観光客でにぎわう奈良公園から少し離れた、ノスタルジックな船橋商店街。
通りに店を構えるのは、築80年の薬局をリノベーションしたカフェ『Cafe&Bake Allons Bien(アロンビアン) 』。カフェと知らなければ通り過ぎてしまうくらい、外装も看板さえも薬局のまま。その姿は懐かしいのに、なぜか新しく見えるから不思議です。
道行く人たちが店をのぞき込んでは笑顔になる。そんな商店街のふしぎなカフェの正体を紐解いていきます。
◾️古いものをそのまま残したいという思いから生まれた「薬局カフェ」
▲可能な限り薬局の面影を残したという店内は、一歩足を踏み入れると不思議な感覚に襲われる
「コンセプトカフェを作ろうという意図は全くなくて、歴史ある姿を残したいと思いながらリノベーションした結果がこの店なんです」と笑うのは、店長でパティシエの大東綾さん。
外観のみならず、店内も薬局の面影がそのまま。薬棚、調剤室とそこに並ぶビーカー、「胃腸薬」などの文字たちさえもそのまま残っています。
間違って入ってしまったかな? と一瞬考えてしまうほど「薬局」なのです。
▲数軒隣のフレンチレストラン『POOL』も、下駄屋さんだった店舗をリノベーションしたレトロ感あふれる店だ
アロンビアンを運営するのは、9年前にオープンしたというフレンチレストラン『Cafe&Restaurant POOL(プール)』。ミシュランガイドにも掲載された人気店で、大東さんも開店当初からパティシエとして腕を振るってきました。
そこに客として通っていたのが、数軒隣の薬局の店主でした。「あるとき、閉店して建物も取り壊すと聞き、それならば譲ってほしいとプールのオーナーが頼み込んでこのお店が生まれたんです」と大東さん。
◾️食でつなぐ「アート」と「まち」への思い
▲調剤室・実験室とかかれたガラスの向こうには、ビーカーとグラス類が一緒に並ぶという遊び心
1階が薬局で2階が住居だったという建物のリノベーションは、可能な限り「残す」ことを優先したそうです。80年の建物が持つ風情をなるべく生かしたいと、看板や薬棚、調剤室などの設えはあえてそのままに、調剤スペース奥の台所とお風呂だった場所が厨房になっています。
建物を残すために厨房設備を建物にあわせてオーダーメイドするなど、実はリノベーションはお金も時間もかかるもの。「それでもこの建物を残したい」というこだわりには、商店街という「まち」への思いも感じられました。
▲薬棚には焼き菓子やジュースなどが並び、ミスマッチなはずなのにレトロな雰囲気がよく似合う
薬棚には焼き菓子やドリンクなどが並びます。ミスマッチなはずなのに、レトロな色合いと雰囲気がよく似合っています。
1階で注文したら、リノベーションしたときに取り付けられた階段を上り、2階のカフェスペースへ。
▲アンティーク家具とアート作品が彩るカフェスペース
もとは居住空間だったという2階は、壁が取り除かれ、ワンフロアのカフェスペースに生まれ変わっています。古民家の雰囲気が残る室内を、アンティーク家具とアート作品が彩ります。ひとつひとつ形も色も異なる椅子とテーブル、どこの席にしようかと考える時間もワクワク感を盛り上げます。
そして、壁に飾られたアート作品は購入することができるそうです。
「頑張っている人たちを応援したい」と、不定期に開催されるワークショップや、ギャラリーとしての活用もされているそうで、取材に伺った日も、店の前で絵を描いているアーティストさんがいらっしゃいました。
▲伺った日にも店の前で絵を描いているアーティストさんが。今、店内に飾られている絵は彼の作品だそう
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