もっと軽く、手間いらずの掃除機を目指して・パナソニック サイクロン式掃除機 MC-SR530G

パワフルな吸引力を備えるサイクロン式のメリットはそのままに、より扱いやすいコンパクトサイズで2012年の発売以降、人気を博してきたパナソニックの掃除機「プチサイクロン」シリーズ。そこからさらなる進化を遂げるために、パナソニックが着手したのは、手入れが少なくて済む“手間いらず”な掃除機を実現することだった。

単にパワフルなだけでなく、私たちのライフスタイルに馴染む"日本のサイクロン式掃除機"。それを追求するカギは、新モデル「MC-SR530G」で採用された、パナソニック独自のふたつのメタル部品による新たなサイクロン構造“ダブルメタル”にあった。

■理想の掃除機、最後のキーワード「手間いらず」が実現するまで

掃除機に対するユーザーの要望は「小型軽量」「ゴミ取れ性能」のふたつ。そしてもうひとつ「手間がかからない」ことが求められた。理想の掃除機を実現する最後の一手とも言える「手間いらずな掃除機」は、どのようにつくられたのか。開発に関わったキーマンに話を聞いた。

 

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【左】パナソニック アプライアンス社
ランドリー・クリーナー事業部
クリーナー技術部 クリーナー設計課 課長
黒木 義貴さん
1992年に入社し、業務用掃除機の開発を担当。1997年より一般家庭用掃除機の開発に携わる。現在は国内、アジア、中近東向けの掃除機全般を担当

【右】パナソニック アプライアンス社
ランドリー・クリーナー事業部
クリーナー技術部 クリーナー設計課 主幹技師
小川 貴昭さん
1997年に入社し、国内向け一般家庭用掃除機の設計を担当。2006年よりサイクロン掃除機の機構設計を担当している


 

これまでの掃除機の「不満」を解消したかった

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パナソニックの最新サイクロン式掃除機「MC-SR530G」

ダストボックスに溜まったゴミを捨てるだけでなく、定期的にフィルターを掃除する。フィルターの目詰まりが吸引力低下に直結するサイクロン式掃除機にとって、この作業は当然必要なこと。しかし、パナソニックの開発陣は、そこにこそ改良の余地があると考えていた。

「前モデルまでのユーザーにアンケートを取ってみると、製品自体には98%以上の方に満足していただけている結果が出たのですが、ダストボックスや二次分離の役割を持つプリーツフィルターの手入れにフォーカスしてみると、約25%の方が改善を望んでいることが分かりました。この手入れの頻度をできるだけ少なくすることが、次なる課題だと考えたのです」(黒木さん)

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パワフル、小型なサイクロン式で「手間いらず」を実現することが、次なる課題だった

 

もちろんこれまでのモデルも、ダストボックスのゴミはボタンひと押しで簡単に捨てられる。一次分離を通過した、わずかなホコリやゴミをキャッチする「プリーツフィルター」の目詰まりも、約2カ月ごとの手入れで解消可能と、メンテナンスの手間は少なかった。しかし、そこからさらにメンテナンス頻度を減らそうと考えたのだ。


進化した“サイクロン”でフィルターレス化を実現

二次分離の役割であるプリーツフィルターの目詰まりを減らし、メンテナンスの手間をできるだけ省くには、プリーツフィルターがない構造にすればいい。しかし、フィルターがなければ、ゴミを分離する力が弱まる。このジレンマを解消したのが、パナソニック独自の“ダブルメタル”構造だった。

 

一次分離を担うフィルターも、これまでの樹脂製フィルターでは、掃除を繰り返すうちにゴミが付着してしまう

一次分離部も、これまでの樹脂製では、掃除を繰り返すうちに穴や凹凸部にゴミが付着してしまう

一次分離のフィルターに金属製を採用することで、ゴミの付着を減らすことに成功

一次分離部に凹凸のない表面がフラットな金属製を採用することで、ゴミの付着を減らすことに成功

 

「前モデルに引き続き、一次分離の部品に斜め穴加工を施した『ステンレスガード』を採用することで、ゴミと空気を約99%という極めて高い割合で分離できます。今回はさらに二次分離の部分に『8気筒遠心分離ユニット』を採用することで、従来のプリーツフィルターを使わずにゴミと空気を分離できるようしました」(小川さん)

 

“第1のメタル”であるステンレスガードの拡大イメージ。穴を斜め方向に開ける加工で、フィルター外側と内側の空気の気流を反転させ、ゴミと空気を分離

“第1のメタル”であるステンレスガードの拡大イメージ。穴を斜め方向に開ける加工で、フィルター外側と内側の空気の気流を反転させ、ゴミと空気を分離

 

