新しいアイデアを考えなければならない。何かを生み出したい。
仕事で、自分だけの創造物などを生み出すとき、そう思う一方で「自分には創造力がない」と感じたことはありませんか?
そんな人にこそ訪れてほしい場所があります。『カップヌードルミュージアム 横浜』は、インスタントラーメンの歴史を学ぶだけの施設ではありません。取材して見えてきたのは、「創造力とは特別な才能ではなく、誰もが持っているもの」というメッセージでした。
◾️まだ世の中にないものを考えられますか?
▲「エントランス」は圧巻の眺め! いざ、創造の世界へ。佐藤可士和さんが総合プロデュースしているだけあり、洗練され、シンプルな中にクリエイティブな楽しい仕掛けがある
館内に足を踏み入れると、まず圧倒的な解放感に包まれます。それは5階分を吹き抜けにした高さ24mものエントランス。上に突き抜ける白い壁、緩やかな階段をゆっくりと登っていくたびに感じるワクワク感。その様はまるでまっさらな気持ちのよう。これから創造性に触れていく期待感が高まっていきます。
▲今回案内いただいたのは、日清食品ホールディングス、広報部の太田博泰さん
展示を見進めるうちに気づきます。ここで伝えたいのは商品の歴史だけではなく、「なぜ生まれたのか」「どんな課題を解決したのか」「どんな試行錯誤があったか」という発明の背景。世界初のインスタントラーメンを発明し、世界の食文化を革新した日清食品の創業者、安藤百福氏の思考・発想力を学んでいきましょう。
◾️世界初は“ひらめき”と“執念”から生まれた
▲「百福の研究小屋」を覗く外国の方々も多く見られた。「チキンラーメン」開発当時の研究小屋を、当時使っていた調理道具などと共に忠実に再現している
現在では当たり前となったインスタントラーメン。しかし開発当時は前例がありませんでした。「いつでも、どこでも、手軽に食べられて、家庭に常備できるラーメンをつくりたい—」と考えた安藤氏。
1950年代半ば、日本は高度経済成長への道を歩み始めていた頃、安藤氏は自宅裏庭の研究小屋に籠り、研究を続けました。さまざまな事業を展開しては成功も失敗も経験した後、当時はほぼ財産のない状態。小屋に特別な機材はなく、ありふれた道具とアイデアだけで研究を続けた様子が「百福の研究小屋」で見ることができました。
▲「百福の研究小屋」に再現された試作風景
研究の際、安藤氏は5つの目標を定めました。「おいしいこと」「保存性があること」「簡単に調理できること」「安価であること」「衛生的で安全であること」。その根底にはいかに人の暮らしを豊かにするものを作れないかという考えもありました。
「この目標は今の日清食品の商品開発の基本原則にもなっています。安藤は『チキンラーメン』を発明した当時48歳。当時の男性の平均寿命が65歳ほどと言われていたので今の平均寿命から考えるとだいぶ高齢ですよね。しかも1日平均4時間という睡眠時間で1年間1日も休まず研究に没頭したんです」(太田さん)
開発で最大の難関だったのが、麺をいかにして乾燥させ、常温で長期保存を可能にするかでした。失敗の連続、試行錯誤の毎日を送る中、奥様が天ぷらを揚げているのを見て、麺を油で揚げることで乾燥させる「瞬間油熱乾燥法」のヒントを得ます。天ぷらの衣の水分が高温の油で外にはじき出され乾燥する原理を麺にも応用し、お湯をかけるだけで短時間で戻る、長期保存が可能な麺が開発されました。
▲当時のメモを再現したもの。そこには「ああ、ねむたい」という文字も
アイデアは突然降ってくるとよく思われがちですが、実際は日常のできごと、ささやかな行動を見つめ続けた先に生まれるものなのかもしれません。
◾️圧巻のパッケージ展示が教えてくれること
▲「インスタントラーメン ヒストリーキューブ」の入り口。館内は全体に「カップヌードル」のカラー、白と赤で統一されている

そうして生まれたインスタントラーメンのパッケージを展示しているのが、「インスタントラーメン ヒストリーキューブ」。壁一面に歴代商品3000点以上が並ぶ姿は、圧巻の一言! 懐かしい商品を発見すると、テンションも上がります。
最初はもちろん、1958年に誕生した世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」。
「パッケージに卵型の窓があると思うんですけどなぜだかわかりますか? 当時、世界中の誰もがインスタントラーメンというものを知らなかったので、中身を見ていただけるようにこういうデザインになっているんです」(太田さん)。そして認知が上がるうち、窓のない今のデザインに近づいていったそう。
▲大量に展示された「カップヌードル」に圧倒される
1971年に発売された世界初のカップ麺「カップヌードル」は、今年で55周年。意外だったのが、シーフードヌードルよりも先にチリトマトヌードルが作られていたこと。そして、カップの素材やフタのタブが変わったものの、デザインの大きな変貌がない。そこも愛され続ける秘訣のように思います。
驚くのは同じブランドでも味・パッケージ・コンセプトが多種多様なこと! 世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」の次に「千金蕎麦」を生み、冷麺の「チキンラーメン ニュータッチ」、「日清焼そば」、即席麺のスパゲッティ「スパゲニー」、「出前一丁」、「日清のどん兵衛」など、様々な商品が続々と生み出されてきました。時代や消費者のニーズを探り、さまざまな試みを繰り返し生み出していくこと。その背景には、ヒット商品を作るだけではなく、根底に人々の暮らしを豊かにできないか、という思いがあったのだと思います。
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