世界の空港案内[TRIP:06] パリ・シャルル・ド・ゴール空港(フランス)

シャルル・ド・ゴール空港は1974年に開港。現在ターミナル1として使用されているビルは、これまでの世界の空港ターミナルビルでは類を見ないドーナツ型をしている。通路を歩いてゆくと当然のことながら1周できてしまう。

▲機内から見たターミナル1の全景。ご覧のように丸く、地下と中央部分が車寄せになっていて、中にチェックインカウンターがあるという不思議な作りだ

車寄せもターミナルビルのまわりを1周していて、外部とは航空機が通る誘導路の下をくぐった地下道でつながっている。

通常、空港のターミナルビルといえば四角い横長のビルが定番だ。しかしこのビルはドーナツ型なので、外から見ると円柱に見える。また、大きな空港は上のフロアが出発階、下のフロアが到着階となっていて、これは世界的な常識となっているのだが、ここは上下逆。地上階が出発、到着階が上のフロアという不思議な配置となっている。

建物がドーナツ型をしているため、吹き抜けの中央部にはガラスに覆われたエスカレーターが通るチューブが縦横無尽に走り、そこを通ってフロアを移動する。チューブの中から見た景色は未来のの宇宙ステーションのようでもあり、SFアニメに出てくるようなワクワクする空港でもある。

▲ターミナル1中央部は吹き抜けで、エスカレーターが入ったガラスのチューブが縦横無尽に横切る

飛行機は、このドーナツ型の建物から地下道でつながるサテライト(衛星)に停まる(飛行機もターミナル周辺を一周できる造りとなっている)。こちらも丸いので、機体をターミナルに斜めに駐機させることで、中型機程度なら搭乗橋を引っ込めれば牽引車に押してもらわず自走で出発できるという、建設時は最先端の未来のターミナルビルでもあった。

▲ターミナル1から駐機場方向を望む。サテライトに飛行機が斜めに駐機するという変わったスタイル

 

ドーナツ型をしたターミナル1はデザインはカッコよく斬新ではあるが、日本の空港のように展望デッキはないので全容が見づらい。そして、ドーナツ型であるがゆえに旅客数が増加すると隣にビルを作り建て増しして延長するわけにもいかない。空港の利用者が増え続けたことから、今から約20年前に、少し離れた位置にターミナル2がオープン。こちらは2A~2Gまであり、サテライトの2Gを除いて、曲線を描いたデザインとなった。建築はターミナル1と同じポール・アンドリュー氏。

▲外光が入りながらも日よけもあり程よい明るさが保たれている2F搭乗口。ゲートの案内板も楕円形でまとめていて他に類を見ない空港デザインとなっている

ターミナルごとに内装デザインは少しずつ異なるため、アートや建築に興味がある人は、見ているだけで楽しめる。特に2Fはガラスを多用した作りで、搭乗ゲート全体や飛行機へと続く搭乗橋もガラス張りで明るく、美術館のような空間デザインを旅のエッセンスと共に楽しめる。

▲ターミナル2、2Fのカウンターと楕円形の出発便表示。それを支える台も斜めでオシャレだ。天井はコンクリート打ちっぱなしのようだが、間接照明の照らし具合がステキ

また出発案内表示や搭乗ゲート付近もアバンギャルドな楕円形を多用したデザインになっていて、建築やアートにそれほど興味がない筆者でも「こんなカッコいいターミナルビルは見たことがない」と思うくらい斬新だ。屋根、窓、案内表示、昼間の外光を取り入れたライティング、夜間の照明の美しさなど、見ておいて損はない現代建築となっている。

▲空港にアクセスする鉄道駅にある出発便案内表示も、アールを描いて見やすさとデザインを両立させている

しかし、こちらもデザインを優先したためか、供用開始すぐの2004年に屋根の崩落事故が起こり死傷者を出してしまったが、現在は安全に運用が行われている。

なおターミナル1は、日本からはANAが、新しいターミナル2はエールフランス航空や日本航空が使用しているので、パリに飛ぶ際はモダンなターミナルビルでフレンチデザインを感じてみるもの良いだろう。

 


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(文・写真/チャーリィ古庄)

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チャーリィふるしょう/写真家・冒険写真家・フォトジャーナリスト

1972年東京生まれ、旅客機専門の航空写真家。国内外の航空会社、空港などの広報宣伝写真撮影を行ない旅客機が撮れるところなら世界中どこでも撮影に出向き、これまで100を超える国や地域に訪れ、世界で最も多くの航空会社に搭乗した「ギネス世界記録」を持つほか旅客機関連の著書、写真集は20冊を超える。キヤノンEOS学園講師。成田空港さくらの山に自身がプロデュースしたフライトショップ・チャーリイズをオープン(www.charlies.co.jp

 

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