この「8気筒遠心分離ユニット」に施したのが"第2のメタル"である「メタルコーティング」だ。これによって、樹脂素材で起こりがちな静電気によるゴミの付着を抑制。わずかなゴミさえ逃さずにダストボックスへ送れるようになったのだ。

 

8つのサイクロン「8気筒遠心分離ユニット」を採用。高さを変えることで均一な吸引力を実現し、偏らないように工夫

8つのサイクロン「8気筒遠心分離ユニット」を採用。高さを変えることで風量を均一化し、全ての気筒の分離効率を最大限に高める

「8気筒遠心分離ユニット」にメッキ処理を施すことで、静電気によるゴミの付着を防いだ

「8気筒遠心分離ユニット」にメッキ処理を施すことで、静電気によるゴミの付着を防いだ

 

「『ステンレスガード』と『8気筒遠心分離ユニット』を通る過程で、ほぼ100%のゴミを分離できるのですが、そのままでは微細なゴミが静電気で内部に付着します。これも逃さずに取り除きたかったんです」(黒木さん)


 

“いちいち掃除をしなくてもいい”掃除機

“ダブルメタル”構造の採用は、 強力な吸引力を持続できるようにしただけでなく、独自のフィルターレスを実現し、メンテナンス頻度を大幅に減らすことにも成功した。掃除後、内部に残るゴミを極限まで減らす努力が、手入れの手間も減らしたのだ。

 

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ゴミ捨てはワンタッチ。約1/3までゴミを圧縮できるようになった

 

「従来は2カ月に1度ほどのペースでプリーツフィルターの掃除が必要でしたが、新モデルのメンテナンスは、ゴミの多い家庭でも2年間に1度くらいで大丈夫です。普段のゴミ捨てもワンタッチですし、ゴミをより圧縮できるようになりました」(黒木さん)

 

ダストボックス、遠心分離ユニットなどのパーツは簡単に取り外し、すべて水洗いできる

ダストボックス、遠心分離ユニットなどのパーツは簡単に取り外し、すべて水洗いできる

 

メンテナンス時に、遠心分離ユニットを含めてダストボックスを丸ごと水洗いできるのも、開発陣が密かにこだわったところだ。どのようなサイクロン式掃除機であれ、長年使い続けると内部にごく微量なゴミが蓄積していくもの。これを簡単な作業でしっかり取り除けるようにしたことで、安心して長く使えるようにした。


 

性能は妥協せず、従来の機能を搭載

こうしてパワフルなゴミ取れ性能を損なうことなく、究極ともいえるメンテナンスの手軽さを実現できたわけだが、小型軽量をはじめとする「プチサイクロン」シリーズの特徴も維持されている。今回はフィルターレスのサイクロン式掃除機では最軽量となる2.6kgのボディを実現できた。

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フィルターレスの軽量ダストボックス、基板の小型軽量化、アルミ素材の高効率モーター、ボディの発泡成形などにより、小型ながら吸引力を落とさない掃除機が実現した

 

「『8気筒遠心分離ユニット』の、気筒のサイズや数を変えるという選択肢もありましたが、それでは従来モデルより大型になり、重量も増してしまいます。最低限、前モデルと同等のサイズをキープしつつ、ゴミをしっかり遠心分離できるバランスを試行錯誤して、この形状にたどり着いたんです」(小川さん)

従来製品(上)よりホース径を43mmから38mmと小さくし、性能を落とさず軽量化

従来製品(上)よりホース径を43mmから38mmと小さくし、性能を落とさず軽量化

 

ピクチャパッケージ 11 のコピー

ヘッドも従来品(上)よりコンパクトにし、約26%の軽量化に成功

 

「従来から高い評価を得ていた『LEDナビライト』や『ハウスダスト発見センサー』などの便利な機能も、当然引き継いでいます。我々は前モデルの性能がスタート地点であって、そこからマイナスになる要素があってはいけないと考えています。より細かなニーズに応えつつ、サイズや使い勝手を進化させていくのが、パナソニックの掃除機だと考えています」(黒木さん)

 

ヘッド前を広く照らし、暗い場所でもゴミを発見しやすい

ヘッド前を広く照らし、暗い場所でもゴミを発見しやすい

 

「プチサイクロン」は、まさにその思想が息づいている製品。「小型軽量」「高いゴミ取れ性能」「手間いらず」を求めるユーザーの声に耳を傾けながら、着実な進化を遂げてきた。ひとつ解決しても、さらに上を目指す。ニッポンのライフスタイルに本当にマッチしたサイクロン式掃除機は、決して妥協しない“ニッポンのモノづくり”だから実現できたのだ。

(取材・文/高橋 智 写真/吉田素子)