだけで、計90日間も費やすことになるのです」

90日間の製造工程、すごいです…。確かに、高価になる理由も分かります。しかし、そこまで“炭”にこだわる理由とは、一体なぜなのでしょうか。

「炭という素材は、IH加熱と非常に相性がいいんですよ。ご飯を炊く際、釜の中に水を入れますよね。その水が触れている内釜の内面までIHが直接温められるのは、炭釜だけなんです。鉄やステンレスといった他の素材でできた釜では、IHを使っても表面しか熱くすることができません。釜の外側が熱くなり、その熱を伝えることで釜の内側が温まるので、“直”に温めているわけじゃないんです。

でも、炭なら磁力線が中まで浸透してくれるので、釜全体が発熱します。だからIHとの相性がバッチリなんです。釜肌まで直に熱くなりますから、水が瞬時に気化します。そうすると、大きな泡が出てくる。ですから当時 “激沸騰”というネーミングを付けたのです」

■さらなる沸騰を求めて“蒸気レス”が誕生する!

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