新時代を切り拓くG-SHOCK「GA-2100 SERIES」はなぜ大ヒットしたのか?

2019年、新開発された耐衝撃構造“カーボンコアガード構造”をもとにした、新たなG-SHOCKが次々と世に登場しています。その中でも、「八角形ベゼル」を携え堅牢性と薄型ケースを両立する“GA-2100 SERIES”はリリース直後から飛ぶように売れ、市場を賑わせています。そんな名機はいかにして誕生したのか。開発コンセプト、時計ジャーナリスト、ファッションスタイリストなど各々の視点からヒットの秘密を探ります。

■「G-SHOCKらしくない」と不評だった開発当初

まずGA-2100の開発時におけるコンセプトについて、G-SHOCK開発チームは以下のように話してくれました。

「G-SHOCK BASICカテゴリーの新たな可能性を広げたい、という思いから開発に着手しました。原点である『DW-5000C』から続く、一切の無駄を省いたプロダクトコンセプトのもと、進化した技術やマテリアルを採用。カーボンコアガード構造と新型モジュールの採用により、強さはそのままに薄型化と小型化を徹底追求。薄く、小さく、シンプルという無駄を省いたミニマルコンセプトを実現させたのです」

さっそく装着してみたところ、たしかに言う通りファーストインプレッションは薄く軽いつけ心地。ただ、実は腕に巻いた直後、その軽さから「ちょっとG-SHOCKらしい重厚感がないかも」と思ったものの、一日中つけていても一切疲れない抜群のフィット感から、すぐ病みつきに(笑)。

 

デジタルとアナログのコンビモデルですが視認性はよく、統一感のあるカラーリングは悪目立ちせずクールな印象すらあります。たしかに、これは売れそう……。

しかし、開発の思いとは裏腹に、営業側からは懐疑的な意見が多かったのも事実。「ゴツゴツしていないのでG-SHOCKらしくない」「サイズが小さくG-SHOCKらしくない」などの声も聞こえていたそう。モノづくりの難しさがわかるエピソードです。

■時計ジャーナリスト視点で考える「GA-2100」

さて、「GA-2100」で特徴的なのは、そのフェイスデザインです。G-SHOCKの原点である「スクエア型」という普遍のデザインは、“タフネスを求めて一切の無駄を省く”という発想から生み出されましたが、今回そのコンセプトを継承、進化させるべく「八角形フォルム」を採用しています。オリジンの特徴的なデザインであるスクエア型の八角形をアナログデジタルにも落とし込み、今回のオクタゴンベゼルへと昇華させています。

この八角形フォルムを携えた「GA-2100」について、時計ジャーナリストの名畑政治さんにも意見を伺ってみました。

「パッと見て惹きつけられたのはシンプルさ。無論、構成要素は多岐にわたるが、複雑な要素に統一したイメージを与えシンプルに見せるのが、慎重に選びぬかれた階調の異なるカラーリングだと気づいた。

例えば赤い『GA-2100-4AJF』にグッと近寄って見ると、ダイヤル、インデックス、ベゼル、ストラップがそれぞれ異なるトーンだとわかる。でも、引いて見た印象は真っ赤!

この魅力の根底にあるのがプラスチックの存在。色も形も自在に変化させられるプラスチックの特性を熟知して存分に活用し、タフで軽量、無駄のない造形美を実現したことが『GA-2100』の魅力。だから、カシオがこのシリーズを“G-SHOCKのNEWスタンダード”と呼ぶことにも納得なのである」

う~ん、なるほど。八角形だけでなくカラーリングにも秘密があったんですね。

名畑政治|1959年、東京生まれ。80年代半ば、フリーランス・ライターとしてアウトドアの世界をフィールドに取材活動を開始。90年代に入り、カメラ、時計、万年筆、ギター、ファッションなど、自らの膨大な収集品をベースにその世界を探求。著書に『オメガ・ブック』、『セイコー・ブック』、『ブライトリング・ブック』(いずれも徳間書店刊)、『カルティエ時計物語』(共著 小学館刊)などがある。現在は時計専門ウェブマガジン「Gressive」編集長。

■ファッションのトレンドにもマッチするデザイン性

さて、ストリートで長く人気を博してきたG-SHOCKですし、続いてはファッション面からも。モノにも強いスタイリスト・宇田川雄一さんに、ファッショントレンドも踏まえた「GA-2100」の魅力に迫ります。

「最近のファッション界では、70年代に流行った“丈夫で” “実用性重視の”を意味する“ヘビーデュティー”がキーワードになり、マウンテンパーカーやワークブーツなどが注目されています。この『GA-2100』は、タフを追求したオクタゴンベゼルの採用やマットな質感で無骨さもあり、ヘビーデューティーの流れとマッチしているのがポイントですね。

リモートワークの増加などにより『かっちり着飾る』よりも、『ストレスフリーでオシャレ』という服装が求められている今、耐衝撃や耐水性など何も気にせずガシガシ使える実用性の高いスペックも物欲を掻き立てます。

これだけのスペックとデザインでありながら挑戦しやすい価格、というのもG-SHOCKならではで、思わずカラバリで買ってしまおうかと思わせてしまう魅惑の一本です」

これからの時期には、フリースやダウンなどボリュームのあるアウターにも合わせやすく、最近は黒のワントーンコーデにハマっているらしく、ブラックと赤の単色の2本が惹かれるそう。これはコーディネートの参考にしたいですね。

宇田川雄一|スタイリスト。大学卒業後、アシスタントを経て2008年フリーに。モノ誌やWeb媒体を中心に、広告、PVなど幅広く活動。メンズのビジネススタイルを得意とし、雑貨、インテリアなどライフスタイル全般にわたってスタイリングしてきた経験を生かし、執筆も行っている。

 

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G-SHOCKとしてのDNA、トレンドをとらえたデザイン性、時計愛好家をも唸らせる奥深さ、すべてを持ち合わせた「GA-2100」は、たしかに次世代スタンダードとして愛用されていく逸品になりそう。アウトドアに、カジュアルに、こっそりジャケット下に、頼れる相棒に選ぶ価値ある一本だと思わされました。

>> G-SHOCK「GA-2100 SERIES」

<取材・文/三宅隆(&GP) 撮影/下城英悟>

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